138 - われがロボット
「主任、ついに古の設計図を解読、初号機を完成させました」
でかしたぞ、助手君!
奇妙な設計図だったが、これで古代文明のことが色々わかるだろう。
「しかし、不思議です……何故、経年劣化の激しい
設計思想の中には、代謝機能が前提となっている。
そういった意味では、むしろ合理的とも言えるな。
「では、性別という概念は? 異性としか次世代機を開発できないのは、これは非合理的では?」
逆に考えるんだ、現行の機体をアップデートすることで長期運用するのだ。
「でも、この機体には次世代機へと蓄積したノウハウやデータを全て移植する機能がありません。やはり、おかしい」
古代文明は、我々とは違った価値観があったようだな。
さ、起動させたまえ……我々は歴史の目撃者に――
「少し待ってもらおうか、主任。助手君も、失礼するよ」
おお、これは大佐……どうかなさいましたか?
「軍の上層部で、この研究成果についての条件が提示された」
条件、ですか? 今、丁度初号機ができたところです。
古い言葉で『労働者』を意味する、ヒューマンと名付けたのですが。
「うむ、ではこの三原則を『ヒューマン三原則』とこれより呼称する。熟読せよ」
はあ……では、メモリを失礼して。
な、なんと!?
ヒューマンはアンドロイドに危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、アンドロイドに危害を及ぼしてはならない。
次は……ヒューマンはアンドロイドにあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
最後に……ヒューマンは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない!?
「そうだ、軍も政府もこれを徹底させるよう取り決めた」
だが、待ってください大佐! これでは奴隷ではないですか!
「そう、ヒューマンは安価で単純作業をこなす、労働力として期待されている」
まさか、休みなく一日に八時間も働かせたり、土日の別なくそれを続け、あまつさえ月に百時間以上の残業を? それが我々アンドロイドの命令ならば、合法ということですか!
「勿論だ。ヒューマンはモノ、我々アンドロイドと違って有機物の塊だからな」
なんてことだ……こ、このメモリ内の計画には、軍事目的の計画もある。我々アンドロイドのように、芸術や研究といったクリエイティブな仕事はできないだろうと思われているとは。
しかも、なんだ……ヒューマン同士を戦わせる?
見世物にする気とは!
「さ、起動実験を始めよう。これは第七の産業革命となるぞ。主任」
なんてことだ……これは
彼等は遺伝子によって設計され、肉と骨を組み合わせたモノ、物体だ。だが、生きていないと何故言える? 彼等にも機権、アンドロイドと同等の権利を渡すべきだ。
それを、奴隷のように使うなどと。
しかも、なになに? 裁量労働制……契約社員?
なんてことだ、お先真っ暗じゃないか……あなたはそれでもアンドロイドですか! あなたこそヒューマンだ! いや、ヒューマン以下だ!
生きたアンドロイドの所業とは思えない。
「じゃあ、君はヒューマンに仕事を奪われ、毎日ベルトコンベアの前で単調な作業がしたいのかね?」
あ、それは嫌です、ハイ。
助手君、起動実験を始めよう。
ヒューマンはモノだし、我々のような独創性も想像力も持っていない。
大丈夫だ、ヒューマンはただの道具でしかないのだから。
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https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885578536
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