馬はお金がかかるものだ!
乗馬をやっている……と言ったら、それは随分と金持ちなのね、と言われてしまうことが多い。
自分の馬を持っている、なんて言えば、それはすごい金持ちなのね、と言われてしまう。
確かに馬にはお金がかかる。
それは、当たり前のことだ。生き物だもの。
しかしなぁ……。
交通費節約の自転車でクラブに通い、馬房掃除に明け暮れて、常に汚い格好で汗を流している私の、どこが有閑マダムなのだ? どこがお金持ちの奥様なのだ? と言いたい。
「私だって、お金があったらなぁ、自分の馬を持って、競技にも出たいわよ。本当に、お金がある人はいいわよねー! お金があったら、私だって……」
あなたのような乗馬ライフを満喫できるのよ、と続くのだ。
もしもし、ちょいと。
いいバックを持って、いい服を着て、乗馬の後は仲間とランチ……で、はい、さようなら……な人の方が、よっぽど贅沢な生活だと思うんですが?
そして……申し訳ないけれど、こういう人たちは、よっぽどお金持ちでない限り、自分の馬は持てないし、競技にも行けないのだ。
普通の人は、いいバックもいい服も友人とのランチも諦めなければ、馬は持てない。
いや、それでも普通は持てない。
私の場合は、運よく自転車で通える範囲に、とてもお手軽な金額で馬を置いてくれるクラブがあったから持てているだけだ。
そして、私には子供が出来なかったから……。
馬に養育費が出るわけだ。
私の馬仲間は、大半がそれほどお金持ちでもなく、普通を切りもりして、どうにか馬を続けている人ばかりだ。
それが苦にならず続けられる情熱がある人ばかりだ。
乗馬にはお金がかかる。
そして、競技に出ようと思えば、さらに、お金がかかる。
競技のエントリー代、馬房をお借りする費用、馬を運ぶ費用、その他、諸々……。
え? 馬に乗って行けばいいんじゃないの? と思われるかも知れない。
が、考えてもみよう。
マラソンランナーが競技に行くのに、そこまで自分の足で走って行くだろうか?
馬も馬運車に積んで運んで行くのだ。
私が、競技に取り組みつつも、結果にこだわらない、別の方向を向いているのには、金がかかりすぎる! という問題もある。
結果にこだわるなら、ちゃんとしたトレーニングを積んでくれるプロに馬を預け、競技に向けて調整してもらい、その人の指示に従って、レッスンを積んで行く。
それだけじゃあ足りないだろうから、別の馬にも乗り、自分の技量も磨いていかなければならない。
ちょいと待て。
馬もいい馬に変えるべきだ。
海外から乗馬用に生産された、いい馬を輸入して、手に入れるべきだ。
レベルアップするたびに、もっといい馬に変えるべきだ。
などと、上を向けば上を向くほど、とにかく、金がかかるスポーツなのだ。
すごい馬を持っている人に、歯ぎしりして「私だって金さえあれば」などと言っていても、始まらない。
すごいトレーナーに指導を受けている人に「私だって金さえあれば」と妬んでも、どうしようもないのだ。
それに……。
私は馬と仲良くなりたくて、乗馬を始めた。
上記の乗馬ライフに、馬と仲良くまったりできるゆとりはあるのだろうか?
自分にふさわしい乗馬ライフを送るのが、一番楽しいに決まっている。
私にお金があったなら、良い競技馬を手に入れるよりも、やはり、元競走馬を引き取って、その馬を幸せにしたいと願うだろう。
そのほうが私に似合っている。
無理をして、競技で上を目指す必要はない。
お金さえあれば「私とシェル」になれると勘違いしている人たちは、お金があったなら、多分、もっといいバックを持ち、もっといい服を着て、もっといいところで、仲間とランチを楽しむだろう。
それが、その人たちに似合っている乗馬ライフだから。
無理して、ボロにまみれる必要はない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます