魔導師の弟子は合格する

 さて修行を始めよう!


「ミーア昨日出した宿題はどうなってる?

 って昨日は2人して寝ちゃったんだったな」


「そうだよ気づいたら朝だったじゃん、それにあの変な詠唱も忘れちゃったし、もう一回やってみて」


 無理もないな10倍の詠唱は一回しか見せてないし、ミーアの言葉を聞く限り俺の詠唱は

 普通の人が聞くとランダムな文字列に聞こえるはずだ


 それを一回聞いただけで覚えるなんて不可能に近い。


「じゃあ、ミーアが覚えるまで詠唱してやる、あの木に向かって魔法を打ってくれ」


「10倍」「ライト」



「よし!覚えた!がいゃうあうばああい

 だね」


「がいうあばあい!」

「ウォーターショット」


 ミーアがいつも出すより3倍ほど大きい水の塊が空中に出現してそのまま地面に落下する。


「失敗かー、どこが違うのかなー」


「すまない、俺は10倍と言ってるつもりだから、アドバイスはできないんだ」



 アドバイスなんかより俺の仮説が証明された、ミーアが俺の詠唱を言って自然には起こりえない現象を起こしたと言うことは

 俺の詠唱でも魔法は発動するのだ



「え、それズル、もう一回おねがい」


「10倍」「ライト!」


「いやー、覚えられない、もう一回!」


「もう一回」「もう一回」「もう一回」

「もう一回」………………



「10倍」「ライト!」


「よし!覚えた」

「がいゃうあうばああ」

「ウォーターショット!」


 普通のウォーターショットと同じ水の量だが威力が違う、普通だと木を切断するだけだが、この今回はそれだけでなく土を抉り

 遠くの木まで切断した。


「やった、これって成功だよねユータさん」


「これだとまだ5倍程度だな、あと一歩まできてるからもう少し頑張ってみようか」


「でも、もう魔力が残ってなくて、ユータみたいに無属性魔法の適正は使えないし……」


「え?魔導師って全ての属性の魔法使えないのか?」


 さっきからミーアが魔力の消費が激しいウォーターショットしか使ってない理由がわかった。ゲームでは無条件で全属性使えたからずっと不思議思っていた


「当たり前でしょ、私は水、炎、風、闇の4つに適正があるの、普通は2つか3つだから結構レアなんだよ」



「全属性使える人はいるのか?」


 もしかしたら俺以外に全属性使える人がいるかもしれない


「確かここから東にずっと行くとあるベルセルク王国っていう国を作った人が何故だか知らないけど職業が魔導師だったみたいで、

 その人は言い伝えによると全属性使えたらしいよ」


 ベルセルク王国?偶然じゃなければその国を作ったやつはベルセルクオンラインプレイヤーだ。普通ベルセルクなんて単語思い浮かばないし


 国を作るほどだ、俺みたいにチート能力の魔導師だろう。

 でもなぜ言い伝えられるほどの昔にその建国者が存在していたんだ?ゲームが発売されたのは3年くらい前だしどう考えても計算が合わない。


 謎は多いが、ゲームプレイヤーがこの世界にいた可能性は高いな


「そうなのか、俺も全属性使えると言ったら驚く?」


「はい?変な詠唱のスキル持ってる時点でおかしいけど、全属性って……それに普通は光魔法は神の恩恵を受けた僧侶しか使えないんだよ」


 ゲームでは聖剣士とか言う神に仕える戦士職とかは光魔法だけは使えたりしていた 。

 僧侶も全属性の魔法を使えたが光魔法には1.5倍の補正がかかってたな


「なんかユータさんの自慢大会みたいになってきたね……私は魔力切れだからこれ以上修行できないし、お腹も減ってきたからもう帰ろ」


「まだ10倍の詠唱できてないじゃないか

 飯は俺が持ってきてるし」


「いやユータさん手ぶらじゃん」


 俺はストレージからカフェで買っておいたパンと牛乳を取り出す


「虚空倉庫……ですか、ユータさんのせいでもう何にも驚けない気がしてきた」


 ストレージくらいは信用できるミーアには見せてもいいだろう、さすがに転生については言えないが……



「このパンまだアツアツだ!虚空倉庫は温度もそのままの状態で保存できるんだね

 便利だなー」


 ストレージは入れた瞬間の状態を保存する機能があるから、生肉を一カ月入れても腐らないと思う。


「食事が終わったら修行再開するからな」


「でも……魔力ももうないよ」


「それはわかってる、少し試したいことがあるから、手を貸してくれないか」


 俺はミーアの手を握り、ミーアの手を俺の手の一部と認識し、ゆっくり魔力を集中させる


「どうだ?魔力が回復してる感覚はあるか?」


「うん、なんだか暖かい空気に手が覆われてるみたい」


 よし成功だ、魔力の譲渡はできる、これでミーアの魔力はレベル1000の状態だ!


