現実の終着点


やるべきことがわかっても、やれることがない時もある。


そんなときは、じっと耐えることも必要だ。


まもなくして、ダンカンの業務再開を知らせるかのように、右近と左近の武器に輝きが戻った。


それによって、ふたりの疑いが晴れると、さらに詳しい話を聞かせてくれた。


私たちの使命が、宿主であるこの人間を守ることだとか、ほかにも様々な神が担当箇所を管理していること。


各部位に移動して指令を出せる点から考えて、私の管轄は脳であるとわかった。


「それで、ここから出る方法は?」


私が聞くと、息を吹き返した自分の銃を満足そうに眺めていた左近の表情が憐れむような目に変わり、首を振って答えた。


「本当に何も知らないのね。私たちは宿主の生命を守って天寿を全うさせること。それが終わったらまた次の生命に宿るだけよ」


母が子を諭すように優しい言い方だったが、私は、死刑宣告をされたみたいに暗い感情に包まれた。


「待てよ左近。俺は面白いと思うぜ? 始まりがあれば終わりがある。生まれて、死ぬ。この当たり前のように決められた運命を疑うなんて考えもしなかった」


右近は覇気に満ちた瞳で身体を前に乗り出して、心から興味深そうに言った。


「出られ……ないのか……?」


「出るってなによ? どこへ行こうっていうの? 誰だって死からは逃れられない。だから終わりの時までを少しでも良いものにさせる為に生きるんじゃない」


わずかな希望の光を求めた私の問いは、『どうしておなかがへるのかな?』とでも聞いた時みたいに、平然とした態度で一蹴された。


私がここにいるのは、誰かの采配で、どこか別の場所から来たような気がしていた。そして抜け出すことができるんじゃないかと思っていた。


どうやら私は、この状況を受けいれ、目の前に降りかかる災難を避け続け、生き長らえて、最後の審判の時まで、幸せを求めてあがくしかない現実と、向き合わねばならないらしい。


目の前が真っ暗になった。未来への見通しが立たない。右近が励ますように何かを言っている。


「あきらめるなよ! まだ誰も成功してないだけで、変えられるかもしれないだろ?」


「バカね、右近。無意味な幻想を抱くより、この世のことわりのなかで、いかに幸せを掴むかに尽力した方が賢明よ」


「左近はロマンがねえなあ! 夢はでっかくいこうぜ! あきらめずに扉を叩き続けなきゃ開くドアも開かねえぜ」


私は言葉にできないほどの絶望の中で、ただ迫り来る死への恐怖に打ちのめされていた。

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