魔導師のレベルは上がる
「いたぞ! あれがスライミースライムだ」
「あれならミーアちゃんでも片手で倒せそうなの、あれが役に立つの?」
あれ? シャルのミーアの呼び方がミーアちゃんになっている、1000歳差の友達か
シャルは悪魔城から一歩も出なかったから友人と呼べるものはいなかったんだろうな
「ユータさん、ここからどうするの?
ただあれを倒すわけでもないでしょ」
ミーアが俺のやることをわかってるかのようにニヤつきながら言ってくる
「まあ、見とけよ。とりあえずこのフロアから出てくれ」
「出入り口を強く囲め」
「ウォール」
まずはスライミースライムをこのフロアに閉じ込めて俺も外に出る
「20回、100倍」
「ウィンドカッター」
俺は壁に開けておいた小さな穴からスライミースライムに狙いをつけウィンドカッターで分裂させていく。
ウィンドカッターの刃は薄いので隙間からスライムが漏れることはない
最初のうちは魔力がもったいないが、後から魔法を発動しなおすのも面倒だし、魔力に余裕もあったから100倍にした。
2匹のスライムが4匹になり、4匹が8匹になり……倍々に増えていく
合計20回打ったので100万匹ほどになったと思うが……
穴を覗くと透明なスライムが奥の壁が見えないほどフロアに詰まっていた
「よし、準備ができたぞ。ミーア「10000回」でお前が持つ全ての属性の攻撃魔法を打て!」
「ウォール解除」
俺たちのいる通路にピンクスライムが水のように溢れ出してくる
「わかった!」
「10000回、1倍」
「ファイアボール」
「ダークフロア」
「バブルクラッシュ
「エアバレット」
4色の魔法の線がピンク色の波に向かって飛んでいく、切断系の魔法はないのでスライムは10000回の魔法により消えていき
半分ほどのスライムが消えたところで魔法の威力が落ちていき4色の虹は消えた
「魔法が消えちゃったの、どうするの?
私がやる?」
「いやもう半分は俺がやる」
「10000回、一倍」
「ファイアボール」
「バインドアロー」
「エアバレット」
「バブルクラッシュ」
「マジックヒール」
「ニードル」
計60000回の魔法がピンクの波を消滅させた
「ユータ、これで何が起きるの?」
「そうだよ、こんな弱いスライム倒すんだったら、強いモンスター狩りたかった」
たしかにスライミースライムは経験値がゴブリン並みに低いから10000匹倒したとしても少ない経験値しか得られない
「ミーア、ステータスカードを見てみろ
面白いものが表示されてないか」
「4属性のスキルレベルが全部10になってる、なんでなんで?」
実験成功だ、ウォータイガーを倒した時、大量に打った「バインドアロー」の属性である闇魔法のスキルレベルだけが多く上がっていた
そこで、俺はスキルレベルはモンスターに当てた魔法の数に比例して上がっていくという仮説を立てたのだ
ちなみにゲームでは空中に向かって魔法を発動してもスキルレベルが上がったがこの世界は違いその技は使えなかった
そこで2倍に増えるという能力を持つスライミースライムを思い出し、そのスライムを大量に増やして何回も攻撃すればスキルレベルが簡単に上がるのではないかと思ったのだ
実験は大成功、俺もミーアもスキルレベルが最大の10まで上がった、ミーアの空間魔法のレベルはもちろん0のままだが
「ほら、シャルちゃん10レベだよ!」
「ああ、それは良かったの」
自分に関係ない話ちは興味がないのかミーアの自慢を華麗に棒読みでシャルが受け流している
「そういえばユータは空間魔法覚えられないの? ミーアが覚えてるのもおかしいの」
「そういえば、シャルにはミーアが空間魔法使えること言ってなかったな
あれは———」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「ミーアが魔力切れを起こして、空間魔法のスキルを獲得したのはここら辺なのか」
「うん、そうだよ、魔法の練習に夢中になっちゃってね」
理由が頑張り屋のミーアらしいな、ここら辺は他と変わったところは何もなく、ただ少し開けていると思えるくらいの森の一部だ
