キラキラ ドロドロ ズボズボ ダラダラ ほわーん
@kms_kms
第1話 ■上京■
小雨降る会社帰り、今年30歳になる私は東京のビル街から少しだけ見える
薄ら明かりの空をみて、少しだけ落ち着いた。
今自分がいる場所は、人生で経験してみたかったOLになっている。
ビル街を少し浮腫んだ足で、仕事の事を頭の片隅で、どう進めようか考えながら
歩く。これが充実?
本当の私は?
こんな事が頭に浮かぶ度に、
薄暗い私の脳の中にもう一人の私が姿を現す。
まだ10年も経っていない前の自分と、今の私が同一人物なのだろうか。
同じ人間なのだろう。
ちゃんと記憶があるし。
でも前の私は、たまに現れる、この自分なのだろう。
■上京■
北関東の片田舎の実家に帰宅し、今日友達と行った
不動産の書類を親に渡す。
「ここに住みたいから2月15日までに30万用意お願いね」
母は困ったようにしながら、分かったと言ってくれた。
裕福な家庭ではないが、頑張ってくれたんだろう。
その想いや苦労は、22歳の自分には分かっていなかった。
それが当たりまえだったのだ。
やった!!!
田舎で育った私は東京というギラギラキラキラしたイメージの場所に
夢を膨らませていた。
東京の求人を大学でみつけ、就職を口実に上京することにしたのだ。
通えと言われたら通える場所だったが、どうしても東京に住みたかった。
『東京に住んだら芸能人にあえるかな。どんなお洒落な場所に行こう。』
誰もが思春期に一度は思いそうな青臭い妄想で、上京の日を迎えた。
家具とかは全部現地で準備しようと思っていたので、
持っていくものは段ボール2つだった。
家族に車で送ってもらった。
来る途中、首都高の川から向こう側に見える東京の景色が
夕日でとてもきれいなオレンジだった。
荷物を降ろし終え。
「送ってくれて、ありがとう」
「がんばってね」
母は涙ぐんでいた。
ズキ。
なんだか、申し訳ないなとおもった。
私は良い子でいられたのだおうか。
一緒に住んでいる時感謝の言葉とか、手伝いを何もしなかったな。。。
きっと、両親が思うような子供には育たなかったなと、後悔と申し訳なさで、
心が水に沈んだみたいに、重くて濡れた。
車を見送った後、これから住むアパートを開ける。
シーンとした何もない8帖あるダイニングの隣にある、
自分の部屋の襖を開けた。
今日からここが私の部屋だ。
段ボールの中身を出し終え、
近くのスーパーに行ってみた。
今日から一人暮らし!なにか作ろう!
という気持ちにはあまりならなく、適当な食材と、
丁度良いこたつテーブルがあったので、購入した。
そのまま眠りにつき、翌日。。。
ピンポーン!
私は急いで待っていた友人を招き入れた。
これから一緒に住むことになる翔子に飛びついた。
「待ってたよ~!!!」
「おまた~!」
翔子は大学で知り合った、気の合う友人だ。
翔子は大学から一人暮らしだったので、家電一式を持ってきてくれたのだ。
ありがたや~。
その日は翔子と、他の友人3名も後から家を見に来てくれ、
夜は、新宿へ繰り出した。
最寄り駅まで徒歩2分、新宿まで電車一本で10分。
我ながら良い場所を見つけたなと思った。
新宿につき、前に一回行って感動した宇宙空間みたいな薄暗い居酒屋に行った。
お洒落だ。
料理は普通だけど、ドリンクは可愛いし、何といっても空間作りが、
田舎では味わえない雰囲気だった。
大学時代一番仲良くしてくれた香織が
「まだ仕事開始まで2週間くらいあるよね?なにするの?」
と言った。
「まずは、事務所訪問かな」
「まじかWWW」
翔子が思わず吹いた。
「お前、あんまりハメはずすなよ~」
男友達の聖人が呆れたように言った。
「その行動力本当謎だわ」
なつきが後に続く。
そうなのだ。自分は当時、ハマっていたバンドがあり、
イベントでテレビがないとそのバンドメンバーが喋ったら、
その足で家電量販店へ行き、テレビをスタッフに渡す等々、
ある意味可笑しなファンであった。
でもそんな怪奇行動をする私を見捨てないでいてくれる
友人に感謝した。
翔子はバンドではないが、アイドルファンであった。
何かにハマるという共通点があり、仲良くなったのだろう。
妄想話に学生時代は花が咲いたものだ。
居酒屋を後にした私たちは歌舞伎町を歩くことにした。
「やっぱ、東京は可愛い子がゾロゾロいるな~」
聖人が関心して周りをみていた。
「そうだね~」
自分はそんな事を口にしながら、私が好きなバンドマン達はこの景色を普通に見ているんだろうなと思った。
キラキラした人達に見えた。
ティッシュ配りや勧誘している人もお洒落で、どこかキラキラしていた。
歌舞伎町は思ったより、ギラギラしている感じはなかった。
もっとネオン~みたいな感じだと思ったが、チェーン店もラーメン屋も普通にあて、こんなものか~と思った。
臭いもなんだか臭かった。
まぁ、歌舞伎町初めてではないからかな。
そんな事を思っていると、なつきが
「なんか折角歌舞伎町きたから、ホストとか行ってみたいな!」
「いいね~東京っぽい!」
「俺はパスだわ~」
「私も興味なし~」
「お前ら行って来いよ。翔ちゃんと香織と俺はカラオケしてるわ~」
なつきと自分はホストへ。
翔子と香織、聖人はカラオケへ繰り出した。
「今日、ホスト行こうと思ってて実は色々調べてきました!」
なつきがルンルンで言った。
「おー!パチパチもんですわ」
胸が高まった。
「何かね、客引きの人から行ったほうが良いっぽいから、その辺歩いて、
