ブックマーク

出張から帰ると、青羽の生活は普段に戻る。


数日後、家に帰った青羽は何気なくリナが働いている風俗店のサイトを覗いてみた。


顔をぼやかした女性の写真が並ぶ中で、おそらくこの子であろうシルエットと「リナ」という源氏名を見つけた。


リナのプロフィールとブログを見ていると、妙な気がしてきた。


お互い遠くに住んでいて、プライベートのことは一切知らない。接点といえば、あの日の夜とランチの時だけである。それなのに、まるでリナのことを昔から知っていて、さも身近にいるような気がしてきたからだ。


「俺、何やっているのだろう。彼女でもないのに、まるでストーカーだな」

自分自身を笑い飛ばすと、そのページをブックマークに入れてスマホを閉じた。


それからはリナが書くブログを読むようになった。


「雨が降ったこと」

「美味しいスイーツを食べたこと」

「苦手な魚料理を頑張って食べたこと」


毎日ではないが、定期的に文章が更新されていく。すぐ隣にはスマホで撮った画像がブログを飾る。


リナの好き嫌いを知っていることに少しだけ優越感を感じたりもした。


そのうちに、青羽自身の仕事が忙しくなりブックマークに入れたサイトを見る回数もだんだんと減っていった。


仕事で新規プロジェクトのメンバーに組み入れられると、その頻度はさらに少なくなった。


休みの日も仕事から距離を置く為に、スマホを出来るだけ開かないようにした。


「仕事に集中したいから」というのは言い訳で、本当は頻繁に見ているとリナに「深入り」してしまうのが怖かったからかもしれない。

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