向けられたヘイト


何かを守るために人は戦う。


彼らもまた、理由があって戦っているのだろう。


私がそこに介入する権利はないのだが、目の前でやられて放っておける性格ではない。


かといって「ケンカはやめるんだ」などと言って争いが収まった経験はないので、ここは手段を封じるのが効果的だと思った。


経験と言っても記憶があるわけではないし、うまくいく自信はないが。


「いいかげん、あきらめろバカ女!」


右近は、あいかわらずの暴言を吐いて、オレンジ色の銃弾を刀で弾きつつ間合いを詰めた。


「それはこっちの台詞だ腐れ○○○!」


左近ほうは、ちょっと言葉が下品すぎる。そんな言葉とは裏腹に身のこなしは華麗で無駄な動きがない。


勝負はまったくの互角で、そのままでは決着がつきそうになかった。


「えっ! 嘘でしょ弾切れ?」


先に異変を感じ取ったのは左近だった。銃口から栄養の弾が出なくなり、儚げなモヤが漂っていた。


「もらったーッ!」


その隙をついて、確実に仕留められると判断した右近が、輝く刀を左近の心臓めがけて投げ放った。


だがオレンジ色に輝く刀身は左近の身体に届く前に消え去り、柄だけがポヨンと当たって跳ね返った。


私は作戦が成功したことに喜び、小さくガッツポーズをした。


「やった! うまくいった!」


「「おまえのしわざかッ!」」


私はつい声をもらしてしまった。当然それを聞きつけたふたりの怒りは私に向いた。


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