声かけられるの待とう!」
その矢先、「ホストいきたいの?」
細身のスーツの男性が声をかけてきた。
「はい、今行こうと思ってて」
「どこ行きたいとかある?」
といって店名がズラッてかいてある紙を見せてくれた。
なつきが目星つけていた場所があったみたく
少し興奮気味に
「ここ!ここ行きたい!」
「了解~。初回は500円で飲み放題だから楽しんでね」
と言いながら、携帯をかけだした。
「今から2名よいですか? 了解~」
「じゃ、いこうか。店前まで案内するよ」
少しドキドキした。東京っぽい。
人が沢山いた道だったので、危険意識はうすれていた。
無事店前に付き、スーツの人とさよならして、
店の人が席まで案内してくれた。
店内は薄暗く、テーブル、ソファーは低めで、
カラオケっぽかった。
そんなに高級な感じしないな~。
でも照明は青いホワーンとしてるのは夜の感じするかも。
なんて心の中で思っていた。
すると、
「どうも~!」
とニコニコしながら、少し大人っぽい人と、ザ・ホストっぽい2人が自分たちの前に座った。
大人っぽい方が始めに聞いてきた。
「ホストは初めて?」
「はい、そうです。」
「あ、敬語使わなくて良いよ~」
「わかった~。」
そんな会話をしていたら、なつきはもう一人と同じ事を話し始めた。
大人っぽいほうと会話を続けた。
「ここは、ホストっていうよりメンキャバっていうんだよ」
「へ~」
「ホストよりリーズナブルで、カジュアルって感じ」
「通りで。なんだかテレビで見ていたような感じじゃなかったから」
「そうだね~。でもこっちのが落ち着くって人もいるんだよ~。
そういえば何している子なの?社会人」
「うん。4月から社会人だよ。」
「そうなんだ。上京してきたの?」
「そう。昨日引っ越ししてきた」
「お~!それですぐここか!やるな~!」
ははは。
正直、あまりタイプではなかったので、会話に靄がかかった感じだ。
そんな風に思いながら会話していると、
ボーイさんがやってきて、
何やらホスト達に耳打ちした。
「じゃあ、俺らは違う席に行って、他の2人くるから、
まだまだ楽しんでね^^」
そういって名刺を置いて席を離れていった。
変わる間、なつきと話した。
「どう?」
「思ったより、普通だった。」
「だね~。なんか、喋るのつかれるかも」
そんな会話をしていたら、目の前に衝撃的な人が現れた。
自分の異性のタイプをそのまま表現したような外見をした人が目の前に現れた。
「どうも~!」といって名刺を渡された。
口の口角が猫みたいにクルっとあがった、笑顔に言葉がでなかった。
名刺をみると龍星とかいてあった。
もう一人のホストが前の人たちと同じような質問を繰り返した。
それをさっきと同じように繰り返しながら色々4人で話した
その間、龍星はニコニコしながら会話を聞いていたり、たまにもう一人のホスト葉月とご飯いった話とかしてくれた。
なつきは葉月とノリがあったらしく、
「お前薬やってんだろ!ちゃんと喋れや!」
と面白いツッコミいれたりしていた。
葉月もザ・ホストみたいな外見だったが、話し方はわざとなのか、
少しバカっぽい話し方だった。
そんな葉月と仲良さそうに、龍星は話していた横顔が凄く綺麗だった。
龍星はどちらかというと、ホストっぽいけど、髪は黒くセットしてある程度で
大人っぽかった。
席には鏡月がどんどん運ばれてくる。
初回飲み放題と言いながらも、鏡月しか飲めなかった。
自分はお酒が全然飲めないので、水だった。
なつきの勢いがすごいのだ。
葉月が
「ここ面白いから指名してよ!初回はタダだから!」
と願った。
「え~。もう少し色んな人と話したい」
さすが、なつきだ。
それから3回くらいメンバーが変わったが、
ほとんど話す内容は同じだった。
「最後指名するか、誰が良い?」
なつきが聞いた。
「私は龍星かな」
「へぇ~、意外!あんまり話してなかったよね?」
「うん、顏がめっちゃタイプだったわ」
「そっかそっか、じゃあ私葉月でいいかな、仲良さそうだし」
「いいの?」
「うん、あんまり良いとおもえる人いなかったから」
そして指名して、もう一度龍星とはなした。
次は目を見れた気がした。
さっきは目をみて話してくれていないような気がしたから、
指名するのをちょっとためらったけど、よかったな。
「指名ありがとう。絶対ないと思ってたから以外だった。」
「うん、顔がタイプだったからね」
「(笑)うれしい」
そして、歌舞伎町の色々な事件や、美味しいお店を
4人で話して時間になった。
帰り際、連絡先を聞かれたので、
あ、ホストっぽい経験したなって思った。
タイプの顔を十分拝めたので、満足して、
翔子達のカラオケに合流した。
カラオケの場所がホストよりもギラギラしていて、
綺麗な場所で東京感満載だった。
値段もそれなりだった。
「どうだった?」
香織が聞いてきた。
「凄く外見がタイプの人がいて、楽しかった」
「まぁ、楽しかったかな~」
「良かったな」
「でも、ますます雷斗に会いたくなった笑」
「さすが、オタクの鏡や1!」
翔子がからかうように、少し楽しそうにニッと笑って言った。
それから、カラオケで盛り上がり、終電でそれぞれ帰った。
翔子と帰り道、東京にきた興奮とカラオケの熱が冷めないので、
駅に降りてからの道は熱唱しながら帰った。
寝る前に翔子と出会えたことに感謝した。
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