イケメン風剣士
あっ
と、思ったときには、時すでに遅く
タンデンに助けを求める前に、私は壁に飲み込まれた。
正確には、壁を通り抜けた。と表現するべきか。気付けば私は別の部屋に移動していた。
起き上がって壁を調べてみるが、ゴムのような弾力に跳ね返されて、元の場所には戻れなかった。
振り向くとそこに、あぐらをかいて目を閉じている青年がいた。
鍛え上げられた筋肉が目を引く。傍らには刀が置かれていて、我ながら安直な発想とは思うが、サムライのイメージを抱いた。
ちょんまげではなく艶やかな長髪で、白い装束に身を包んでいるせいもあるかもしれない。
「あの……すみません」
私が声をかけると、青年は一瞬だけ片目を開けて鋭い眼光を私に向けると、また瞳を閉じた。
明らかな無視に虫の居所を悪くした私は、目には目を歯には歯をとばかりに、無視することに決めた。
通路はどうやら奥まで続いているし、情報ならほかの誰かを捜してからでも遅くはない。
決して彼の太い四肢や刃物にビビったわけじゃあない。断じて。
そうして私は音を立てないよう、青年の横をそっと通り過ぎた。
「待て、そのまま動くな」
背後で刀を構える音が聞こえて、私は凍り付いたようにその場で動けなくなった。
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