交渉

タンデンに栄養の供給を止めて貰う願いは、あっけなく断られた。


彼にとって栄養の供給は、生きがいであり使命なのだ。


とはいえ、こちらも簡単に引き下がるわけにはいかない。


目的を達成するためには、手段を選べないこともある。


『いいんですか? バラしても』


私は余裕たっぷりに言った。


「ば、バラす?! なんのことだ!」


誰だって隠し事のひとつやふたつあるものだ。私のカマかけにタンデンは激しく動揺した。


『ご存じの通り、私はテレパシーをつかって離れた場所にいるタンデンさんと連絡が取れます。つまり、タンデンさんの隠しているアレコレも知ることができるんです』


「ま、まさか……アレのことか! 違うんだ! アレは別にそういうアレじゃないんだ! 単なる資料としてだな!」


『ほんの数分、栄養の供給を止めるだけです。それでその資料のことは黙っておきます。協力していただけませんか?』


「うぐぐ……わかった……」


こうして、タンデンの秘密が何なのかは謎のまま、私は小さな罪悪感を抱えて交渉が成立した。


あとは、これがどのような結果をもたらすか、確認するだけだ。


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