第05話;脳内変換王子はとび蹴りを食らう(後編)
クレセント皇女は親善大使として宰相と共にボルティモアの港に降り立った
ボルティモアの外務大臣と、首相に出迎えられ君主の待つ宮殿へ向かった
宮殿の謁見の間、左右に大臣や側近が並ぶ中、中央に君主響喜(ひびき)が立っていた
少し様子がおかしいのに気がついてはいたが挨拶をしに君主の前に出た
「お初にお目にかかります。カーディフ王国第一皇女クレセントと申します、今回はよろしくお願いいたします。」
ざわっ
「?君主様?」
響喜(ひびき)が前に出てクレセント皇女の真ん前に立っていた
予期せぬ行動をした響喜(ひびき)に周りが戸惑っていた
「クレセント皇女、どうぞゆっくりしていってください。ずっと居てくださっても構いませんよ?」
爽やか美中年の微笑みにクレセント皇女はドキッとした・・・
(ずっとって・・・どうされたのでしょう?なにか部屋の入ったとき無愛想でしたのに,
私の顔を見た途端、態度急変!何なのでしょう?)
手を出して握手を求めてきた響喜(ひびき)
公式謁見の場で握手などすることはありえない
しかし無視するわけにも行かず、恐る恐る手を出した
最初片手で握手したのだが響喜(ひびき)はしっかりと片方の手も重ねて来て両手でしっかりと右手を掴まれた
クレセント皇女はドキドキが止まらなくなった。
「このまま視察にまわりましょう」
ニコッとクレセント皇女の手を自分の腕に回すと謁見の間を出ていく
慌てて周りの人たちも慌てて行動を開始した、
綺麗な黒塗りの馬車に二人と側近2人が乗り込み
宰相以下護衛たちは違う馬車に乗り込んだ
周りは予定と違う行動をする響喜(ひびき)に戸惑いながら付いて行くのであった
それからずっと腕を組みながら視察を続け夜には晩餐会が始まった
もちろん響喜(ひびき)とクレセント皇女は隣り合わせ、それも心なしか近い気がする
挨拶が終わり歓談,会食の時間、はっと気が付くと
響喜(ひびき)の手がクレセント皇女の手の上に・・・
声をあげるわけにも行かず
(どうしよう・・・手を掴まれてては食べれられない、どういうおつもりかしら、いやがれせ?)
「クレセント皇女様?これ美味しいですよ、アーン」
「え?」
顔が真っ赤になっていくのが解る
どうすればいいのでしょう・・・
脳筋のクレセント皇女では、どう反論すればいいのか頭がドキドキで回らなくなっていた
そしてされるがまま状態に
軽く口を開けると響喜(ひびき)が果物をクレセントの口の中に運んだ
周りもどうしたらよいのか解らなくなっていた
響喜(ひびき)がクレセント皇女をとても気に入ったのが端から見ても解るが行動がおかしい
「おいしいですか?」
「あっはい、」
そういうことは恋人同士になって二人きりでするものだと
誰も突っ込まなかった
迎賓館のクレセント皇女の部屋には毎日花束とチョコだったりアクセサリーだったり、宝剣まで置かれていた
国宝級のプレゼントはさすがに返したが
「これって、求婚されてるんだよね」
「明らかにそうですね」
答えたのは一緒に親善訪問に付いて来た幼馴染の様なメイドのエリザベートだ
「どうされるのですか?何かもう周りを固められてる気がします、逃げられない感じが」
「エリー!そうなのよもう自分の物みたいにふるまわれていて、嫌じゃないしいやではないけど年も父上と同じだし恋愛感情では無いと思うし、どうしよう」
「経験ありませんものね、殿下は無条件の愛情に」
「私をそういう対象に見る人なんて居なかった、武闘家扱いだし尊敬と敬愛はされてたけど思うけど恋愛対象には見られなかった。」
「王宮の物たちや貴族の方々はそれでも権力的な意味での求婚は来てたではありませんが、コテンパンにのしてたのは殿下ですよ」
「この国にきて1週間、1か月居る予定だけどもう帰りたい、何か貞操の危機も最近感じるのよ・・・」
「かなり熱い眼差しで見つめていらっしゃいますものね」
「あの目、あの整った顔で熱く見つめられたらドキドキが止まらないわよ、心臓壊れそう」
最近は腰に手を回され密着度が更に増し、体に触れてくる事が多くなった
「最近言葉もストレートになってきて」
『好きですよ、あなたは私の運命のひとだ』
「とか言われるの、もうゾワゾワドキドキよ」
(うーんもうまんざらではなくなっているのでは?)
