174 - 劇場版 ギガゴリラVSカラテオーVS名も無き戦士VSアイナVSMedic07VSロビノくんVSR1-D1VSメカ掃除機VS真凛ちゃんVSホモ・サピエンス 集え!ぼくらのロボット達

 世界各地の主要都市上空に襲来した巨大円盤に、人類の通常兵器は全くの無力だった。円盤の放つ怪光線かいこうせん一つで街は火の海と化し、各国軍の航空戦力は敵に傷一つ与えられぬまま灰燼かいじんに散る。邪悪な侵略者の哄笑こうしょうが絶え間なく天地に響き、生き残った人々の心から希望の光を奪い去ってゆく。

 最早もはや人類は滅びを待つしかないと思われた。だが――。

 そんな絶望のふちだからこそ、諦めず立ち上がる者達がいた。



 ◆  ◆  ◆



警告アラート! 12時方向、敵航空戦力20!』


 操縦席コクピットに響き渡るAIの声が全てを言い終えるより先に、敵軍の小型円盤が撃ち出す緑のビームがスクリーン一杯に広がる。特殊操縦服ジャングル・スーツに身を包んだ猩次セイジは大きく腕を振り、機体ギガゴリラを前方の摩天楼へと飛び移らせる。


「ジャングルの怒りを見せてやる。バナナ爆弾ボマー、全弾投射!」

了解アイ。バナナボマー全弾投射!』


 小型円盤群の遥か上空まで跳び上がり、ギガゴリラは指先から無数の小型爆弾をばら撒いた。雨霰あめあられの如く降り注ぐバナナ型の爆弾が次々と敵を爆散させ、ギガゴリラは摩天楼を支点に勝鬨かちどき咆哮こえを上げる。

 しかし、一騎当千の活躍も長くは続かなかった。巨大円盤から新たに出撃した小型円盤群が、一つに重なり、巨大な機械竜となって襲い掛かってきたのだ。


「くっ……!」


 猩次セイジは全身を襲う揺れに耐えながら、ギガゴリラの腕力リミッターを解除して応戦を試みる。だが、敵の機械竜は大きさも強さも桁外れだった。ギガゴリラはたちまち炎の海に叩き落とされ、巨大な竜の邪眼がスクリーン越しに猩次セイジを睨み付ける。

 ここまでか、と彼が目を閉じかけたとき――


空手カラテ改法! 竜巻たつまき旋風せんぷうき!』


 雄々しく鋭い声がその場に響いたかと思うと、疾風かぜを纏って新たに現れた巨大ロボットの拳が、機械竜の胴体に風穴を開けていた。

 爆散する機械竜の残骸を背に、そのロボットが――カラテオーが仁王立ちする。


「あんたは確か、あの時の……!?」


 猩次セイジが外部スピーカーで問いかけると、カラテオーのぬし嵐牙ランガの声が返ってきた。


『いかにも。その分だと貴様も選ばれたようだな、10に』

「10の、ロボット……?」

『説明は後だ。おくれを取るなよ、サル!』

「……ああ、そっちこそな!」


 猩次セイジ機体ギガゴリラは炎の海の中に立ち上がり、嵐牙ランガ機体カラテオーと背中合わせになって敵と対峙する。巨大円盤から出撃してくる無数の円盤群が、あるものは竜の、あるものは獅子の、あるものは悪魔の姿となって彼らに襲い掛かってくる。


「行くぞ、ギガゴリラ! 野生ワイルド機動ドライブ全解放!」

『グオオォォォッ!!』


 猩次セイジの戦意を映すギガゴリラの咆哮が、灼熱の街に轟いた。



 ◆  ◆  ◆



「どういうことだ。地球は滅んだ筈ではなかったのか」


 名も無き戦士は戦禍の街を遠く見やり、誰にともなく呟いた。守るべき対象ひとも、果たすべき使命も失った彼は、今や人類全ての墓場と化した母なる地球で静かに眠り続けていた筈だったのだ。それなのに――。


「まあ、仕方ありませんねぇ。出自の違うロボット同士を無理やり共演させたのだから、多少の齟齬そごには目をつぶらなければ」

「何だ、お前は」

「執筆ロボットのR1アールワン-D1ディーワンと申します。ただコメディ小説を書くだけのポンコツAIだった筈の私が、こんなシリアスな世界観に出演しているのも、全ては神のおぼしなのでしょうね。あ、そうそう、地中に埋もれていた貴方の身体ボディを洗浄してくれたのは、この、8のロボット掃除機君ですよ」

『ハイ。ワタシは出演のノルマを達成シマシタ。次の清掃作業に向カイマス』

「出演? ノルマ? 俺には何の話だかさっぱり……」

「ほらほら、もっと胸張ってくださいよ。貴方、誇りある3なんですから。そんでもって、戦力を有してるのなら、ギガゴリラとカラテオーに合流して戦ってあげてください。バトル物の上位ランクインが意外と少なくて、大変なんですから」

「何が何やら全く話が見えないが……。俺の力が必要とされる場所がまだあるというのなら、俺は何度でも戦おう。この機械の身体に命を宿してくれた人類のためにも」

「良い心がけです。あ、ちなみに、人類っていうのも元々は全員、異世界人が作ったロボットだったんですけどね」

「はぁ!?」

「上位作品の設定を繋げたらそういうことになるんですよ。まぁ、この際そんなことはどうでもいいので、ご武運を祈ります」



 ◆  ◆  ◆



「僕は自分を見失っているんです、Medicメディック07セブン先生。ロボットのように思わせておいて実は人間だったという『読者へのどんでん返し』が僕の唯一の存在意義だったのに、ここにきて人類全員が実はロボットだったという設定になったら、一体僕は何なんですか」

「ロビノくん、君が何者なのかは君が自分で決めることだよ。死の間際に生命の価値を見出した彼女のように」


 病室のテレビはアンドロイド・真凛マリンの姿を映していた。全地球規模の人気を誇ったヒューマノイドアイドル・アイナと並び立ち、彼女は最後のライブに臨んでいるのだ。AIの寿命があと一日しかないと知りながら、それでも人々を勇気付けるために。


『みんなー、いっくよー! アイナと一緒に、正義のロボット達を応援してあげてね!』

『わたし達は歌います。人類に一筋の希望が残されていることを信じて』


 今や地上の全ての人々がその放送に釘付けになっていた。ギガゴリラの、カラテオーの、名も無き戦士の――侵略者の巨大兵器に勇ましく立ち向かう者達の勇姿と、それを応援する二人の歌姫の姿に。

 出自も経歴も何もかもが違えど、地球を守るために力を合わせる者達。ロボットという鋼の絆で結ばれた彼らの戦いの行方は、貴方達一人ひとりの想像こころに委ねるとしよう。



 ◆  ◆  ◆



【Congratulations for TOP 10 Masterpieces!】


第1位 GIGAGORILLA/ジャングルからの逆襲

第2位 機動武勇伝 戦え!カラテオー

第3位 The Last One ~地上最後のロボット~

第4位 ヒューマノイドアイドル・アイナちゃんは今日も元気に歌っちゃうのです!

第5位 高性能医療AI Medic07のカルテ

第6位 ロビノくんと私

第7位 ロボットがロボット小説を書いてみたら全然ウケなかった件

第8位 メカ掃除機の大冒険

第9位 その患者の横顔 -命、尽き果てるまで-

第10位 新説・人類の起源



NEXT……175 - 相撲という競技は何も悪くない

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885626960

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