魔導師は強くなる
足下の光が消え、周りを見渡せば幅が10メートルほど石畳の上を歩いている冒険者が大勢いたり、石畳の脇の露店の主人が客引きをしている。
「そこのお兄ちゃんひとつ買ってかない?負けるよ」
「ポーション足りてるか?」
「いやラスト一個だ、剣も刃こぼれしてる。金がたりねーよ!」
「ノランのやつ冒険者やめたらしいぜ」
ここは見たことがあるな始まりの街ドスタだ。よく分からないがここは異世界ではないようだ。異世界転生したように思えない。
一応確認してみるか
「すいません、ここってどこですか?」
俺は露天商に恥を忍んで聞いてみる
「にいちゃん、変なこと聞いてくるな、ここは初級冒険者溢れる始まりの街ドスタに決まってるだろ、ほらついでになにか買っていけよ」
「いえ、いまはもちあわせがないので」
「そうか、次は頼むぞ!」
こいつから見たら俺は頭のおかしなやつだと思うのだが……どんな人でも商品を買わせようとする商人の商売根性に驚かされるが、ここの場所の名前方が驚きだ。
「マジでヤバそうだ異世界転生してないことになっている。色々とバグってやがる」
俺はメニューを開きゲーム終了しようとする。
『ゲームクリアまでログアウトできません』
「ん、、いやいや、そんなことしたら俺死んじゃうよ」
ベルセルクオンラインはゲームクリアまで100時間はかかる大作だ
100時間水分補給なし食事なしでプレイしてたらガリガリに痩せた死体が出来上がってしまう
夢でも見てるのか?腕をつねって見るとやはり感じないはずの痛みを確認できる。
いつもよりリアルに感じる触覚、言葉のキャッチボールができるNPC、そして出ることのできない世界、
どうやら俺は本当に『異世界転生』してしまったようだ。
「聞いてねーよ!大体異世界転生なんて普通信じるか?!いや信じないゲームから転生するとか誰が想像できるんだよぉぉぉ!」
大変なことになってしまった。
幸いこの世界の知識はあるが死んだら最後、コンテニューなどは存在しない。
教会で『おおユータ死んでしまうとはなさけない……。』などといわれ気づいたら生き返ってるみたいなことも起きないのだ。
死は『死』を意味する。
ゲームクリアまでと言うことはゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのか?
俺の所持金は0zだ金を稼がなければ、この世界が現実だとすると、もちろん盗賊などの犯罪者グループも存在する。
この街は治安が他の街よりはいいので野宿をした時追い剥ぎに襲われる確率は確か5%くらいだったっけ?
レベル1で盗賊なんかに襲われたら死んでしまう。95%に俺の命は掛けられない今日はなんとしてでも金を稼ぎ宿に止まらなければ。
当面の目標は2つ
最低限宿に泊まれて食事ができるくらいの金を稼ぐこと。
レベルを上げて魔物と戦っても死なないようにすること。
この世界がベルセルクオンラインと全く変わらない世界なら俺の知識が活きるはずだ。
「まずはギルドに冒険者登録だ!」
ギルドはこの街で一番大きな建物。
見た目は地味だがこの街唯一の3階建立ては目を引く。
木造3階建は少し危ない気がするが……
入り口は人の出入りが激しいためいつも開けっ放しだ
「冒険者登録を頼みたいのだが」
「冒険者登録ですね、でしたらこの紙に必要事項を記入してください」
彼女は慣れた手つきで紙を渡してくる。
年齢や職業を記入してカウンターに提出する。
「魔導師……ですか」
「何か記入漏れでもあったか?」
「い、いえなにもありません!」
受付嬢のつぶやきが聞こえる。
ゲームがそのままこの世界に反映されてるだけある。この世界でも魔導師は不遇職に変わりないらしい。
「では冒険者のシステムを説明しますね。冒険者は基本クエストの依頼を受けその報酬で生活する職業です。そういえば冒険者と言ったら私の弟が冒険者になりたいとか言ってくるのよ、、、、、、、、、」
受付嬢の話し、通称(受けバナ)を聞くのは8回目だ、ネーミングセンスがゼロなのは分かるがこの名前が定着した。
初回はスキップすることができないので5分にも及ぶ話を延々と聞くことになる。
しかもその話の9割が雑談と言ったらスキップするのは仕方ないと思えてしまうだろう。スキップボタンを探してしまう。
「話の内容は大体知っている、
冒険者は黒、金、黒、銀、銅、青、赤、黄色、白のランクで分かれていてランクが上がることで受けることのできるクエストが増えていく。
あと、受けるクエストに書いてある0〜10の星の数は、星が一定の個数溜まるとランクが上がる。でいいよな。」
受付嬢は目を丸くさせて驚いた様子でこちらを見てる。やはりこのシステムもゲームと同じか、
「は、はいあっています!それではこちらをお渡しします。無くしても再発行はできますが10000zかかるのでお忘れなく」
彼女は俺の職業や名前が書かれた名刺サイズの板を渡してくる。
「クエストを受ける時はそのステータスカードがないと受けられないので持ってきてください。」
「了解した、ありがとう」
早速クエストを受けなければ、
クエスト依頼書がランクごとに分けられて大きな板に貼ってある。
「これだ!」
クエストを掛け持ちで受けることはできないので1番報酬が高いクエストを選択する。
——————————
★★★
オーク3体の討伐
報酬
10000z
マップ
プラント大森林
——————————
ランク白で星3つは珍しいな
10000zというと、白の次のランクである黄色ランクのクエストの報酬の平均程度だ。
俺は依頼書をさっきステータスカードを受け取った所と同じカウンターに持っていく。
「このクエストを受けたいのだが」
「クエストを失敗すると報酬の10分の1を支払って頂くことになってますが……失礼を承知で言いますがこのクエストを受けても失敗すると思います。」
彼女は心配そうな顔でこちらを見つめてくる。
「ああクエストの難易度が身の丈に合ってないのは分かってる」
「初クエストオークですか、オークは牙での攻撃力が高いと聞きます。気をつけてくださいよ〜」
プラント大森林というと俺が最初にスポーンした森でこの街から歩いて行ける距離ださっさと終わらせて金をかせごう!
