第22話 スピリットファーム 8
キザキの影から出てきた拳はキザキ自信が張った結界によって防がれた。結界内には移動系の魔法でも入れないようにしてあったので、中に入るには結界を壊すしかない。それなのに結界がそのままだった事にキザキは驚いた。
「なに!! ではどうやて中に……」
攻撃が当たらないのでしょうがないのでキザキは結界を解き、腕でもう一度攻撃をする。しかしその攻撃は割って入って骨の恐竜モンスターが割って入ってトウヤを守った。
トウヤはこのままではリヨナが破壊されそうなので、リヨナをキューブで守りその場を離れた。
「ち、目障りなザコどもが」
キザキの影からさらに大量の腕が現れ、モンスター達を攻撃していく。
「ナビ、あの腕なに?」
「検索結果が出ました」
ナビに知りたい事を訪ねれば、彼女がキザキのステータス内の該当する能力を探し出してくれる。わざわざ自分でステータスの隅から隅まで確認しなくていいので大助かりだ。
「影魔法、
魔法の技だった。トウヤがキザキの魔力を示す紫色のバーを見ると三分の一が減って白くなっている。魔法なので幽霊にも効果があるようで、仲間のモンスター達が吹っ飛ばされていく。中には一撃でやられてしまった者もいる。生命力を示す緑色のバーを一瞬で真っ白に変化していた。死んでいったモンスターからステータスの表示が消える。
影の腕の説明によると、腕は発動から一分で消滅してしまうようだ。効果範囲は術者から五メートル。狭い室内で使われると避け辛くかなり厄介な魔法だ。
「もしかして、前の影に潜った移動も影魔法?」
「検索終了。影魔法、影渡りです」
自分や仲間を影から影へ移動させる魔法らしい。敵には使えないようなので、戦闘中にどこかに飛ばされる事はなさそうだ。
モンスター達やラピスがキザキの相手をしている間に、トウヤは腰に下げた巾着から宝石を取り出した。これは手に入ったアイテムを「一番小さいアイテム」に変えたものだ。こうしておけば必要な時まで持ち歩くのが楽だからだ。
「魔法無効化や魔力封印とかかな?」
キザキの影の腕や移動を封じられるアイテムを探す。キザキの発動していた影の腕が時間切れで消えた。そのタイミングでモンスター達が一斉に飛び掛かる。だがキザキは影を渡ってそれを避けた。モンスターの背後にキザキが現れ、影の腕でまとまっているモンスターを殴る。
(危ないっ!!)
背中を向けているので反応できなさそうだ、なのでトウヤはアイテムを探すのをいったん中断し、攻撃をキューブで止める。突然腕が前に進まなくなり、キザキは何が起こったのかわからない顔をしていた。ラピスがそんなキザキを殴りに行く。モンスター達もキザキを再び捕らえた。だがさっきの失敗を生かし、遠距離で火の玉を飛ばせるジャック達はキザキが影を移動しても対応できるように天井付近を浮遊して周囲を監視できる位置に陣取っている。
トウヤはその様子を見てキューブを解除しアイテム探しに戻った。周囲の魔力を全部吸収し、魔法を使えないようにするアイテム、これでは味方も魔法が使えないのでダメだ。
「範囲じゃなくて、指定した相手だけに効果のあるものに絞り込んで」
「かしこまりました」
「魔法封じの杖、なんか名前からして期待できそうだな」
ナビが絞り込んでくれたアイテムの中から良さそうなものを選んでトウヤは作ってみた。見た目は木彫りの杖で、なんの装飾もなく、いかにも魔導士の杖ですと言いたげなシンプルなデザインだ。
「う~ん、こんな感じかな、えい!」
トウヤは魔法の杖など使った事が無いので、とりあえずその杖を釣竿のように降ってみた。杖の先から光が出て振った先に向かっていく。特に目標も定めなかったせいか、それは天井を浮遊していたジャックの一体に当たり、当たったジャックは「え、自分なにしてん?」と言いたげな視線をこっちに向け、ゆっくりと落ちていく。