と思うエリザベートだった
クレセント皇女がこの国にきて2週間たったころ
迎賓館が何かおかしかった
「何でしょうね警備が増えて物々しくなりましたね」
部屋の入り口のドアを少し開けて様子を伺っているエリザベートが言った
「響喜(ひびき)様が迎賓館にお泊りになるからだと思いますが」
「それにしても、なぜこちらにお泊りになるのかしら?」
「夜這いする為ではないと思いますよ」
「ぶっ・・・そんなこと分かってますわよ」
紅茶を少し吹いて、口を拭きながらあせった様子でクレセント皇女は言った
「今日は私もこの部屋に泊まります。」
「エリー・・・騎士団も一目置く武闘家の私に何かあるとでも?」
「クレセント皇女様、あなたは思ったよりか弱いことを自覚なさらないと早死にしますよ、人に頼っても良いのです、ここには張り合う人たちは居ないのですから」
「・・・・エリー・・・・ありがとう」
夜中ふっと目覚めたエリザベート、ソファから起き上がり
月明かりにうっすらと見える部屋の調度品を眺めた
隣の寝室からクレセント皇女も夜着にカーディガンを羽織った姿で出てきた
「何か妙ですね」
エリザベートは、はっとしてクレセント皇女をつきとばした
エリザベートに短剣が突き刺さる
「うっ!殿下お逃げください!」
痛みに耐えながらクレセント皇女を見ると水魔法で拘束されている姿が見えた
「うっ・・・エリー」
クレセント皇女の魔法要素は炎系で水魔法がもっとも苦手だ、遠征に行く時はそれを補う補助がいつもついていた今回は宰相がそうなのだが部屋は別なので助けてもらえない、
エリザベートも炎系なので水魔法の拘束は解けないのだ、しかしあきらめない
エリザベートは爆発魔法でクレセント皇女の横にいる影ととドアに向かって魔法を放った
「クレセント様すみません、お助けできなくて・・・・」
すさまじい音がして扉が吹き飛んだ
エリザベートは気を失った
「クレセント!」
響喜(ひびき)がすぐ部屋に駆け込んでクレセント皇女の横に居た刺客たちを切り捨てた
拘束を解かれ響喜(ひびき)に抱きすくめられている皇女
「いやぁ~エリー!エリー!」
こんなに取り乱したのは初めてのクレセント皇女だった
明かりがついた部屋に倒れて血だまりの中にいるエリザベートを見て錯乱してしまっていた。
小さいときからずっとそばに居てくれたエリザベート、家族同様だった
騎士の一人がエリザベートを抱えて部屋を出て行く
「エリー!エリー!」
「落ち着いて、大丈夫だ命に別状は無い、あの騎士は回復魔法が使えるすぐ治るから」
「ううっ」
いままで戦闘時でもこんな恐怖は味わったことがなかった、自分がどんなに皆に守られた居たのか痛感して情けなくて涙が止まらない皇女だった
響喜はクレセント皇女を抱き抱えると自身の泊まってる部屋に連れてきた
嗚咽が止まらないクレセント皇女の頭を撫で頬を撫でる
そして唇を重ねた
官能的な口ずけにクレセント皇女は体の力が抜けていく
「愛してる、私がずっと守ってあげるから大丈夫だよ」
夜着をゆっくりはだけていき、拘束された時に着いた跡にくちびるを落として、そのまま皇女をベットの上に押し倒した
チュンチュン
鳥の鳴き声で目を覚ましたクレセント皇女
「うっ体が痛い、なんか下半身が熱っぽい?」
ゆっくりと記憶の尾を拾っていき熱っぽい体がさらに熱くなった
「ま・さ・か・・・」
視線に気付き、ゆっくりと横を見ると
満面の笑顔の響喜(ひびき)がいた
「おはよう、今日はこのまま休もうエリーも回復して別の部屋で休んでいるよ」
「響喜(ひびき)様?これは・・えーと・・・なんて言うか・・・」
「結婚式は半年後でいいかな?お父上にも挨拶に行かないとね、今日はゆっくりと君と居たい」
「ちょっまって・・・うう」
直ぐに唇と体をからめ捕られ体を触られる
コンコン
どれ位響喜(ひびき)の腕の中に居ただろうか?ぐったりと動けなくなったクレセント皇女
寝室を叩くノックの音が遠くに感じた
「響喜(ひびき)様、カーディフ王国の宰相閣下が大変お怒りでございます。順序を弁えない行為に攻撃される勢いですぞ」
扉の向こうから響喜(ひびき)の側近が呆れたような声で話しかけた
