Le Ciel Bleu 〜わたしの青い空

あーこ

新しい馬

　去年の秋から、もう１頭、馬を持った。

　はい？　お金は大丈夫なの？

　……大丈夫じゃない。

　老後の預金を取り崩し、亡くなった母のへそくりを流用し、なんとか、金を作り。さらに、古い友人に共同馬主になってもらい。

　随分と熱心なんですねぇ。

　……熱心でもない。

　夫にも叱られ、周りにも呆れられ、自分自身も、ああ、なんでこんなことに？　と、頭を抱えて、半年過ぎた。

　こんな浪費をするくらいなら、シェルにもっと贅沢をさせて、いいトレーニングを積ませてあげて、競技で上を目指して……と思うのだ。

　どうしてこんな馬鹿げたことになってしまったんだろう？

　仕方がなかったのだ。

　これも、全ては運命のなせる業（わざ）。

　潮の流れの変わり目がきたのだ。

　ローレルアウェイク。

　通称・あーこ。

　金ピカのシェルに比べると、パッとしない、印象の薄いこの馬が、私とシェルとの幸せな毎日に、割り込んできて、影を落とした。

　やはり、私の乗馬ライフを変えるのは、いつも挫折なのだ。

　あーこが、私に幸せを運んでくるのか、それとも、不幸を運んでくるのか。

　今のところ、何もわからない。

　ただ、言えるのは……。

　私のわがままでこの馬を引き取り、友人も巻き込み、夫にも迷惑をかけている。

　だから、何としても、いい結果を招かなくてはならない。

　私も、あーこも……そして、シェルも不幸になってはいけない。

　ずっしりのしかかる重圧に、馬を持った喜びはない。

　ただ、ひたすら、絶対に投げ出さないぞ、やり遂げるぞ！　という気合が空回りしている。