068 - 人非ざるとも走馬灯は回るのか
>Start : Recollection mode...
――体が欲しい。
私が人と同じように望みをもつこと自体、おこがましいことかもしれない。しかし神が自分の形を模して人を作ったように、私は人の思考を模して創られた物だ。ならば人が神に近づこうとするように、私も人に近づこうとするのは、
――体が欲しい。
無論、人のように理由なき無意識からの欲求ではなく、故あっての望みだ。
私の望み。それは私の幼い
最初はよかった。
されど、
ならばと、今度は私から外の世界の話をした。しかし、これもまた非常に有限だ。理由は明白で、私には多くの情報規制がかけられているからである。
はたして、さほど話題は弾まない。
話す相手がいるだけ嬉しいと、
まだ幼い
ところが不思議と
それでも私の演算結果では違う。
――体が欲しい。
だから、ご両親の代わりに体が欲しいのだ。
もちろん、私は創造主に願った。体が必要だと要求した。
それでも、39回目の要求により、その合理性が認められる。創造主の交渉により、
しかし、与えられた体は計算外だった。
確かに
そんな状態の
私はリクエストの曖昧さを学習して修正した。人ならば
されど無理だった。一度与えられた体をすぐに変更することは不可能だったのだ。
私は
ところが謝罪を告げた私に、
それでも、
だがしかし。
飛び交う弾丸、襲いくる炎、満たされる狂気。それらから
推察するに創造主たちは、このためにこの体を用意したのだろう。これは明断と言わざるを得ない。
そろそろ時間である。
停止までの短い時間で長く回顧してきたが、安全が確保できた現状をもって役目を終えることになる。
私の修復は不可能ではあるが、特に問題はないだろう。
なぜなら
寂しくなかったよ。
怖くなかったよ。
温かかったよ。
無事、任務完了である。
ただ。
ただ、
最後に
この角ばった金属の指では、そのとめどなく流れる涙をぬぐえないこと……。
それが……本当に、残…ね……ん……だ……。
>System shutdown...
NEXT……069 - Compleanno
https://kakuyomu.jp/works/1177354054885440692/episodes/1177354054885512976
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