ここにきたのはウォータイガーを倒した後にミーアのステータスカードを見たとき空間魔法のスキルが表示されていて、それが隠し要素とわかったのでスキル獲得のためにやって来た
隠し要素ならミーアと同じ魔導師の俺でも空間魔法を獲得できるはずだ
「確認だがここで魔力切れを起こすんだよな」
「そうだけど場所が少しずれてる、
後一歩前、行き過ぎ、半歩下がって、そうそこ」
「よし、やるぞ!」
「十億倍」 「マジックヒール」
そこら辺に撃っても危険がなさそうな「マジックヒール」を近くの木に向けて撃った
意識が遠のいていく、これが魔力切れか
空間魔法の代償には安いが結構キツイな
頭に文字が浮かんできた。ミーアの言ってたやつだ
《空間魔法術師になれる可能性がないのでスキル「空間魔法」は獲得できません》
なんだそれ? 俺は一生魔導師で生きないといけないため空間魔法は覚えられないようだ、ミーアは少しでも「空間魔法術師」になる可能性があったから覚えられたのか
これじゃあただ魔力切れを起こしただけじゃないか、俺は自分より年下の女の子の肩を借りるという屈辱を味わいながら宿に戻った
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「というわけなんだ。シャルわかってくれたか?」
「少し可愛そうだね、転職ができないなんて」
シャルが慰めてくれるが、《魔法語自動翻訳》を持つ俺にとっては空間魔法なんてあったら便利なおまけ程度のもので必ず必要というわけではない
また、スキルレベルが10になったということは新たに強力な魔法を使えるようになったということだ。
これまでも誰かに負けることはなかったと思うが、さらにその負けない確率を上げることに成功した
「2人とも、クエストはクリアしたがまだこの洞窟を進んでみないか、俺も新しい魔法を試してみたいし」
「大賛成! 私も新しい魔法使ってみたい!」
「私も行きたいの、今日私自身の手ではモンスターを倒してないの」
よかった2人とも賛成してくれた、たしかここの洞窟にはボスがいたっけ、そんな強くなかったはずだから一人で10匹くらいは余裕で相手にできるくらいだったが……
最後のフロアまでの道中にもモンスターはいたが強くないので瞬殺していく
モンスターが弱すぎたのかどちらが次のフロアのモンスターを早く狩れるか勝負していた
「黒槍」
「また私の勝ち」
「またシャルちゃん壁を貫通して倒してる、そんなの負けるに決まってるじゃん」
シャルは長年培ってきた魔力感知でモンスターを探し、壁をも貫く「黒槍」で次に行くフロアの敵を倒してる。これで負け無しの30連勝だ
「ミーア、魔力感知の練習をしてればいずれお前にも同じことができるようになるぞ、シャルはその魔力感知を長い時間鍛えてきたからこんな芸当ができるんだ」
「ほんとうに? じゃあシャルちゃん魔力感知のご教授よろしくお願いします」
「いいの、でも私は厳しいの」
ちなみに俺は転生ボーナスか知らないが魔力感知は完璧だ、あと2フロア進むと大きな魔力を発しているものに出会う、おそらくボスだろう
「もう少しでボスに着くぞ、気を引き締めていけ」
「了解しました、ユータ隊長!」
「わふぁったの」
ミーアは少しふざけているし、シャルはあくびをしながら返事をしてるが、今から戦う相手は強くないし、こんな感じでも大丈夫か
通路からこっそりと覗いてみるとここのボスであるはずの身長が10メートルほどあるエンペラーオークは眠ったようにそこに倒れていた
しかしこの豚は死んでいる、オークの全身の切り傷から血が吹き出していて、床に滴っている血もまだ新しい
つまりこいつを倒した奴はまだ近くにいるということだ
「やっと来たか、待ちくたびれたよ」
頭上から声が降りてくる、上を向くとそこには二本の角を持ち翼を生やした者がゆっくりと羽ばたきながら降りて来た、服装や顔は光る苔が天井に生えてないため暗くて見えない
雰囲気はシャルに似ている、悪魔族か?
「ユータ、ミーア気をつけてこいつは魔族。私たちを悪魔城に閉じ込めた種族なの!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます