ハンドルもブレーキもない?
何事もうまくいかないこともある。
3日前まで絶好調だったのに、2日前から急に動きが悪くなり、やる気ないのかなぁ? などと、焦って競技に向かったら……。
馬運車から降りたら足が腫れていて、棄権……なんてこともあった。
シェルだからなんとかなるかな? と、練習不足のまま参加したら、駈歩発進で後退して、はい、さようなら……に危うくなるところだったり。
土砂降りの雨だったり、アブの攻撃にあったり……。
時間の変更に気がつかず、危うく遅れそうになったり……。
シェルが脱走して、近くの駐車場横で草を食べていたり……。
とにかく、競技会もいろいろな事が起きるもの。
最大のアクシデントは、競技寸前に、
手綱は、いわば、ハンドルとブレーキの役割を担うもの。
それが切れるってことは、ハンドルとブレーキを失うってこと。
事細かく言えば、手綱だけで操作しているわけではないので、そんなのなくても乗れちまうぜ! というツワモノもいる……が、この際、それは抜き。
そもそも、その時は、いろいろアクシンデントが重なっていた。
まず、競技の2週間ほど前、私はシェル以外の馬から落ちて、お尻を強くぶつけた。
骨には異常なしなのだが、それがかなりの痛みで、しばらく馬に乗れないどころか、歩いたり走ったりすることも厳しかった。
実は、その時からもうすでに3年の月日が流れているけれど、今だに私のお尻には、その時、ぶつけた場所がシコリとなって残っている。
左右不均衡で、不恰好なお尻になってしまったものだ。
競技も諦めようか、と思ったけれど、すでに申し込んでいるから、インストラクターに下乗りをしてもらい、競技の時だけ乗って出ようと決めた。
初めての時以外、全て自分でなんとかしてきたので、ここで2週間、シェルを預けて、下乗りまで頼んで、それでどんなものか、ちょっと試すいい機会だと思った。
びっちり下乗りしてもらい、イタタ……で乗り替わり、本馬場に向かう。
インストラクターからは「いい状態になっていますから、手綱を伸ばさないように」と言われ、馬場に入ろうとしたその時。
ぶち。
なんと、手綱の左側が切れてしまった。
慌てて前を歩くインストラクターを呼ぶも、なかなか気がついてもらえない。
5分で入場しなければならないので、もう無理。棄権しようと思った。
インストラクターもかなり慌ててしまい、審判に指示を仰ぐ、など、何も思いつかず、ただ、言ったことは。
「とにかく、走って厩舎まで戻って頭絡を変えてきてください!」
走って、っておい!
ハンドルもブレーキもないんですか?
で、走り出したシェル。が、ぶらぶらの手綱が、首をビシバシ叩いているし。
おーいおーい、シェルや、どこへいくのー!
やっとこれじゃ無理だとわかったインストラクター。
追いかけてきて、シェルを捕まえた。
私を下馬させて、馬を引いて走って厩舎まで戻り、頭絡を変えて、また走って戻ってきた。
私ときたら、お尻が痛くて走れず……インストラクターとシェルが走って戻ってくるのを、あたた、あたた、と歩きながら待つしかない。
そして、すぐに乗って、そのまま走って馬場まで向かい、審判が時間切のベルを鳴らす寸前、入場できた……が。
せっかく、いい状態になっていたはずのシェルは、口をずっと片方だけ引っ張られていたおかげで、ずっと横向いたままだった。
しかし、それでもちゃんと平常心でこなしてくれたシェル。
私とシェルの絆は、ますます深まったような?
いい思い出です。
もう二度と経験したくはないけれど。
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