岡村翔平の略敬語チャレンジ

しょうちゃんって、私と喋る時だけ口調違うよね?」


 大学からミド姉のマンションに向かう途中の俺にミド姉はそう聞いてきた。


「他の人には『おれ』って言うのに、私と話すときだけ『ぼく』になるじゃない?」

「別にミド姉と話すときだけってことないですよ。基本的に初対面の人には僕は『僕』って言いますよ。あとは、歳上の緋陽里ひよりさんとかマスターにだってその呼び方です」


 敬語は礼儀だからな。気にしない人は気にしないみたいだけど、俺はそういうのに気を遣っちゃう人だ。


「真面目なんだね、翔ちゃん。けど、私はお姉ちゃんなんだから別に敬語じゃなくてもいいのに……」


 そう言って不満そうに頬を膨らませるミド姉。可愛い。


「僕の性格的にどうも歳上には敬語で話さないと落ち着かないんですよね」

「けど、両親や兄弟には敬語で話さないでしょ?」

「まぁ、そりゃあそうですね」


 親に敬語とか使ってたら、逆に親が悲しむんじゃないかと思う。よそよそしいったらないからね。そういうのをミド姉も感じ取ってるんだろうか?


「う~ん。けど、こればっかりはどうにも変え難いというか……。慣れだとは思うんですけど、落ち着かないんですよね」

「それじゃあ、大樹だいきくんみたいに今時の若者っぽい軽い敬語を使ってみるのは? ほら、大樹くんって、私に対して『そうっすね』みたいに『……です』を『……っす』って略してるじゃない?」

「あぁ~なるほど! 確かにそれならできるかもしれないですね」


 いきなりタメ語にするよりはハードルが低そうだな。


「それじゃあいくよ! 翔ちゃんって可愛いわよね!」

「やめてミド姉! いきなり照れるじゃない!」

「……あれ? 何かおかしくない?」


 言い慣れないからつい噛んでしまった! なんかちょっと恥ずかしい……。


「すみません。ちょっと噛んでしまったみたい

「言えてないよ、翔ちゃん!」


 僕にチャラ敬語は無理みたいっす。

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