魔導師は売却する
「ユータさんあの箱なに?」
初めて見るものなのか質問をしてくる
いやあれには似つかわしくない見た目か
「宝箱だと思うが」
何が入ってるか分からないが普通は魔剣や新しい魔法を覚えられる魔導書など普通に買うには高すぎたり、買えなかったりするものが入ってるはずだ
箱の大きさは1メートル四方くらいで宝箱にしてはかなり大きい
「2人で勝ち取った宝箱だ2人で開けないか?」
「よし、じゃあ開けるよ」
その宝箱?には箱に二本の角のような装飾がしてあり悪魔が宝箱に変身したようにも見える。
また箱全体に紫や黒の直線的な模様が刻まれて、禍々しい
いつもの宝箱とは見た目が違いすぎるが箱の蓋の中央に漆黒の宝石が埋め込まれてるので、言うなら闇の宝箱と言ったところか
ミーアは容赦なく角の装飾を掴んで開けようとする、俺ももう一方の角を掴む
「わかった、いくぞ、せーの!」
2人の力を持ってしてやっと開くくらい重厚な造りだ
中には持ち手から樹形状に漆黒の棘が出てる棒のような不思議なものが出てきた。これはメイスか? いや道具の詳細を見ないと分からない。
ステータスと同じように注意を向けると
黒いそれの詳細が表示される
———————————
悪魔召喚の杖
使用時悪魔を召喚することができる。
召喚士が興味を引く人物の場合強い悪魔が召喚できたりできなかったり……
使うときはどこでもいいので地面に突き刺してください
悪魔があなたに服従するかしないかはあなた次第!
一度使うと無くなります
———————————
なんだこれ? 初めて見るアイテムだ
ゲームでは存在しなかったアイテムだ
しかも悪魔召喚だと……面白そうだが少し危なそうだな、使うときは気をつけないと
「ユータさんなんだった?」
「なんか悪魔召喚?の杖だって、とりあえず今は使わないでとっておくか」
「えー、悪魔ちゃんみたかったなぁ」
ミーアが残念そうに言ってるが悪魔って危険な匂いしかしないんですが……
ストレージに悪魔の杖をしまっておく
「落ち着いたらそのうち使って見るから楽しみに待ってろよ」
今まで敵キャラでしかなかった悪魔族が仲間になるなんて、最高だ。それに悪魔族は作中最強クラスの種族で強いやつだとレベルが1000近かった気がする
「ここにいても飯はやってこない、
さっさと街へ帰ってご飯を食べようか
ミーアもお腹が空いたんじゃないか?」
「ごっはん、ごっはん♪」
歌いながら歩いているといつもと変わらない景色が見えてきた。
「ミーア、ちょっと寄っていいか?」
「どこに?」
「せっかくだしギルドにウォータイガーのドロップ品を売りに行こうと思っていてな」
どうせ俺個人では使わないしストレージの肥やしにするんだったら売った方がいいからな
ギルドに入ると少し時間が遅かったせいか空いている、いつものカウンターへ向かい、素材の買取を申し込む
「素材の買取をしてもらいたいのだが」
「素材の買取ですね、それでは買取希望の素材を見せてください」
ゲームと同じセリフでマニュアルっぽく聞いてきた
「これだ」
俺はさっき買った大きめの皮でできた肩掛けバックからウォータイガーの黄色と黒の警戒色で構成された一枚で絨毯にもなりそうな皮と俺の腕の大きさ程の鋭い牙を出す。
ストレージから取り出してもいいんだがいちいち「虚空倉庫だ!」なんて驚かれるのが面倒だ
「これは……ウォータイガーの牙と皮ですか?」
一瞬見ただけでなんの素材か分かるとはこのギルドの受付はよく教育されている
「ああ、以前はここに世話になったからなここら辺にはなかなかいないウォータイガーの素材を融通しようと思って売りにきた」
適当な口実を作ってユータが狩ったという事実を隠す
ギルドマスターのギリーにでも知られたらまた部屋に呼ばれて尋問される
「ありがとうございます! こういう良い毛皮はなかなかここでは手に入りにくくて……見た目も派手なので装備にしても、絨毯にしても高く売れます
牙は中級冒険者にウォータイガーの牙の剣が大人気で供給が需要に追いつきません」