「魔力が譲渡ができるなら、いくらでも修行をできるな、さあ始めよう」


「よし! 今日中に10倍覚えるぞー」




 2日ほど経つとミーアの詠唱はかなりの確率で成功するようになっていた



「10倍」「ウォーターショット!」


「どう?10倍って聞こえた?」


 俺のウォーターショットの威力には少し劣るが10倍の詠唱は成功している。


「よし、これで10回連続で成功だな試験合格だ、おめでとう」


 俺がミーアに課した試験は10回連続で10倍の詠唱を成功させるというものだ


「さっそく約束のご褒美頂戴よー」


「ああ、もちろん用意してるぞ

 まずは俺とパーティを組んでくれ」


「わかったけど、でもなんで?」


「ご褒美はこの森の大量の経験値を獲得できる隠しエリアだからだ、俺もレベルを上げたいしな」


 パーティを組むのは1人の得た経験値が仲間にも入るからだ。他にも仲間への付与魔法の効果が上がったりする


「ほんとうにそんな場所があるなんて

結構な時間かけて探したよね、お疲れ様」


「そうだ、パーティを組むにはギルドに行かないとだからとりあえず街に帰ろうか」


ただのゲームの知識だがそういうことにしておこう



 ギルドに到着してから俺たちはカウンターへ向かった


「パーティ登録をしたいのだが」


「パーティ登録ですね、ではこちらの用紙に必要事項を記入してください」


 冒険者登録と変わらないことを言われる

 ここら辺はマニュアルか?


 パーティ登録に登録に必要なのは意外にも直筆の名前とステータスカードだけでよかった

 カードには自分の経歴を記録する機能があるからな


「パーティは2人だ、これでいいか?」


「はい、魔導師2人……ですか」


 用紙を書いてステータスカードを渡すとま

 たつぶやきが聞こえた


「何か不備でもあったか?」


「い、いえ、ステータスカードお返しいたします」



「やっぱ、魔導師って人気ないんだね」


 ミーアが残念そうに言う


「人気はないがミーアなら詠唱で同レベル帯の冒険者なら敵はいないと思うぞ」


 ミーアの10倍の詠唱があればほぼノータイムで魔法が打てるから時間に対するダメージ量で言うと約5倍の威力だな


「そうかなぁ?でもユータさんの修行を受けたから確実に強くなってる実感はあるよ!」



「経験値大量の隠しエリアのモンスターはすぐに狩れるし、少し露店でも見ていかないか?」


「私もそう思ってたとこ、カフェの料理もいいけど露店のご飯の雑な感じも好きなんだよね」


「ミーアは本当にご飯が好きだな、早めの昼食をここで済ませるか」


 正直俺も露店での飯を経験して見たかったし、何より1人で食うより2人の方が美味いに決まってる


「もちろん代金は……?」


「俺持ちでいいぞ」


 まだオークを大量に狩った時のお金が結構残っているから、今はそこまでお金の心配はない。


「やったーー!」


 両手を天に掲げて喜んでる。

 そんなに嬉しかったか




「じゃあ、あそこの牛串5本と……あのラーメン3杯と…………」


 結局10000zほど使ってしまった、俺はラーメン一杯しか食ってないと言うのに……


「ミーア腹いっぱいになったか?」


「うん、露店でこんなに食べたの初めてだったけど露店は量が少ないからね、たくさん買っちゃった」


 いや、いたって量は普通だったと思うが


「それじゃあ森に戻るか」


「どれくらいレベル上がるのかなぁ

 楽しみ!」


 森に戻ろうとしてるとある店が目にとまった


『良質な服を取り揃えています

  服屋クロージズ』


 服屋かそういえばこの世界に来てから服を着替えてないし、風呂にも入れてない


 男が不潔なのは女の子に嫌われてしまうぞ

 急に危機感を覚えてしまう、


 さて服を買おう!


「ミーア、寄りたいところがあるんだが

 行っていいかな?」

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