魔導師は転生する
「異世界転生?!?」
なんだそれは?このゲームでは初めて聞く言葉だ。
異世界転生というと自分いる世界から別の世界に行くことだが……
ベルセルクオンラインの世界とは別の世界があり、俺はそこに行く権利を得たということか?
隠し要素のひとつだろうか、
武器屋の店員に所持金が足りない状態で武器を買うコマンドを100回押すと、根負けして武器をタダでくれるのは笑った。
グレイモス火山の火口に飛び込むと、最高レアリティの魔剣が手に入るのもあったな。
『異世界転生をしますか?』
邪神の自爆形態のドス黒い血で書いたような不気味な文字が表示される。
『はい/いいえ』
もちろん「はい」だ
俺はボタンを押す。
『本当に転生しますか?』
『はい/いいえ』
随分慎重だなこんなのはラスボス前や性別選択の時にしか見ない、
以前ボタンを連打してたらいつの間にかキャラが女の子になって焦った。
「もちろん『はい』だ」
俺は再度ボタンを押す。
『転生を始めます』
いよいよだ!おそらく、2000万人超のベルセルクオンラインプレイヤーが行ったことのない世界が待っている。
元の世界とは違う魔物がいたり、そこでしか作れない装備があったりするのだろうか?
ベルセルクオンラインでも大陸間など大きな移動の時は出現モンスターは大きく異なるが……
異世界への期待を胸に転生を待っていると、白い光が自分を包んでいき、視界がだんだん白くなっていく。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「新しい冒険の始まりだ!」
「ん……?…ここはどこだ?」
『性別を選択してください』
白い空間がどこまでも続いている。
なぜか俺は久しぶりの初期設定場所にいる。
異世界転生をするとキャラを新しく作る必要があるのか?
『職業を選択してください』
▷「魔導師」
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
「 」
バグか?魔導師しか選べない。本来ならこの下に6つ職業が表示されているはずなのだが……
しかも選べるのが運の悪いことに魔導師だ。
最後にクリアしたのが魔導師だったからか?
仕方ない、動かせないカーソルを押す。
『服装を選択してください』
「ん?」
声や体形の設定が飛ばされている。
色々初期設定がおかしくなっている。
異世界はバグがおおいな。
最後は服装だ。オススメには右目に眼帯をつけ、床につくほどの黒いロングコートを着た白髪の少年がいる。
「厨二スタイルか、悪くないが周りからの目がな、、、」
前回は虹色に輝くローブを着ていたのだが、好奇の目で見られたな、何がおかしいのか……そういえば同じ服を着た人は誰もいなかった。
沢山の服に目移りしながら服を選ぶ
「これだ!」
俺はフードのついた真紅のローブに銀色のチェーンが何本も付いた一昔前のヤンキーのような黒いズボンを選択した。
「星型のサングラスは流石にダサすぎか」
サングラスを取ると空中に細かい青い光になって消えていく。
お気付きの方もいると思うが悠太のファッションセンスはゼロに近いのである。
いよいよ冒険が始まる。そう思ったがマップへの移動が始まらない、
『転生ボーナスでステータスを一つレベル1000時の基礎値になります。』
こんな特典があるのか、しかもレベル1000?!レベル1000というと表のボスの魔王と同レベルだ、
ベルセルクオンラインはレベルアップで全てのステータスが5上がり、自由に振ることのできるポイントを10獲得する。
つまり1つのステータスを5000にできるというとことか。
▷「体力」
「防御力」
「力」
「素早さ」
「魔力量」
「賢さ」
「精神力」
「器用さ」
「幸運」
これは8種類から選べるようだ、職業選択の時みたいになっていたら本気でキレてた、
魔導師は「魔力量」、「賢さ」、「精神力」に1.2倍の補正がかかるので、俺は3つの中から「魔力量」を選択する。
魔力攻撃力を上げるより攻撃回数を増やした方が最終的なダメージ量が増え
戦闘時多くの種類の魔法を使えるからだ。
『転生ボーナスにより
カードを1つ選んでください。カードの内容によりボーナスが発生します』
また転生ボーナスか、これも見たことない。さっきと同じよう、とんでもない能力がもらえるのかもしれない。
空中にカードが裏向きに綺麗に並ぶ。
10かける10だから100枚か、直感で右上のカードを選ぶ。
「これだ!」
『転生ボーナスによりスキル《魔法語自動翻訳》を獲得しました』
スキル名を見た限り理解できないが、魔術師の俺にとっては当たりなのか?
引かなかった99枚が裏返りカードの内容を確認できる。
「MP無限」「聖剣取得」「ドロップ率10倍」「ステータス値5倍」
「もしかして、、、外れ引いた?」
他のカードを見る限り《魔法語自動翻訳》とかいう謎スキルが一番弱いんじゃないか?さっきのバグといい運が悪いな。
『転生開始します』
色々トラブルがあったがいよいよ異世界だ!
