侵入者
音を管理するDJと名乗る男に別れを告げて、急ぎタンデンさんのもとへと向かうことにした。
DJがディスクジョッキーの略なのか、それとも別の何かなのかは聞けずじまいだったが、それほど興味もないので、私は意識をタンデンさんのもとに集中させる。
「くそったれ! もうやめてくれ!」
移動するなりタンデンさんの悲痛な声が聞こえた。
「タンデンさん! どうしたんですか?」
「おお、ノーマン。来てくれたか」
頭を抱えて嘆くタンデンさんが私に気付き、すがりつくように言った。
「ノーマン、これを見てくれ。これをどう思う?」
タンデンに促されてそれを見ると、オレンジ色に光り輝く栄養の塊が灰色に変色していた。
触れてみると石のように固くなっていて、ひんやりと冷たかった。
「アイツが
タンデンの目は本気だった。これは冗談なんかじゃなく、宿主の生命に関わる重大な問題のようだった。
そこには鋭い爪と凶悪な牙を剥き出しにした得体の知れないバケモノがいた。ウイルスなのか、ばい菌なのか定かではないが、確かなのは味方ではないということだった。
ベルトコンベア上の栄養を手当たり次第に攻撃していて、ヤツが傷を付けた場所からみるみるうちに灰色に染まっていく。
「キシャアアア!」
そいつは、私が近づくと敵意をむき出しにし、両爪を掲げて威嚇してきた。
「の、ノーマン! むやみに近づくんじゃない! 危ないぞ!」
私は、タンデンの忠告を無視して歩み寄ると、そいつをプチッと踏み潰した。
そいつは確かに凶暴な風貌だったが、サイズが小さかった。
「タンデンさん、これくらい自分でなんとかしてくださいよ」
私は、ゴキブリに怯える女子のようなタンデンに呆れながら言った。
「バカもんッ!」
すると態度をコロっと変わったタンデンさんに怒鳴られた。
「お主は何もわかっとらん! なにも起きなかったからいいものの、ヤツが爆発するタイプだったらどうするんだ! 宿主もろとも死んでおったかもしれんのだぞ!?」
タンデンさんの言うとおりだった。私の行動は軽率すぎたかもしれない。爆発するかもなんて考えもしなかった。
「そ、それは確かにそうですね……私の考えが浅はかでした。すみませんでした」
「わかって貰えればそれでいい。あんたが思うよりも行動には慎重にあたってくれ。些細なことで、宿主に危険が及ぶかもしれんのだ。そうなれば我々ごと世界が終わってしまう」
改めて、この世界は簡単ではないということを胸に刻んだ。そして、責任の重さを知った。私の行動ひとつで、みんなを危険にさらすかもしれないのだ。
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