美しい馬

 オーナーである私が言うのもおこがましいが……。


 シェルは美しい馬だ。


 色は栗毛。

 鹿毛についで多い毛の色だから、決して、珍しい色ではない。簡単に言ってしまえば、茶色いのである。

 が、その茶色がまるで黄金のように綺麗なのだ。

 輝くばかりの栗毛……最近の名馬では、オルフェーブルがその毛色に当たる。


 右前肢が茶色いだけで、他の3本はソックスを履いたように白い。

 顔にも額から鼻先にかけて白い毛が生えていて、若干、ゆがんで二重になっているところ、愛嬌である。

 つぶらな瞳とやはり栗色のまつ毛、見つめられると、コロリとやられてしまう。それを武器に、多くの人から人参をゲットしている。


 サラブレッドの中でも大きなほうで、514〜516キロで競馬を走っていた。乗馬となった今、一度測ったら576キロだった。

 ちなみに、あのディープインパクトは、438〜452キロで走っていた。


 立派な体で派手な栗毛。

 サラブレッドらしい品ある姿……となれば、オッ! となる。

 ただ、立っているだけでも、何かオーラを感じる。


 これだけ見目好い馬だから、素晴らしい乗り手が持ったとしたら、馬術大会でも活躍できる評判の馬になったかも知れない。

 でも、大した技量もない私の馬になることが、そして、ほどほどに乗られて可愛がられる馬になることが、シェルの運命だったのかもしれない。


 そもそも……。


 素質を感じて自馬にした以前のオーナーが、張り切りすぎて故障させなければ、私の馬にはならなかった。

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