「よし、ついたぞ」
チュートリアルと変わらない森にはすでに4人組のパーティーが3組ほど確認できる。初級冒険者にとってここは最高の狩場だったからな
やっぱり.……魔導師はいないか……
森に入ると早速モンスターがいた
ゴブリンだ、こいつには弱いはずだがチュートリアルで傷を負わされたからな少しトラウマだ。
背をこちらに向けているのでこちらには気づいていない。詠唱を始める
〓〓〓〓〓「ファイアボール」
チュートリアル同様炎がゴブリンを丸焦げにする。
『レベルが1上がった』
『炎魔法レベルが1上がった』
レベルが上がると同時に新しい魔法の詠唱が頭に浮かぶ。詠唱は日本語を話すと言うよりは知らない言語の意味も分からずカタカナで話してる感じがする。
ドロップは今回はないようだ。
狩猟対象のオークを探しているとそう遠くない距離で爆発音が聞こえてくる
爆発を出せる職業など魔導師系の職業しかいない。そしてこんな低レベルのモンスターしかいない森にくるのはよほどのもの好きでない限り初期職業の魔導師だろう。
俺は不遇職の魔導師を選んだやつの顔が見たくなった。
音がした方に行くと、俺と同じ紅のローブを着た魔法師がオークと戦っていた。
「みーずーよーわーれーのーちーかーらーとーなーりーいーきーおーいーよーくーとーべー」
「ウォーターショット」
「グオォォオ」
鋭い水のビームがオークの足を切断して行き、体重を支えきれず膝をつく。
「詠唱ってこんなこと言ってるのか」
詠唱が日本語に翻訳されるとかなり単調なことを長い時間かけて言っているのが分かる。
《魔法語自動翻訳》は詠唱が翻訳されて聞こえるということか?どう使えばいいのだろう
対人戦の相手が魔法師の時使う魔法が分かるくらいか、まあ魔法師系の職業は少ないし、対人戦もしたことがないが……予想はしてたがゴミスキルか、いや自動翻訳というと…もしかしたら……あれができるかもしれない。
そんなことを考えていると、ウォーターショットを放った魔導師が転んでしまい、オークが気力で最後の一撃を仕掛ける。
危ない!
俺はオークを対象に意味のわからない魔法語ではなく日本語で詠唱をする。
「切り刻め!」「ウォーターショット」
ウォーターショット5回分ほどの魔力が減って目の前に水の塊が現れる、
「これは……どうだ?」
「バシュッバシュッシュシュ」
それはさっきの魔法とは桁違いの勢いで水を飛ばし、俺の詠唱?通りにオークを切り刻んでいく。
オークは声を上げる間もないままそれは大量の肉片になった
「成功だ!」
俺は仮説を立てた。
「詠唱は後に言う魔法をプログラムしある程度威力や速度、使用魔力などを変えることができるんじゃないかな?」
今の場合俺の「切り刻め」と言う言葉で使用魔力やそれにオークを切り刻むほどの威力、水の量などのすべての要素をコントロールした。
つまり《魔法語自動翻訳》は詠唱をする時日本語で魔法のすべての要素を決めることができると言うことだ。
おそらく合っている。ベルセルクプレイヤーが魔導師が最弱と思っていた理由は詠唱をプログラムできなかったからだ。
まあ知ったところでそれは不可能なのだが……
しかしこの世界では違う!俺は翻訳スキルを持っている。
「チートスキルじゃないか。」
魔導師がユーヤ限定で最強の職業になった瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます