真実はいつもひとつ
自宅に虫が出たとき、それが益虫でも害虫でも退治しようとするのは、自分の縄張りを守るためなのか。
悪意の有無に関わらず、自己都合による排除が正義か悪かなど考えることはない。
先行部隊が物理的な攻撃で敵を吹き飛ばしている。だがダメージは無いようで、ケロッとした様子で起き上がり、近くの灯籠を破壊したりしている。
噛みつかれたり、敵の武器で傷を負った者は、身体から力が抜けたように崩れ落ち、動けなくなっていた。
敵の数は減らない一方で、こちらの戦力は徐々に減っていく。このままでは良くないと思った私は、大きな声で呼びかけた。
「見ろ! 崩れた灯籠の火を避けてるぞ! 弱点は火だ!」
「本当だ! みんな火を持て!」
文明を得た猿のように、火を手に入れた仲間が戦況を盛り返す。
木材に火をつけて松明を振り回すようにして敵を退ける。火がついた敵は燃え上がり、消滅して落葉に戻った。
これで勝てる。そう考えたのは単純すぎた。
ぽつり
頬に冷たい感触が落ちてきた。
「雨ですねぇ……」
スズキがにこやかに言うと、瞬く間に雨が土砂降り、火を消していった。
「クソッせっかく持ち直したってのに!」
誰かが悪態をつく。
あたりはオレンジ色の光に包まれていて、見えない夕日が沈もうとしているようだった。
心なしか、敵の動きが機敏になっているような気がする。視界の悪い闇夜は危険な香りがした。
「おい! 不用意に前に出るな! 危ないぞ!」
私に向けられた警告だということは分かっていた。だが、どうしても確認したいことがあった。
私は大きく口を開けて天を仰いだ。
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