安産祈願
なにもないところから、なにかを生み出すのは難しい。
右近のアドバイスに従って、タンデンさんの仕事を手伝えるナニカを生み出そうとしてみたが、少し練習が必要だと知ることができた。
「なんだこのグロテスクな生き物は。どうして身体が無い?」
初めて生み出したそれは、丸い頭に手足が付いただけの簡単なもので、複雑な動きはできず、ひとつの命令を与えると他のことは忘れてしまうようだった。
「だいじょうぶですよ。球体に手足の生えたキャラクターなんて腐るほどいますから、怒られることはないと思います」
「そういう問題じゃあないだろう」
とはいえ、栄養を運ぶくらいはできたので、ベルトコンベアまで往復する手間を省くことはできた。
気をつけなければいけないのは、ナニカを生み出すと、私の身体が疲労感に襲われることだった。
大量のナニカを生み出すには相当な精神力と集中力。それと体力が必要になる。
左近は悔しがったが、この手柄を評価しないわけにはいかなかったので、私は右近に利き腕を任せることにした。
それから私は、安産祈願のお守りから行けるという外の世界を待ち望んだ。ドラゴン・ジャック発言が真実であることを期待した。
もちろん待っている間、ジャックのところで情報収集したり、ナニカを生み出す訓練は怠っていない。
そして、ついにその時が来た。
それは私の持ち場に突如出現した。
安産祈願のお守りを準備しないパターンもあると聞いていたが、目の前に光の扉が表れてくれたときは心からほっとした。
ほとんど飛び込むようにして光の中へと入ると、暖かい風に全身が包まれて空間がゆがむのを感じた。
移動はあっという間で、気づくと私は大きな赤い鳥居の前にいた。
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