「そうか、良かった」
そんな装備絶対に着たくないが愛想笑いを返しておく
「値段は皮と牙合計で150万zです」
彼女は金貨が大量に入った袋を抱えてくる
「大金貨15枚にもできますがどうしましょう?」
「いやそのままでいい」
大金貨は一枚で10万zなので持ち運びが楽だが普通の街の店では使えないので金貨にしておく、ストレージに入れとけば安全で軽いからな
ちなみにこの世界の貨幣価値は
鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨
の順番で価値が上がっていく
ミスリル貨という一枚1000万zの貨幣があると聞いたが大商人や国家間のやりとりでしか使われないらしく、俺みたいなのにとっては無縁だ
「金も受け取ったし、次は飯だ」
「ごっはん♪ ごっはん♪」
暇そうに果実水をちびちび飲んで待っていたミーアの顔が一気に明るくなった
今日は宿で飯を食べよう、あそこの飯はカフェより美味い、ミーアの叔父さんのドウタさんが暗躍してるのだろうか
「ただいまー」
ミーアはこの宿に滞在してるからここが第二の実家みたいに感じてるようだ
「おかえり、ミーア!」
ミーアの姉ニーナが妹を抱きしめながら迎えてくれる
宿は夕飯の時間には少し早かったので忙しくはないようだ
「お姉ちゃん……くる……しい」
ミーアの体は声が出ないくらいに抱きしめられてる、ほんとうに苦しそうだから離してあげて
「ああ、ごめんなさいね、今日の修行はどうだったの?」
本気で謝ってなさそうだがこれがいつもの光景なのだろう
「お姉ちゃん、今日は、なんと、試験に合格しましたー!」
「ほんとうに! おめでとうミーア」
拍手をしながら自分のことのように喜んでる
「そして、なんと、合格のご褒美として、レベルが300になりましたー!」
それじゃあ説明が足りないな
俺がレベルアップマシンみたいな言い方だ
「いや、ミーアそれは……」
「ほんとうに? ユータさんレベル上げるスキルなんて持ってるんですか?」
拍手を止めて疑いの目でミーアを見る
さすがにミーアを疑っている、1日でレベルが200以上上がるなんてまずありえないことだ
「ああ、それは自分がたまたま経験値が大量に稼げるところを見つけたってだけで……頑張ったのミーアですよ」
「いやいや、ほとんどユータさんでしょ」
「いやいや、ミーアも頑張ってたぞ」
「いやいや、———」
これが何回か続いた
「2人はほんとうに仲がいいのね」
俺たちをからかうように言ってくる
「うん、仲いいよ、ユータさんの冒険にもついてくことにしたし」
またからわないでとツッコむのかと思ったら自分の決意を姉に伝えるのか
「ついに、ミーアがこの街から出てくのね、間違えて魔導師を選んできたときはこの街で一生過ごすのかと思っていたけど」
思いのほか嬉しそうだ、家族離れ離れになるのは悲しいことだと思うが……
「付いてくるのは自分が誘ったんです、すいません」
決めたのはミーアでもきっかけを作ったのは俺だ、俺がこの宿から連れ出すんだ
「謝る必要なんてないわ、だってミーアに外の世界を見せてくれるんでしょ、こっちがお礼を言いたいわ、ありがとうございます」
たしかに魔導師一人で冒険に出るのはかなり厳しいと思う、なにせ弱い職業の上に魔導師は後衛だからな詠唱の間にすぐやられてしまう
「そういえばユータさん、この街からはいつ出てくの?」
「急だが明日にでも出てこうと思ってる、この街での目的は今日の隠しエリアだからな」
それに明日出発すればアレに間に合うはずだ
「明日!? じゃあお姉ちゃんとはしばらく会えなくなるね……」
目線を下にしている、寂しそうだ
「いいのよ、ミーアが行きたいから行くんでしょ、今日はお別れパーティよ、おかわりは自由、いくらでも食べなさい!」
「今日は食べまくるぞー!」
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