待ち遠しい明日

 夜。食事も入浴も済ませた僕は、部屋へと戻るその前に沙夜と会話を交わす。


「それでは旦那様、おやすみなさいませ。お布団はもうお敷きしておりますので」


「え?ああ、風呂に入ってる間にやってくれたのか。ありがとう」


「いいえ、当然のことでございますので、お礼を言われるようなことでは・・・」


「いやいや、お礼くらい言わせてよ。僕が申し訳なくなっちゃうよ。それじゃおやすみ。また明日ね」


「はい!また明日もよろしくお願いいたします」


 ちょっとだけ堅苦しい「また明日」の挨拶を交わし、僕は部屋の中へと入る。沙夜の言っていた通り、既に布団が引かれていた。その布団の上に、ごろんと寝転がる。


 ・・・・・。


 また明日、か。


 なんて素敵な響きだろう。


 明日、目覚めても。


 家には、沙夜がいる。


 家には、誰かがいてくれる。


 それがこんなにも、嬉しいことだったなんて。


 明日は、どんな話をしようか。


 どんなことを、沙夜と、語ろうか。


 一緒に、何をしようか。


 ああ。


 こんなにも明日が待ち遠しく思う日が来るなんて。


 思わなかった。思いもしなかった。


 もう二度と、そんな風に思いながら眠りにつくなんて、ないと思っていたのに。


 もう二度と。


 明日を好きになることなんて、ないと思っていたに。


 ・・・・・泣いてしまいそうなほどに、幸せな気持ちだ。


 天井を見つめ、まどろみながらも。僕はあれもこれもと思考を巡らせた。その巡らせた思考が途切れることはなかった。まるで修学旅行の前夜の時のように、興奮が体を駆け巡っていた。


 その興奮が冷めるその時まで、僕は、頭の中で遊び続けていたのだった。

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