親衛隊隊長による学園クズ生活

第1話

さて、状況を整理しよう。


俺の名前は椎名凛。

日高高校3年元生徒会長で、いいとこの大学に進学が決まっている。

今日は休日で、本屋に本を買いに行った帰りに事故に会いブラックアウト。


気がついたら目の前がカオスだった。


さて、改めて自己紹介しよう。


僕の名前は椎名凛。

私立藤咲学園高等部2年、会長の親衛隊隊長であり親衛隊総隊長だ。

現在は会長の周りをうろつく雌豚を制裁中である。


「や、やだっ!」


「何が嫌なの。暗黙の掟を破って近づこうとしたくせに」


「ち、ちがっ...!」


俺はこの展開を知っている。つーか、確実にこの世界を知っている。


これは、事故に遭う前にやっていたBLゲームの中だと断言しよう。

そして、このあとの展開は最悪なものだと思う。


「やだぁっ...!」


制裁。

小柄なもやしっ子の身ぐるみをはがす不良集団。その後に立つ僕ともう1人。


「じゃあ、後はよろしく」


もう1人はそう言って僕と連れ立って教室を出る。


「さあ、椎名様。これでとりあえずはいいでしょう」


「うん、そうだね」


学園系BLゲーム、アルテラ。

その中の悪役キャラクターである椎名凛は、俺と同じ名前だったとよく記憶している。

会長の親衛隊隊長で、会長ルートでは必ず立ちはだかる悪役キャラクターだ。

腹の中が読めない性格で、選択肢を間違えると主人公はどんどん追い込まれていく。

他ルートでも間接的に接触してくる、RPGで言うラスボス位置に値するキャラクターである。最終的には破滅ルートしか用意されていない。


「僕、まだやることがあるから先いくね」


「はい」


副隊長の東雲明は、俺の言葉に返事をして俺を見送る。

そそくさと離れた俺はトイレを見つけ、駆け込んだ。


鏡に映るのは美少年の顔。

服の上から身体をまさぐってみると程よく筋肉がついている。"僕"はどうやら柔道や合気道といったものを習っていたらしい。

身長は平均より少し小さめ。

そしてアルテラ登場キャラクターの椎名凛と一致した。


転生した?

最近流行りの転生モノ?

え? なんで?


楽しみにしてたBL本を買いに出かけた帰りに俺死んだんだよね。え? 死んだよね??

すごい衝撃受けたのは覚えてるけど、そのまま息引き取っちゃった感じだよね?

これ夢とかじゃないよね?


頬を指でつねれば痛い。


そうですか。悪役転生の上破滅ルート待ったナシですか。

じゃあしょうがねえ、思いっきり悪役になろうと思います!!

破滅ルートしかないなら、1番最推しの会長×主人公にしか持っていけないように仕向けようじゃあありませんか!!


鏡の中の自分の顔は多分、だいぶ悪い表情だったと思う。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

親衛隊隊長による学園クズ生活 @gravity_9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