第23話 新たなダンジョン
無事にキザキを倒したトウヤはレベル23まで成長した。ラピスの方も1レベルだけ成長し21レベルになっている。仲間にしたモンスター達はその半数以上が倒されてしまった。モンスターの死体が転がっている。
「トウヤ様、ダンジョンマスターであるネクロマンサーキザキを倒した事でスピリットファームはトウヤ様のものになりました。以後、ダンジョン内の全てのモンスターはトウヤ様の配下に加わります」
「う~ん、別にいらないな。管理とか面倒そうだし」
ダンジョンなんか手に入れた所でどうしろというのだろうか。トウヤは魔王として何かするつもりなどないのでそんなものを貰っても困るだけだ。
「どうしたのトウヤ君?」
「なんかダンジョンマスターを倒したからスピリットファームが僕の物になったみたいなんだ」
「カボ~!!」
「ギャオーン」
「ク~ン」
「ア゛ア゛ア゛~」
トウヤがダンジョンを手に入れた知らせを聞いたモンスター達が祝うような声を上げた。モンスターの中では嬉しい事のようだ。それもそうだろう、自分達の王が新たな領地を手に入れたのだから。
「ダンジョンマスターってあの魔族?」
「そうみたい」
「それでトウヤ君はここに住むの?」
「え、なんで?」
「だってここの管理者なんでしょ、それにゲペルの街には妹ちゃんもいるし。ここならすぐ会いに行けるじゃない」
この地の管理者ならばもうこの地から離れる事は出来なくなるのではないだろうか。ラピスの父親もコロウ山の主として山から離れず、山や近くの森の守護をしている。トウヤもそうなってしまうと、もう気楽に会う事が出来なくなってしまう。
「ナビ、このダンジョンの管理って僕が直接しなきゃダメなの?」
力の魔王配下のキザキがここのダンジョンマスターをしていたという事は、この地を配下に任せてしまう事は可能なのではないかとトウヤは考えた。ぶっちゃけ管理とか面倒なので出来るのなら全てその人に投げてしまいたい。
「はい、トウヤ様が配下の中から任命すれば、その者にダンジョン内の全権限を委譲する事が可能です」
「うん、じゃそれどうやればいいの?」
「委譲する相手がダンジョンのコントローラを触っている状態で「魔王の名においてこの者をスピリットファームのダンジョンマスターに任ずる」と宣言してください」
「わかった。それじゃ……」
後は誰にこのダンジョンを任せるかだ。トウヤは生き残ったモンスター達を見つめる。
「やっぱり君だな」
そしてトウヤは一体のモンスターの前に向かった。
「カボ~?」
それは竜の刺しゅうが入った帽子のジャック・オー・ランタンだ。一番最初に仲間になったモンスターだし、他のモンスターのリーダー的な位置だったので適任だろう。
「君をここのダンジョンマスターに任命するから、頑張ってくれよ。あ、でも自分の身を護る以外の目的で人を傷付けちゃダメだぞ」
トウヤは人間として他の人間を襲いたいとは思っていない。しかしここはダンジョン、人間側がモンスターを攻撃してこないようにする事は出来ない。なので自衛のために攻めてきた人間と戦うのはしょうがない。襲わない事と無抵抗で殺される事は同じではないはずだ。
「カボカボカボ」
ジャックが手を前に首を左右に激しく振っている。「いやむりですぅ~><」と言っているみたいだ。
「トウヤ様、彼女では格が足りません。高位モンスターか魔族でないとダメです」
「彼女? ジャックって女の子だったの?」
トウヤにはモンスターの性別なんてわかんない。そもそも性別があった事に驚きだ。それに対してジャックも「気付いてなかったんですか? ショックです」と言いたそうな顔でトウヤを見ていた。それに対してトウヤは「ごめん」と謝るしかなかった。
「それと、モンスターに低位とか高位とかあるの?」
「はい、高位モンスターは人間の言葉を話せて、上級魔法を操る事の出来るモンスターです。それ以外は普通のモンスターに分類されます」
「ちなみに、僕の配下に上位は……」
この中に人間の言葉を喋るモンスターはいない。ならば聞くだけ無駄な事だろうと思いながらも聞いてみた。
「おりません」