「クレセント皇女が行方不明になったと騒いでいましたら、メイドが響喜(ひびき)様とベットに居たと・・・わざと見せましたね」
「第3者の目は大事だよ既成事実には・・・」
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「と言うわけで響喜(ひびき)様にからめ捕られましたの私・・・」
うふっと今まで見たことも無い可愛らしい嬉しそうにクレセント皇女は言った
ドーカーン
「何の音ですの?」
フレイア嬢がびっくりして立ち上がった
「多分、お父様と響喜(ひびき)様ですわ・・・
知ってらした?お父様ちょくちょく響喜(ひびき)様と移転魔法を使ってお互いの国を行き来して訓練なさってたんですって
もうお父様の相手ができる強さの人は響喜(ひびき)様だけだそうですわ、
親友なんて聞いてませんでしたわよね」
「はっははは!父上切れてるだろうな、クーのこと大好きだからな!親善大使行かせたくなかったんだよ」
「私だけ予定が無かったものね、ディラン兄上が行くわけないし」
「一緒に来たのか?」
「そうなんですの、カンジナバル公国にも訪問するのに一緒に付いて来たのよあの人、心配だーって、ま襲われてるしね」
「襲撃者は解りましたの?」
「ソルビット帝国の間者だそうですわ、外に居た見張りを捕まえて白状させましたの、その時の響喜(ひびき)様の容赦のない拷問、愛されるって感じましたわ」
「見てたのか?拷問、そこに愛を感じる?おかしいと思うが・・・」
「それで・・・」
「なんだ?フレイア」
「開発中の新しい兵器の試し打ちをソルビット帝国に向けると王が・・・」
「・・・それって町が吹き飛ぶレベルだって言う?」
「そうですわブライアン、大量虐殺になりますわ」
「「「やりかねないな、あの父なら」」」
「カンジナバル公国には長居しなかったのだな、1か月の予定じゃなかったか?」
「ええ途中で具合が悪くなって、見てもらったら妊娠ではないかと、まだ早いので正確にはもう少し時間が経たないと解らないみたいだけど」
「・・・・えっと、おめでとう」
「ありがとう~エリーもね一緒に行ってくれるって、向こうの騎士と仲良くなったみたいで、幸せよ、幸せなのは貴方たちだけじゃなくてよ、うふっ」
コンコン
「どうぞ」
ブライアンが答えると
入ってきたのは頬が赤くなっている響喜(ひびき)だった
「失礼、クレセントを迎えに来ました。」
「あら、お父様にやられたのね」
「1発だけだと言ったのに魔法放ってきたから、まじの戦闘になってしまったよ」
「フレア様、お願いまたお父様たちの壊した城壁とか・・・」
「分かりましたよ、直しておきますよ、クレセント、幸せにね」
「フレアお姉さまもお幸せに、」
クレセントを抱きかかえて響喜(ひびき)は部屋を出て行った
2人は手を握って妹の幸せそうな顔を思い浮かべていた
その後新型兵器は使用された、ただしソルビット帝国の人の居ない魔物の森に
脅かしには十分だったらしくここ数十年続いたカーディフ王国とソルビット帝国戦争は終わった。
クレセント皇女の結婚と
ブライアン王子の正式な王太子就任と
フレイアとの婚約が大大的に発表されてしばらくして
ディラン元王子が手足を失う大けがをしたと王宮に知らせが来た。
「ブルック子爵からだ、
修道院の裏の森で大量の魔物が出た
修道院兵だけでは防ぎきれず、
ディランは自ら志願して討伐に向かったそうだ
そこで兵をかばって負傷、手足を切断したそうだ」
王がブルック子爵からの報告書を読んだ、
「近隣の冒険者と兵を向かわせて町には被害は無かったそうだが、ディランがそのようなことをするとは」
フレイアは少し考えた
「ディラン様とお母様のクルミーナ様の邸宅はかなり離れておりますよね」
「確かに馬でも丸1日はかかるぞ」
「王陛下少しディラン様にお会いして来てもよろしいでしょうか?怪我をなされた方々の治療も」
「・・・・何か思うことが有るのか?許そう、出来たらディランの手足も・・・」
「かしこまりました。考えておきます」
フレイアはディランの元に向かった
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