慌ててジャックの下にキューブを使い、空中に着地させた。よくは知らなかったが、ジャック達が浮いているのは魔法の一種だったようだ。そのため杖の光を浴びたら浮いていられなくなったのだろう。
「カボッ……」
インカム越しにさっき魔法封じの杖を食らったジャックから苦情が来る。
「ごめん、ごめん。怪我は無い?」
「カボ!」
元気な返事が返ってきた。怪我はしていないようだ。ゴーストが二体やってきて、杖を食らったジャックを両サイドから掴んで浮かばせた。そのまま部屋の隅の天井に退避してもらう。
帽子に竜が刺しゅうされたジャックがトウヤの横に来た。あのゴースト達はこのジャックが指示を出してくれたようだ。
「効果時間は十分らしいから、それまでそこで大人しくしていて」
「カボ」
「お前もありがとな。助かったよ」
「カ~ボ」
竜刺しゅうのジャックが持ち場に戻っていった。さてと、この杖ではまた味方に当たってしまう危険がある。これじゃダメだ。
「アナタは戦わないのですか?」
トウヤの影からキザキが現れる。トウヤはすぐさま手に持った魔封じの杖でその顔面を殴ろうと振りかぶった。
キザキの影から腕が出てそれを掴んで止める。さらに影から剣が出てきてそれでキザキが反撃をくりだす。その剣を横から割って入ったスカルナイトの剣が受け止める。
「トウヤ君、大丈夫?」
ラピスがトウヤの胴を抱えてその場から離れる。キザキの攻撃でスカルナイトの生命力が一気に真っ白になった。
「ありがとうラピスお姉ちゃん」
やはりあの影を動く魔法は面倒だ。早い所何とかしなければ。キザキの魔力は減るどころか徐々に回復している。時間をかけて魔力切れを狙う作戦はダメだろう。
(たしか、魔法封じの矢があったな。後は必ず当たる弓でもあれば……)
「ナビ、必ず当たる弓はある?」
手に持った魔法封じの杖をアイテム作成で変えようとしてみた。
「そのアイテムに必要なコストが足りません」
アイテムを作るには同価値のアイテムを消費する必要がある。足りないなら追加すればいい。とりあえず巾着から宝石を三個掴んで杖と一緒に消費すると、弓に変換する事が出来た。
ラピスに担がれたまま矢を作りだしキザキを見ながら矢を放つ。矢はまっすぐ飛んでいたが、途中で方向を少し変えキザキに向かっていく。キザキも矢に気付き影の腕で掴んだ。その瞬間影の腕が消滅した。矢はそのまま何事も無かったかのようにキザキに向かっていく。魔法封じの効果がこんな所でも発揮されたようだ。
キザキは仕方がないので影の中に逃げる。すると矢は空中で停止し百八十度方向転換しトウヤに向かってくる。正確にはトウヤの足元、その影だ。そこからキザキが顔を出した。
「お姉ちゃん、足元」
ラピスが出てきたキザキの顔面を蹴り飛ばした。そのままキザキが宙を飛び、その後を追った矢が命中した。キザキの持っていた影で出来た剣が消える。魔法は消されたようだ。
「今から十分間、奴は魔法が使えない。今の内に攻めるんだ」
トウヤがインカムを使い全員に指示を出す。ラピスもトウヤを置いて戦闘に加わっていく。
「ナビ、あいつに弱点属性はあるか?」
「弱点は聖属性です」
(さすが影魔法を使うネクロマンサーだ)
いかにもな弱点属性を聞き、その属性の矢を作り出した。絶対当たる弓の効果はさっき見たので間違いない。一本撃っては次の矢を作っていく。乱戦の中でキザキの姿は見えないが、ステータスは見えている。空に放った矢が乱戦に潜っていくとキザキのステータスが減っていくので命中しているのだろう。
彼の衣装とネクロマンサーの肩書から魔法職のようだと思っていたが、トウヤの予想通りに近接戦はあまり得意では無かったようだ。それでも弱いモンスターなら腕力でも倒せているようだが、数が多すぎる。魔法を封じられた今、その生命力はどんどんと少なくなっていき、最後には全てが白に変わっていった。
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