「ですよね。それじゃ魔族を生み出すしか方法がないのかな?」
たしか魔王玉を使えば魔族を生み出せたはずだ。それで生み出した魔族に後は全部任せてしまえばいいか。
「もう一つ方法があります」
そんな考えをナビが否定する。
「支配地域を手に入れた事でトウヤ様の魔王ランクが2になりました。そこで手に入れた能力に『モンスター合成』があります。この能力を使えばモンスターを上位種にする事も可能でしょう」
「そうなんだ、ちなみに他に得た能力はあるの?」
作業を始めたら能力確認なんか忘れてしまいそうだ。なのでその前に聞いておくことにした。
「ランクアップにより、キューブにキャラクター指定が追加されました。支配地域獲得により『マップ』が追加されました。それと魔王玉が一つ増えました」
まずはキューブの強化を確認、これは単純に誰を通行不可にして誰を通行可にするか指定できるというものだ。しかもその人物の攻撃もこの指定の範囲に入るので、一方的な攻撃が可能になった。
次にマップだ。これは現在位置から支配者の効果が及ぶ範囲の地形や、そこにいる人物が確認出来るようだ。それと、自分が支配している領地の現状も確認できるらしい。
二つを確認し終えたので次はモンスター合成を確認しておく。これは元となるモンスターにモンスターの核や別のモンスターを合成し、強化させるものらしい。合成させる時に合成前のモンスターから主になったモンスターの記憶と、あと一つだけ何か能力や特性を引き継ぐことができるようだが、合成の結果がどんな姿でどんなモンスターになるかはわからない。強くなることだけは間違いないようだ。
この辺は成長すれば自由に出来る部分が増えるのではとトウヤは考えた。
「それじゃジャックを合成するか。いいかな?」
「カボボ~」
意思を持っている以上、無理やり勝手に合成するわけにはいかない。モンスター合成の能力を説明し本人の許可を取る。
ジャックが手をグーにして「頑張るぞ~」と言いたそうな動きをしている。やる気は十分のようだ。
後は合成する他のモンスター達だが、これはキザキとの戦闘でやられたモンスター達の核を使う事にした。さすがにまだ生きているモンスターを使うのは悪い気がしたからだ。死んでしまったモンスターは核が無事なら復活するのだが、これは記憶を受け継いでいるわけではないので、見た目は一緒でも中身は全くの別人になってしまうのだ。だから遠慮なく核を利用することが出来る。
ジャックと核を一か所に集めてられ、さっそくモンスター合成を始める。
「ベースとなるモンスターを決定してください」
今回は生きているのがジャックしかいなかったので選択画面には彼女しかいない。
「現在のトウヤ様の力では合成後のモンスターがトウヤ様より強くなってしまいます。トウヤ様と同等かそれ以下になるように合成するモンスターや核を選んで下さい」
ナビの忠告が入る。ここにある核全部を使えば自分より強くなるという事はかなり期待できそうだ。現在のトウヤはレベルが上がったおかげでタンザナイトにはまだまだ及ばないが、ラピスよりは確実に強い。弱点さえつけばキザキ相手でも一対一で戦えるだろう。そんな自分と同等のモンスターなら上位種を期待できそうだ。
「僕と同等になるように選んで」
しかしどの核を残せば丁度いいのかわからないのでそこはナビに丸投げだ。
「ピッタリ同じにするのは不可能なので少し弱くなりますがよろしいですか?」
丁度いい核が無かったのだろう。それならしょうがない。少しがどれくらい弱いか気になったが、ここはナビを信じよう。
「うん、それでいいよ」
「残す能力や特徴を選んで下さい」
さて何を残そうか。物理無効能力は強いと思う。でもカボチャ頭やランタンなど、ジャックとしての特徴を残してあげた方がいいのだろうか。
少し悩んだが、結局は物理無効を選んだ。単純にこの能力が強く、何かあった時に彼女の安全性が増すからだ。
ジャックと核が一つに合わさっていく。そして合成が終わった時にそこには自分の首を小脇に抱えた一人の少女が立っていた。
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