利き腕


サーカスの曲芸など常人離れした優れた動きというものは、たゆまぬ鍛錬の成果であり美しい。


美しいものは、ずっと見ていられる。


私がそう思っていても、いずれ決着がついてしまうだろう。


時間を忘れて、永遠に見ていたくても、始まりがあれば終わりがある。



少年の心を忘れない剣士の右近と、

男気宿る美しきスナイパー左近。


「利き腕は俺のものだ! 諦めろブス!」


「てめえにゃ荷が重い! 腕を磨いて出直してこいヘナチン野郎!」


交わす闘技には華があるが、相変わらず交わす言葉は品がない。


だが、やりとりから気になる情報が聞けた。


『利き腕』


よく見れば、右近は刀を右手で扱っていて、左近は銃を左手で扱っている。


そして二人の武器に共通するのは、オレンジ色の光。


タンデンが管理する栄養と、無関係とは思えない。


「タンデンさん! 聞こえますか!」


私は壁際に移動してタンデンに呼びかけた。


反応はない。


次に私はタンデンの居場所をイメージして語りかけた。見えないはずの動きが感じ取れるならばもしかして、と思ったのだ。


テレパシーのようなもので、離れた相手と連絡をとる。無理かもしれないが、試してみる価値はあった。


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