第39話 『はげ山の一夜(原典版)』 ムソルグスキー

 クラウディオ・アバドさまの指揮したベルリン・フィルのこのCDが出た時は、おったまげました。


 たしか、その前に、テレビ放送もあったような気がするのですけど。


 通常聞くこの曲は、リムスキー・コルサコフ先生による編曲版です。


 確かに、良くまとまっており、作品としての完成度は高いのですが、この原典版を聞くと、

その爆風で、編曲版は、すっとんでしまいそうです。


 つまり、本来、非常に過激で、言葉は良くないけど、暴力的な音楽なのであります。


 最大の違いは、編曲版にある、後半の美しい夜明けの場面は、無いところです。


 もっとも、ここは、ムソ先生の、原典版とは、さらに、別の、オペラ『ソローチンツィの市』の中のバージョンから取り入れたようで、リムスキ先生が勝手に創作したわけではないようです。(やましん聞いてないです。)


 つまり、ムソルグスキー先生(1839~1881)は、本来は、この曲に、どうやら、癒しは求めてはいなかったのでしょう。


 これは、たいへんな違いでありまして、音楽自体の性格が相当変わることになります。


 これまた、良くない言い方をすれば、呪いの音楽だけだったのに、リムスキ先生が、浄化させてしまったわけです。


 でも、それによって、幅広い評価を得て、人気作品になれた訳でもあります。


 これに関する、ムソルグスキー先生ご自身の見解は、判りません。


 ムソ先生は、軍隊勤めから、公務員となったものの、地位は低く、一時の成功はあったものの、お酒への依存性が高まり、最後はお仕事も追われ、若くして病死。


 ラヴェル先生が、『展覧会の絵』に注目し、管弦楽曲に編曲(編曲版は、他にも色々あり。名物大指揮者、ストコフスキー先生編曲の管弦楽バージョンもあります。)したおかげもあり、これは現在も人気が高く、きっと各オーケストラの結構な収入源ともなっており、またムソ先生のお名前も、不滅となっております。はい。




 



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