知識よりも想像力


次々と供給されるオレンジ色に輝く球体をベルトコンベアに乗せるのを手伝いながら、彼の持つ情報に耳を傾ける。


彼の名はタンデン。


気がついたときにはここにいて、わけもわからず球体をベルトコンベアに乗せている。


「ワシがやらなきゃ、あっという間に球体で埋め尽くされちまう。誰かがやらなきゃいかんのに誰もやらない。というより誰もおらんのだ。ワシがやるほかあるまい」


彼はそう言って、ベテラン職人のような手つきで作業を続ける。時折球体に黒いコブのようなものをみつけると、湾曲したヘラを使ってこそぎとった。


「なんです? そのストリジルみたいなやつ」


「ストリジル?」


「その手に持っている垢すり用の道具みたいなやつです」


「……さあな、落ちてたんで使っているだけだ。このコブがあると途中で詰まっちまうんだ」


「ガングリオンみたいなものですか?」


「ガングリオン?」


「ゼリー上の物質の詰まった良性の腫瘤のことです。基本的に害は無いけれど、できる場所によってはやっかいなことになるやつです」


「……さあな。むつかしいことはわからんが……ここが何なのか、ワシはひとつの仮説を立ててみた。正解なんてわからんし、わかったところでやるべき事は変わらん……聞きたいか?」


「ぜひお願いします」


私はタンデンより知識はあるようだった。ただ、その知識を得た経緯は覚えていない。


はっきり言って、ここでは古い知識など何の役にも立たない。ここでの経験と豊かな発想力こそが未来を開拓するカギとなるだろう。






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