魔導師は起床する

 

「おーい、ミーアさーん起てますかーって寝てるか」


 女性は寝顔を見られるのを嫌うが、寝顔の方が普段よりかわいいと思う、こんな風な場合を除いてな


 グカーグカー

 ミーアは腹を出しながら大きないびきをかいていらっしゃる


「おーいミーア起きろー」


 ほんと起きないな、体に手を触れるわけにはいかないのでドラちゃんの尻尾でミーアの体を突く


「んん……ド、ドラちゃんが呼んでいる……ん?ひと?

 え?えぇ〜!ユータさんがなんでここにいるのー?!痛っ」


 ミーアは驚いて後ろにのけぞって頭を壁にぶつけてしまう


「なんか話してたら眠気が襲ってきてな、つい寝てしまった、申し訳ない。俺が寝てしまったの気づかなかったか?」


 ラッキーといえばラッキーだが眠気に任せて寝てしまったのでミーアと一緒に寝た感覚はなく、なにかを逃した気分だ。


「気づかなかった、その時私も眠気がけっこうきてたからそのまま寝ちゃったみたい、そういえば8時にカフェ集合だったよね!今何時?」


 腕時計を見て確認するが時計の針は11時を指している、寝坊したか……


「ミーアさん、残念ながら只今の時刻11時です。2人で寝坊しちゃったみたいだな、でも普通は宿屋の人が起こしてくれるんじゃないのか?」


 昨日の夕飯の時も起こしてくれたし、


「あの姉、私たちのこと勘違いしやがったな、それで起こさなかったという寸法か。ったく何やってんだかよぉ」


 おお急に口調がヤクザみたいになった。映画で見たことあるぞ


「まあまあ落ち着けミーア、俺たちが寝てたから、起こさなかったんだろ気を遣ってくれたんだ、感謝しないと」


 いやまてよ「俺たちが寝てた」?

「姉が勘違い」?これはもしかして……


「許せねえっすよ、ミーアのアネキ、俺たちがその……あれしてたなんて勘違いしてもらっちゃ、そうっすよねアネキ」


 なぜか俺もヤクザの口調になる、

 でもあの姉絶対俺たちがやったと思ってるよ


「おおユータも分かってくれたか、だからあいつ私たちを起こさなかったんや、カチコミじゃあ!」


 バーサーカーモードのミーアと一緒にニーナのもとに向かう






「あらユータさんとミーア今日はお疲れだったから起こすのはやめといたわよ、昨夜は2人でナニをしてたのかしらー」


「私とユータさんはそんな関係じゃないってば、昨日は2人で話してたら眠くなっちゃってたまたま寝ただけだし」


「ほんとうに?私ったら早とちりしちゃったみたいね、でも残念だわ……ユータさんミーアはいつでも空いてますからね」


「お姉ちゃんまだからかう気?この宿にファイアボール打ち込んでもいいんだよ 〓〓〓」


 ついにミーアが実力行使に出ようとする。


「あっもうすぐ新しいお客様がくる気がする!それじゃあ私はお暇させてもらうわ」

 オホホホホ

 奇妙な笑い声とともに彼女は店の受付に戻って行った


「賑やかな、お姉さんだな……」

 やはり朝起こさなかったのはわざとか

 大体出会った今日であそこの段階まで行くわけがない、俺に彼女は17年間いないし根性もない、そんな俺がどうやって……

 そんなことを考えてると悲しくなってくる



「うちの姉がすいませんすいません」

 これどこかで聞いたことあるな


「まあ、家族が賑やかなのはいいことだと思うよ、まだ朝食も食べてないしもう昼だ待ち合わせの時間には遅れているが昨日のカフェで昼食を取らないか?」


「私もちょうどお腹減ってたの、早く行こ」

 ミーアのお腹減ってるは尋常じゃないからな、また出費がかさむぞ


「そうと決まったら出発だ」


 ミーアがあまり食べないことを願いながら店への道を行く

 



「いらっしゃいませー」

 昨日と同じ店員が迎えてくれる、


「あそこの2人席は空いてるか」


「はい、では案内いたします」




「ここは……昨日と同じ席じゃん、気に入った?」


「ああ、ここなら他の席と離れていて会話が周りに聞こえることもないしな」


 堂々と《魔法語自動翻訳》のことなんか喋ったら狙われてしまう


「周りに聞かれちゃまずいことでも話すの?」


「いや、昨日の俺のスキルとかの話だミーアも他言無用で頼むぞ」


「あっそうか、凄いスキルを持った魔導師がいるなんてバレたら、ユータさんめんどうだもんね」


「ああ、今日も俺の奢りでいいがさすがに昨日みたいに食べすぎるなよ、この後は森に行って魔法の指導だからな」


「わかってるって、すいませーん、この日替わりランチ2つとクリームパスタ1つください、 ユータさんは何頼むの?」


 いやこれはわかってないな、ランチセットの片方は俺の分も頼んでくれたと思ったが1人で2つ食べるのか、ミーアが食べる量を制御してくれると思った俺がバカだった。


「じゃあ俺も日替わりランチ1つとコーヒーで」


「そんなに食べて大丈夫か?さっきも言ったが食い終わったら森で魔法の指導だぞ」


「大丈夫、大丈夫これでも少なめにしてるんだから」

 ああミーアの腹の容量は無くなることを知らないんだったな



「お待たせしました」

 店員が食事を運んでくる


「うん、うまい」


 日替わりランチのメニューが分からずそこだけが心配だったが出てきたのは揚げ物、しかも豚肉だここにくる前もこんなにガッツリとしたものは多く食べてこなかったので高校生の俺の腹でさえ結構キツイ。ミーアの方はどんな感じだ?


 おおすごい、こちらは一切見ないで一心不乱に食べていた。


 結局俺とミーアが食べ終わったのはほぼ同時だった


「食い終わったか?」


「これの倍は食べられるけど魔法の修行があるからね」


 修行か……俺はそんな厳しくするつもりはないんだが、ミーアはそれくらいの心意気でいるのだろう、これの倍は冗談にも聞こえるが事実なんだろう

 日本に来たら一流のフードファイターとしてやってけるはずだ、顔も申し分ないしな






 転生後3回目の森に到着した、今までは1人だったが今回はミーアという仲間がいる、

 修行を始めるか


「それでは、修行頑張るぞー!」


「お、おおー!」

 俺は気合を入れたつもりだが、ミーアの掛け声は棒読みだった

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