魔導師は質問する

 

「スキルって〈悪魔魔法だけですか?〉」


 悪魔召喚は分かるが、黒槍とかも〈悪魔魔法〉に入るのか


 それに、普通はスキルの下に使える魔法が表示されてるはずだが魔法名の1つもステータスカードには表示されてない


「そうなの、悪魔族は〈悪魔魔法〉しか使えないの」



「じゃあ、魔法名が表示されてないのはなぜだ?」



「〈悪魔魔法〉は自分の想像をすることで魔法が発現するの、私は「黒」を主にイメージしているから真っ黒な魔法が出るの」



 ゲーム内では〈漆黒魔法〉とか噂されてたが、悪魔王は他の魔族と同じく〈悪魔魔法〉を使っていたのか



 それに予想通りシャルの職業は「悪魔王」だ、ステータスの補正が特殊で、「力」以外のステータスに1.2倍の上方補正がかかり

「力」には0.1倍の下方補正がかかっている



 〈悪魔魔法〉が主な戦いの手段であるシャルにとっては「力」のステータスは不必要だから、実質全ステータスに1.2倍の補正と同じようなものだ



「シャル、実はレベルが上がるとステータスポイントというのがもらえてそれを自分のステータスに自由に割り振ることができるんだ


 シャルは1ポイントも使ってないようだし、ポイントを振ってみないか?」



 6543ものステータスポイントが放置されてるのはとてももったいない、シャルはポイントをつかってないのでステータス1つ分を無駄にしていることになる



「わかった、何かオススメとかあるの?」


 オススメか……普通は自分の職業に合わせて補正がかかるステータスを選ぶのだが、あいにくシャルは殆どのステータスに補正がかかってるからな……



「正直言って、シャルのステータスは十分すぎるほど高い。さらなる高みをを目指すなら魔法攻撃力の「知能」なんかどうだ?」



 シャルの「知能」が今の倍になればほとんどのモンスターは倒せるようになるだろう

 そうほとんどは……




「ユータが言うならそうする、ユータは元々知ってたかのようにこの世界について詳しいの、ユータなら間違いないの」



 思わずシャルさんとか言ってしまったから

 バレたのか? 普通悪魔城なんて行くやついない。まだ疑う段階までいってもないと思うが……






「日没までまだ時間がある、もう1つくらいクエストを受けてもいいか?」



 俺たちは即急にランクを上げなければならないし、1000万zの方はまだ手もつけてない


 ゴブリンキングの素材は合計で100万zくらいにはなったが、参加費にはまだまだ足りないし、全財産を支払うわけにもいかないので貯金も必要だ



「お、これはラッキーだ」


 受付がクエスト依頼書を貼ってるのをチラ見すると、こんなクエストが依頼されてた


 —————————————


 ★★


 スライミースライムの討伐



 場所:カルスト洞窟


 報酬

 10万z


 —————————————


 俺は貼られたばかりの依頼書を剥がして

 手に取る



「ミーア、シャルこのクエストを受けるぞ」



 2人とも不思議そうな顔をしてる、そりゃそうかさっきまで星6のクエストだったのに急に星2のクエストだ



「なんでそんな星の少ないクエストを受けるの?」



「そうだよシャルちゃんの言う通り、星2なんて意味がないじゃん」



 そう、意味がないのだ。俺たち赤ランクは星が3つ以上のクエストしか星が加算されない。



 白ランクは星1つから、黄ランクは星2からと言うふうに一つづつ増えていく。


 また金ランクの冒険者が極端に少ない理由も星6のクエストが多くなく、金ランクまでに上がるための必要な星の数も多いからである




 しかしこのクエスト、というかモンスターには星とは別の旨みがあるのだ



「まあまあ、騙されたと思ってついて来てくれよ、申し訳ないがシャルにはそこまで関係がないが……」



「ユータさんが言うならついてくけど…」


「ユータなら面白いことするんでしょ、もちろんついてくの、私に関係ないとしたら、レベル上げ……とか?」



 シャルが意外と乗り気でよかった、このクエストはシャルにとってはあまり意味のないものだからな



「おお、シャルいい線いってるぞ。正解発表は洞窟に着いてからだ、早速行こうか」






 洞窟は入り口は普通の家のドアほどで狭く俺のゲームでの経験がないと場所さえわからないくらいの地味さだった


 中に入ると、入り口の小ささからは想像できないくらい広い空間がそこにはあった。

 山が噴火し溶岩が流れた後にできた洞窟だからこんなに天井が高いのか


 足場は走れるほど良くはないが無理をせずに歩けるほどだ、この洞窟は通路とフロアの二つのパーツに分けられていて、今俺たちが歩いてるのは通路の方だ。


 この世界の洞窟はなぜか光るコケで覆われていてランプや「ライト」などの魔法は必要ない


 歩いてると、奥の方に広い空間が見えてきた。



「ほら、あそこにスライミースライムがいるかもしれないぞ、言い忘れてたがスライミースライムはレアモンスターなんだ。見つけるのに時間がかかるかもしれない」



「さっきからずっと思ってたけどそのスライムの名前なんか変じゃない?」


 ミーアが聞いてくるが俺も最初はそう思った、しかし名前には理由があってつけられるものだ



「名前の由来は単純だ俺たちが今探してるスライムは、切断系の魔法で攻撃した時だけ元の大きさを保ったまま二つに分裂するんだ」



「へー、面白いモンスターだね、シャルちゃん知ってた?」


「知らないの、私は悪魔城から一歩も出たことなかったから、外の世界を見る方法は召喚の杖を通して見るしかないの」



 ああ、そうだったな、なぜか悪魔王は悪魔城の外に出たことないとかいう設定を思い出した




 話していると見えていた空間に出た


「これは、すごいな……」


 光るコケが360度プラネタリウムみたいに拡散しているのは感動したがこれは驚きの声だ



 なぜか100匹ほどのスライムの群れがそこにいた、考える頭脳を持ってるのか

 この洞窟に迷い込んだ猪を連携かはわからないが交代で体当たりをして攻撃をしてる



 スライム言えどもモンスターではあるので1匹の動物て100匹ほどのスライムに立ち向かうのは無謀だったのか、猪は地面に倒れ、死んだ




「俺はスライムのリンチを見にきたわけじゃない、俺はスライミースライムを探しにきたんだった」


 スライムが集団行動をして狩りをするところなんて初めて見たから見入ってしまった



「全ての敵に、1倍」


「ウィンドカッター」



 空中から全てのスライムに向かって風の刃が飛んでいく、スライムは初心者御用達のモンスターでもあり、ゴブリンより弱いので一撃で倒せる


 青い塊は水のように地面に溶け込み消えていった



 スライムを貫通して、地面に刃が刺さったせいで出た砂埃が晴れていく




 そこには2匹のピンク色をしたスライムが飛び跳ねていた

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る