第2話 こ、これは!!
「あなたの魔法適正は、支援魔法です」
「……え?」
「支援魔法です」
「えーっと、それって、あの巷で脳筋魔法って呼ばれている、あの支援魔法ですか?」
「はい、皆さんもれなく素晴らしい筋肉美を兼ね備えている、その支援魔法です」
「……やり直しは「出来ません」……ですよね」
はぁ~、何という事でしょう。
この頭脳系スタイリッシュ次期領主を目指すこの僕が、ゴリゴリマッチョよろしくの脳筋魔法だなんて。
誰か嘘だと言ってください。
……まぁここであまり醜く粘るのもよろしくありませんね。
潔く次の段階へ進むとしましょう。
「では続いて魔力期待値の検査に進みます」
「……はい」
「こちらの石板に手を」
はぁ、もうどうにでもなれですね。
「こ、これは!!」
え? なんですか?
「なんと! 九つ星です! 流石はスカイフィード家の御子息でいらっしゃる。素晴らしい!!」
「「「おぉ!!」」」
お? まじですか。
この星というのは、一から一〇までの一〇段階で魔力量の期待値を検査するもので、将来的に鍛えればこれぐらいの魔力量になりますよという目安ですね。
数が多い程、魔力を鍛えた際にその増加量が多くなります。
これは比較的血筋の影響を受けやすいと言われるため、貴族であれば四つ以上は固いと言われていますね。因みに僕の父が六つ星で、母は五つ星です。
星一から三が一般人に多く、二以上から一般兵に志願できます。大体の貴族が四から六に収まり、七・八レベルになるともはや軽い伝説ですね。
因みにここ百年ほど、九つ星以上は出ていないそうですよ?
「私が生きている間に、九つ星のお方に相まみえることが出来るとは……」
検査官さんが感極まって目から涙をこぼしています。
ちなみにこの検査官さん、普段は司法を取り締まる公務員をしてくれています。結構偉い人です。
こんなにも感激してもらえると、なんだか照れますね。
これで支援魔法でなければ素直に喜べたんですが……。
チートの出しどころ、明らかに間違ってますよね?
「いやはや、喜ばしいことですな」
「これでスカイフィード国は安泰ですな」
「筋肉万歳!!」
皆さん好き勝手言ってくれています。
まぁ皆さん僕の大切な領民たちですからね、素直に喜んでおきましょうか。
でも最後の人、顔を覚えましたよ。
「修業、大変でしょうが頑張ってくださいね」
検査官さんの優しい笑顔が眩しいです。
「……はい」
席に戻る間、皆の視線が何だか痛いです。
大半が尊敬の眼差しなんですが、中には憐憫を込めて見守ってくれている方もいますね。
九つ星ですが、何といっても筋肉魔法ですからねぇ。
別に支援魔法だからといって差別されるわけじゃありません。
ただ、筋肉、というだけです。
僕の顔はかなり整っている方で、金髪碧眼のまさに王子様的相貌なんですよ。
それが、ただの筋肉じゃなくて九つ星の魔力によってハイパー筋肉へと進化することが決まってしまったんですから、そりゃ憐みの感情も浮かぶというものです。
席に戻ると、付き添いメイド兼護衛のサリーが僕を迎えてくれました。
両親は一応この国の国王と王妃という位置づけですから、こんなところにホイホイと出てくるわけにはいきません。
ですから僕の付き添いは彼女一人です。
「おめでとうございますアルト様。九つ星とは、流石でございます」
艶のある黒髪に吸い込まれそうな黒い瞳。その整った顔をピクリとも動かさず、サリーが僕を褒めてくれました。
顔が綺麗なだけに、その無表情で話されると余計にホラーなんですが、まぁこれが彼女の通常時です。
しかし彼女は感情が乏しいわけではありません。
彼女は黒狼族という一族で、頭に三角の耳と、お尻にふさふさの尻尾が付いています。
その尻尾がブンブン触れているので、これはとっても喜んでくれていますね。
「ありがとう。でも支援魔法だけどね」
「良いではありませんか。私がしっかりと鍛えて差し上げますので、なんの問題もありません」
そうなんです。黒狼族だけでなく獣人一般に言えることですが、彼らは皆身体能力が高いんですよね。
その中でも彼女は特に優秀だそうで。
護衛も暗殺も戦争でも大活躍の万能メイドなんです。なんでメイドしてるんでしょうね。
因みに年齢は十六歳です。
「う、うん。ほどほどによろしくね。僕頭脳系だから」
「では体も頭も、どちらも鍛えれば問題ありませんね」
「……そだね」
彼女、とても優秀なんですが、どうも自分を基準に考えてしまう節があるみたいで。
彼女の少ない欠点の一つですね。
はぁ、これからどんな生活が待ち受けているんでしょうか。少し憂鬱です。
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