支援(脳筋)魔法で領地経営~領主がスローライフなんて送れるはずがありません~
@arukumoaizo
第1話 説明回という名のプロローグ
皆さん初めまして、僕はアルト=スカイフィードといいます。
僕の父さんはこのヤマティア帝国の地方貴族で、僕はその家の長男です。
父さんは一応子爵の爵位を頂いてはいますが、ほとんど名前だけですね。
このヤマティア帝国は約五百年ほど前に初代皇帝が建国し、三百年ほどは順調な発展を遂げていました。
しかし三十六代目の皇帝が愚帝だったらしく、そのせいで帝国の力が弱まってしまい、逆に貴族たちの力が強まりました。
そして今では帝国という仕組みは形骸化していて、それぞれの貴族が好き勝手にやっている状態です。
帝国に税を納めないのはもちろんのこと、それぞれの貴族が国を名乗り、他の貴族領に軍を派遣しては互いに侵略を繰り返すような、まさに日本で言う戦国時代の様な状態です。
僕の領地も、スカイフィード国なんて呼ばれたりしていますね。
あ、申し遅れましたが、僕は実は転生者なんです。
生前は日本という国の外科医をしていました。数年間だけですけどね。
二十代で交通事故で亡くなった僕は、死後神様に会うなどのイベントは特になく、気づけばアルト=スカイフィードとして生を受けていました。
ちなみに記憶をはっきりと取り戻したのは二年前、三歳の誕生日を迎えた直後です。色々と思う所もありましたが、今では新たな生を全うしたいと心新たにしています。
今僕が住んでいる世界には、魔法という摩訶不思議な力が存在します。しかし実は僕、ここは地球なんじゃないかなと睨んでいるんです。
というのも、僕の家に保管されていた地図を見てみると、このヤマティア帝国の国の形がどうも日本にそっくりなんですよね。それにたまに見つかる古代遺跡からは、かつて僕が住んでいた日本の名残を感じさせるものが見つかったりするんです。
ただ、お月さまは二つあるし、魔獣は出るし、魔法も存在しているしで、ファンタジー要素もたっぷり含まれているんですよねぇ。
昔の文献とかがあればすぐに判別付きそうなものなんですが、古代遺跡からは何故か文献は一切見つからないし、帝国以前の文献も度重なる戦火で全て燃え尽きてしまったようで。
海を越えようにも、魔獣がいるため遠くに船を出すことが出来ませんしね。
地球に似たパラレルワールドなのか、はたまた僕が住んでいた地球のはるか先の未来なのか……。
まぁ今これを考えても仕方がありませんね。
とにかく今はこの世界で生きていくしかないわけですから。
さて、前置きが長くなりました。
実は今日、僕にとってとても大切な試験が行われるんです。
この世界では、子供は五歳になると適正試験というものが行われます。
これによって、自分がどんな魔法が使えるのかが分かるようになるんです。
この世界には三種類の魔法が存在していると言われています。
攻撃魔法、回復魔法、支援魔法の三つです。
三つとも名前の通りの魔法ですね。
攻撃魔法は火、水、土、風の基本属性や雷、氷などの上級属性といった色々な属性の魔法を放てる力を有しています。
人によって得意属性や苦手属性などがあるようですが、練習をすれば基本属性は誰でも習得出来るそうです。
次に回復魔法ですね。
これもその名の通り、怪我や病気を治してしまう魔法です。医者いらずですね。
あまり長く放置された怪我などは回復出来ないそうですが、それでもすごいことですよね。
最後に支援魔法。世間では脳筋魔法ともいわれています。
というのも、上二つに比べて効果がかなり地味なんだそうです。
支援魔法の効果は、力を強くしたり、早く動けたりと、所謂バフ系の魔法に位置しています。しかし他人にかけると効果時間が極端に短くなるため、基本的に自分に対してしか発動しません。
しかも他の魔法と比較し、燃費がとても悪いそうです。
そのためこの魔法に当たってしまった人は、みな体を鍛え、瞬間的に支援魔法で肉体を強化して戦う、といった戦法をとるんだそうです。まさに脳筋魔法ですね。
ちなみに攻撃・回復・支援魔法の人口比率は、二〇:二:一くらいの割合です。
回復魔法に当たればレアな感じがするのに、のうき……支援魔法に当たってしまうと残念な感じがするのは不思議ですね。
頭脳系の僕としては、是非とも支援魔法以外を所望したいところです。
さてさて、そろそろ僕の名前が呼ばれる頃ですね。
「アルト=スカイフィード様、前へお越しください」
お、呼ばれましたね。
これでも僕、スカイフィード家の長男なので、次期国王なんて呼ばれたりして結構期待されています。
かなりの人が集まっていますが、みんな僕に大注目ですね。
さてさて、どの魔法になるんでしょうか。ドキドキです。
この石板に手を乗せればいいんですよね。
前の人たちがやっていたをバッチリ眺めていたので、問題なく余裕をもってスマートに行えます。
フフフ、みな僕に羨望の眼差しを向けていますね。
なんたって僕は、次期国王なんですから。
ん? 何やら試験官さんが難しい顔をしていますね。
もしや、転生者であるがために、なにかチート的な能力でも備わっていたんでしょうか。
もしそうなら、今まで以上に色々と注目されて大変なことになってしまいます。
まぁそれも転生者としての宿命なんでしょう。
仕方が無いですね、甘んじて受け止めようじゃありませんか。
「アルト様」
「はい」
「あなたの適正は、のうき……支援魔法です」
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