音暴動
夜、眠るときに、やけに心音が気になることはないだろうか。
両耳を両手でふさいだときに聞こえるゴォーッという音は、体内を流れる血液の音だと言われている。
自分の生命の力強い鼓動に、驚かされるものだ。
それらが内側の、体内の音だとして、案内された部屋は体外の、外部の音を聞く部屋だった。
「そこ、閉めてくれるか?」
「えっ? どうやって……」
「オメー脳なんだろ? ピピピ電波でチャチャっと指令だしてできんだろうがよ」
「そ、そう言われても……」
戸惑いながらも試しに念じてみると、カーテンのような膜が瞼を閉じるようにおりてきた。
どうやら体内環境を整える能力が私にはあるらしい。
先ほどまで響いていた心音や血流音が遮断されて、外部の音がよく聞こえるようになった。
と言っても、まるで金魚が水槽の中から人間の声を聞いたみたいにくぐもった声だった。
『うせdんいあのかぎりえs』
頭上から音が降ってきたが、意味は分からない。
おそらくこれは、母胎の中の赤ん坊が羊水に浸かりながら母親の声を聞いているということだろう。
「どうよ、これが外の世界だ」
まるで自分が作ったみたいに誇らしげに言う彼に多少驚きながらも、新しい世界が開けたようで素直に感心した。
「なんて言ってるんですか?」
「俺が知るかよ、俺は音を届けるだけだ。そういうのはオメーの仕事だろ」
暗号のような声から情報を得るには、まだまだ時間がかかりそうだった。
『えぬせづてがkんあsんいsんいn』
ぜんぜんわからない。
だが、何らかの法則性があるはずだ。
『ノーマン! トラブル発生だ! すぐに来てくれ!』
頭の中にタンデンの声が響いた。いつのまにそんな芸当ができるようになったのだろう。
宿主である赤ん坊の成長とともに、我々も成長しているということだろう。
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