先程と同様に体が白い光に包まれて
視界が真っ白になる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
目を開けると現実では信じられないないような太さの大木や柔らかな土が広がっている。
「ここは……森……か?」
体がいつもとは自由に操作できる気がする。大地を踏みしめる感触がしっかりと足に伝わる。
前の世界でも初期スポーン地点は森で、チュートリアルでゴブリンと戦わせられ勝利すると始まりの街であるドスタに強制的にワープさせられる。
とりあえずステータスの確認だ。転生ボーナスの恩恵を本当に受けているのか確かめなければ、未だに信じられない。
「ステータス」と念じると、思った通り表示される。
—————————
名前……ユータ
魔導師
LV.1
000000 G
体力 50
防御力 5
筋力 5
俊敏 5
魔力 6000
知能 6
精神力 6
器用 5
幸運 5
残りステータスポイント 0
スキル
〈魔法語自動翻訳〉LV1
〈炎魔法〉LV1
ファイアボール
〈水魔法〉LV1
ウォーターショット
〈土魔法〉LV1
ウォール
〈風魔法〉LV1
ウインドカッター
〈光魔法〉LV1
ヒール
〈闇魔法〉LV1
ダークアイ
〈無属性魔法〉LV1
ライト
装備
頭:無し
胴:真紅のローブ
腰:チェーン
足:黒いズボン
右手:木の杖
左手:無し
アクセサリー:無し
——————————————
「おお!」
本当魔力が5000になっていて、謎スキルも覚えている。
〈魔法語自動翻訳〉LV1ということは
他のスキル同様に成長するということか
スキルレベルは上がっていくごとに上位魔法が使えるようになり、LVが10に達すると、最上級魔法が使えるようになる。
これほど差があると通常のステータスが見劣りするな。
ガサッガサガサ!
ステータスを見てると後ろから何かが近づいてくる音が聞こえる。
振り向くとそこには、緑色の肌と長い耳を持つ醜悪な見た目の生き物、ゴブリンがいた。
身長は丁度腰辺りだろうか、RPGなどのゲームではザコ筆頭として必ず見かける、まさにゲーム界のレジェンドだ。
ゴブリンほど多用されているモンスターはなかなかいないのではないか。
ゴブリンに注意を向けるとステータスが表示される。
———————————
ゴブリン
LV.1
装備
頭:無し
胴:皮の鎧
腰:無し
足:無し
右手:石のナイフ
左手:無し
———————————
もとの世界のチュートリアルで戦うゴブリンと装備が同じだ、チュートリアルは同じっぽいな手抜きか?
まあ2000万人に1人が行ける世界に高いクオリティを求めても仕方ないか
こいつを狩らなきゃ物語は始まらないが恐れることはない。
こいつはゲーム内で最弱のモンスター、ゴブリンの中でレベルが最低の1なのだから死ぬことはない、
万が一死んだとしてもリスポーンは無限だ。何度でも蘇る!
俺は詠唱を始めようとするが相手が先制攻撃を仕掛けてきた。
「グギャァ」
石製のナイフ構えながらを俺の腹をめがけて突進してくる。ナイフの軌道はレベル1の俺でも目で追うことができる。
しかし反応が遅かったのか避けるには〈俊敏〉のポイントが足りない、ダメージは1しか入らないし腕で受けて見るか
「ザクッ」
石のナイフが腕に浅く刺さる。
「は?」
理解ができなくなり、痛みを一瞬感じなくなる。そう、俺はゲームで痛みを感じたのだ。
どこかのドMがVRゲーム機を改造して痛みを感じることに成功したことは聞いたことがあるが
俺はそんな趣味ないしこのゲームは正規品だ。痛みを感じるなんてあり得ない。
とりあえずこいつを倒さなければ、
かわいい緑色の生物が悪魔にも見えてくる。
ナイフを腕で受け、丁度足元にいるゴブリンの頭の顎に蹴りを食らわせる、
蹴った感触が妙にリアルだ
ゴブリンがふらついてる隙に俺は詠唱を始める
〓〓〓〓 「ファイアボール!」
赤炎の球が現れて、ふらついてるゴブリンに一直線に飛んでいく。
「グギャァ、グァ!!」
黒焦げになったゴブリンの死体が青い粒子となって消えていく、
結構グロデスクなので絶命した瞬間粒子になってほしいのだが……
もとの世界ではすぐ粒子になったのに
あと何故かダメージ表示が出なかったが殺したようだ。
「ドロップは……」
死体があった場所を見ると黒い石がある、拾って見ても何も表示されない。
始めて手に入れたアイテムは『ユータは○○を手に入れた』と表示されるはずなのに……
死体から出たのでドロップ品に間違いないはずなのだが
念のためとって置くか、
「ストレージ」と念じると黒い四角形の板が現れる、そこに石を入れると板は消えてしまった。
「この機能は使えるっぽいな」
この収納数無限の持ち運び可能な倉庫はとても便利で何でも入れることができる。
足元が光り魔方陣が描かれてく。
ワープが始まった。とりあえずゲームをやめよう
異世界転生は謎が多すぎる。痛みを感じるとか聞いてないし流石に痛みのリスクを負ってゲームをするのは割に合わないしな。
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