魔導師は勝利する

「ミーア!ウォータイガーが来るぞ!」


「あれ、ほんとうにウォータイガーなの? でもなんでここに? ユータさんなら倒せるよね」


「いや、あれは俺でもキツイかもしれない、あの虎の魔法防御はレベル1500にも匹敵するぞ」


 そうなのだ、確かゲームだとレベル150のウォータイガーの精神力は3750だったから単純に倍にすると7500だ


 それに対して俺の魔法攻撃力である知力はレベル52の状態で《魔法語自動翻訳》があるとはいえとても攻撃が通るとは思えない、


 俺は少しでも勝つ可能性を上げるため残りステータスポイントを全て知力に振る


「ミーア、お前は上へ登って逃げてろ!」


「できない、さっきの階段が無くなってるの」


 クソッ、俺はミーアを守りながら、レベル300のウォータイガーを倒さなければならないのか


「部屋を分断する強固な壁を」


「ウォール!」


 地面から厚さが1メートルくらいの土壁が地面を押し上げて出てくる


 とりあえず部屋を分断し時間を稼ぐ、この虎は魔法攻撃耐性が強いだけなのでこの攻撃でない壁は時間を稼げるはずだ


 しかし、ウォータイガーの鋭い爪は確実に壁を少しずつだが削っている



「ミーア、この戦いはかなりキツイ戦いになると思う、俺だけじゃ勝てない、勝つためにはミーアの協力が不可欠だ。怖いのはわかるが協力してくれないか?」


 震えるミーアに俺は優しく語りかける


「うん、わかった協力する、私は何をすればいいの?」


「ありがとうミーア、ミーアにはファイアボールを俺の合図と同時にある所に打って欲しい」


「ある所?」


「それはな————」


 ミーアに作戦を説明し終えるとちょうどウォータイガーは壁を破って俺たちを認識した、まずは虎のターゲットを俺に取らなければ


「連発」「ファイアボール」


 火の玉が次々とウォータイガーに向かってとんでいく、ダメージはないに等しいが、注目はこちらに向けられた


「ほら、デカ虎こっちだ!」


「挑発」のスキルは持ってないので意味はないと思うが俺の方向に走ってきた。


 一直線に向かってくるので動きが読みやすい、よし今がチャンスだ!


「100倍の強度」「エアキャプチャー」


 可視できるかできないかぐらいに透明な網がウォータイガーを包む


 俺は風魔法レベル2で獲得した、風の網を作り出しモンスターを捕らえる魔法

「エアキャプチャー」でウォータイガーの動きを止めた


 しかしウォータイガーは自分の置かれてる状況を理解した途端、見えない網を牙で攻撃したではないか、知能が他よりは高いな


 それにその牙は光を帯びていて、ものの数秒でその虎は網から抜け出した、


「あれは……光牙ライトタガーか?」


 スキルはボスレベルのモンスターにしか使えないはずだ、このウォータイガー、何かがおかしい


「100倍でもダメか、だとしたらアレをする使うしかないな」


「ユータさん大丈夫なの?」


 ミーアが不安そうに聞いてくる、だが俺の言った通りウォータイガーから1番離れた場所で俺の合図を待っている、まだピンチじゃないし落ち着いてるな


「ああ、大丈夫だ最初には言った作戦が失敗したからパターンβに移る、ミーアのやることは変わらないから安心してくれ」


 パターンβは魔力をかなり使わないといけない作戦だ、ここに来るときみたいに倒れてしまうかもしれないからあまりやりたくなかったが仕方ない


「コイツが死ぬまで」「バインドアロー」


 無数の黒い矢がウォータイガーに突き刺さっていきその矢の数は減ることを知らない。

 だんだんとウォータイガーの歩みは止まっていく


 この魔法は対象の動きを1秒止めるというものだがゲームでは連射ができないためクソ魔法のひとつだった。


 しかし連射ができるとなったら違う、たとえウォータイガーの魔力耐性が高くても一発につき0.1秒は止められるはずだ


 つまり1秒に10発打ち込めばこの虎の動きは完全に停止する!


「ミーア! いまだ!」


「わかったよ、ユータさん!」


「10倍!」 「ファイアボール!」


 ミーアの10倍の詠唱が見事に決まり

 大きな火の塊が飛んでいく


 向かった先は……ウォータイガーの上の天井だ!


 ファイアボールの勢いで巨大な槍のように鋭い鍾乳石の氷柱がウォータイガーの上に落下し、体に突き刺さっていく。


 ウォータイガーの体からは鮮血が赤い花のように飛び散り、ちょうど鍾乳石の槍が落ちなくなったあたりで失血が原因か分からないが動かなくなり、絶命した。





「ミーア、倒したぞ!」


 思わずガッツポーズをしてしまいミーアの元へ駆け寄る


「やったーー!」


 ミーアも両手を上げて喜んで、こちらへ走ってきた



 2人で駆け寄り抱きしめ合って喜んでしまう った。冷静になってお互いの顔が赤くなってるのに気づいたのは30秒後くらいだった


「あっすまない、少し興奮してたようだ」


「わ、わたしもそうかもしれない」




 ウォータイガーは魔法防御力は高いがそのかわり物理防御力は低い、そのため鍾乳石の氷柱は簡単に体を貫通した



 レベルの方は……

 ステータスカードを見てみる



 ————————————


 名前……ユータ

 魔導師

 LV324

 527500z


  体力 16200

  防御力 1620

  筋力 1620

  俊敏 1620

  魔力 7944

  知能 2250

  精神力 1944

  器用 1620

  幸運 1620


 残りステータスポイント 1360


 スキル

 〈魔法語自動翻訳〉LV1


 〈炎魔法〉LV2

 ファイアボール


 〈水魔法〉LV2

 ウォーターショット


 〈土魔法〉LV2

 ウォール


 〈風魔法〉LV2

 ウインドカッター

 エアキャプチャー


 〈光魔法〉LV2

 ヒール


 〈闇魔法〉LV4

 ダークアイ

 バインドアロー


 〈無属性魔法〉LV2

 ライト


 —————————————



 おお、レベルがかなり上がっている

 予想はしてたがEXスライムよりEXウォータイガーの方が獲得経験値が高いようだ


 EXスライムを狩ってたら多分レベル200程度までしか上がらなかっただろう。


 ベルセルクオンラインは次のレベルまでに必要な経験値がだんだんと上がっていくから 1.5倍くらい多めに経験値がもらえたな


 得るための犠牲もあったが……


「ミーアはどんな感じだった?」


 反応がない、彼女の方をみるとぼーっとしてた


「おーい、ミーアさーん」


「あっ、ごめんなさいユータさん、あまりにもレベルが上がりすぎててびっくりしちゃったみたい」


 ステータスカードを渡してくる


「いいのか?」


 普通ステータスカードを見せるということはその人の弱点や持ってる武器を明かすということだ、あまり人に見せるものではない


「ユータさんだし全然いいよ、そもそもこのレベルはほとんどユータさんがあげたみたいなものだし」


 自分の弱さを悔いてるかのように悔しそうだ



「いや、このレベルは2人で成し得たものだ、ミーアの協力がなければ俺は多分死んでいたと思う、一緒に来てくれてありがとう」


 ミーアがいなかったら魔力を使い果たして死んでただろう、バインドアローの連射もあれが最大だったからな


「どういたしまして、でもユータさんは私が1人で絶対に辿りつけないレベルまで上げるのを手伝ってくれた、ありがとう!」


 笑いながらはにかんでお礼を言ってくれた、めっちゃkawaii


 ミーアのステータスカードを見る



 ————————————


 名前……ミーア

 魔導師

 LV310

 100000z


  体力 15500

  防御力 1550

  筋力 1550

  俊敏 1550

  魔力 1860

  知能 1860

  精神力 1860

  器用 1550

  幸運 1550


 残りステータスポイント 1545


 スキル


 〈空間魔法〉LV1


 〈炎魔法〉LV2

 ファイアボール

 フレアサークル


 〈水魔法〉LV2

 ウォーターショット

 バブルクラッシュ


 〈風魔法〉LV2

 ウインドカッター

 エアキャプチャー


 〈闇魔法〉LV2

 ダークアイ

 バインドアロー



 —————————————



「空間魔法!?」


 驚きのあまり声を上げてしまう、

 ミーアは魔導師なのに空間魔法のスキルを持っていたのだ!


「どうしたのユータさん、どうレベル結構上がってるでしょ」


 ドヤ顔でレベルを自慢された、オイオイさっきまで俺に上げてもらったとか落ち込んでたじゃないか、立ち直りが早いのはいいことだが……そんなことより


「いや、自慢とかいいからこの「空間魔法」ってのはどこで手に入れたんだ?

 普通じゃない入手方だろ?」


 空間魔法は7つの初期職業全てのレベルを200以上にするとなれる職業「賢者」で

 とあるダンジョンをクリアしないとなれない「空間魔法術師」という職業でしか使えないはずだ


 まさかミーアが賢者なんてことはありえないし


「ふつーにいつもの場所で一人でウォーターショットの練習してたらミスって魔力切れしたときに


 頭の中に《「空間魔法」を獲得しました》って流れてきた」


 あたり前のことみたいに言ってるがそれすごいことだぞ


 おそらく隠し要素だ、特定の場所で魔力切れが条件って誰がやるんだよ、しかもミーアのいつもの場所っていったら森の奥の奥じゃないかそんなところで好き好んで魔力切れ起こす奴はいない



「絶対誰にも言うなよ、ステータスカードも本当に信用できるやつにしか見せないこと」


「なんで? そんなにその魔法レアなの?

 しかも私その魔法使えなかったし」


 多分魔力量が足りなかったんだな

 空間魔法は総じて消費魔力が多い


「この世界で10人いるかいないかぐらいだ、しかもミーアは正規の入手方じゃない」


 空間魔法が使えるって知られたらとにかく目立つ、しかも職業はただの魔導師だ

 必ず卑劣な手段を使ってでも入手方を聞こうとするだろう


「入手方は偶然だけどそんなに珍しいってことは強いよね」


 希望に満ちた目でワクワクしながら聞いてくる


「それはもう強いなんてもんじゃない

 とにかく絶対に言うなよ」


 一応念押しをしておく


 例えば空間ごと切る魔法次元切断は範囲は狭いが防御力無視でなんでも切断できる


「うん、わかった誰にも言わない」


 空間魔法の重大さは理解してないようだが誰にも言わないというのはわかってくれたようだ


 話してると階段があった所とは逆の方に扉ができた


「レベルも上がったことだし、街に帰ろうか」


「うん」



 扉を開けるとそこにはゲームと同じよう木々生い茂る森が広がっていた。何かが存在する以外は全く同じだった


「これは……宝箱……か?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る