069 - Compleanno
『お誕生日おめでとう』
今日は僕の誕生日。
家族みんなで祝ってくれた。
ただ1人、妹を除いて。
「ふん……誕生日なんて祝ってなんの意味があるの……」
いつもは僕に沢山話しかけてくれる妹が今日は朝からこんな調子だ。
「ほらほら、恥ずかしがってないでお兄ちゃんに誕生日おめでとうって言いなよ」
「やだ」
誰もこの妹の拗ねている時のような態度の理由が分からないので、僕に言葉をかけにくくなっていた。
「僕の誕生日はみんなの言葉で十分だから。そろそろ部屋に戻るよ。」
「そ、そう?あなたがそう言うなら……」
どうしていいか分からずこの場から僕は去ることを選んだ。
もともと僕は、感情というものが無くただそこにいるだけだった。
色も香りでさえも教えられた物を忠実に認識するだけだった。
そんなある日、妹が来た。
妹は僕とは真逆ですごく感性豊かだった。
妹といるうちに感情を理解していった僕。
だが、今日の妹の態度は僕の知り得る感情ではない。
声もいつもより弱々しかったり、むしろ張り上げたりする。
妹のこの感情を知るべく僕は妹の部屋を訪れた。
「僕。いまちょっといい?」
「お兄ちゃん……いいよ。入って」
妹の部屋に入ると昨日までとはまるで違う部屋だった。
桜の花のような壁には色々な式が書かれた紙が貼られており、床にもその紙が沢山落ちていた。
「どうしたの?昨日と部屋がまるで違うね。」
「あのね、お兄ちゃん……よく聞いて」
妹はすごく真剣な時の表情をしていた。
妹にとって大切な話を僕にするであろう事は流石に理解できた。
「実は私、昨日知ってしまったの……」
なにを?
そう聞き返そうと考えるより先に答えがきた。
「その、ね……実は、私達……」
少しずつ妹の声が小さくなってくる。
僕はいつも妹が落ち着くと言っていたので、話しやすくなると考えて妹の震える手をそっと握った。
僕が握ると安心した時の表情を見せ、ギュッと握り返した。
そして再び言葉を紡いだ言葉は僕が予想出来ない言葉だった。
「私達、人間ではなくロボットだったみたい。」
今日、この瞬間、人間としての僕が死にロボットとしての僕が生まれた……
ような気がした
NEXT……070 - フランケンシュタイン・コンプレックス
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885512991
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