第38話 『交響曲第1番』 ブラームス
ブラームス先生の全身全霊が叩き込まれた、人類史上まれな、いわゆる記念碑とか、モノリスとか、のような交響曲。
完成までに、20年をついやした、ブラムス先生が、まさに、その人生をかけたと言うべき偉大な『交響曲』であります。
スコアの冒頭を見ると、ハ短調8分の6拍子、冒頭フォルテはひとつだけ。
しかし、ずぶのしろとが見ても、苦心惨憺、奮励努力の積み重ねで、ひたすら長き時間をかけて、いちずに精魂込めて書かれたんだと、しみじみと感じるような、迫力満点スコアです。
大編成のオケと言うのではないですが、その音楽には、とてつもなく、根性入っています。
ま、もちろんすでに、この曲をご存じの方は、この先、何が起こって、最後がどうなるかが、わかっているわけですね。
それでも、また、毎回、ワクワクしながら聞くわけです。
確かに、これは、凄い交響曲なのであります。
冒頭部、木管楽器群は、一旦下降し、それから再び、ちょっと逡巡しながらも、上行傾向になります。
弦楽は、ベースがぐっと低音を支えるなかで、木管とは反行して、上昇を続けます。
その中央で、ティンパニさんが、激しく『動悸』(あえてこの漢字)を撃ち続けるのです。
それは、8分の6拍子の一拍ごとに打ち鳴らされる、命の鼓動のようなもの。
この鼓動から、上と下の両方向に向かって、放射状に強烈な音が広がって行っているようにも見えるのです。
この序奏部分が、まず何と言っても超有名です。
第2楽章は、やましんにとっては、まあ昔の、正の(負じゃなくて)トラウマ(そんなものがあるとして)であります。
もう、遥かなむかしですが、1975年と77年の、カール・べームさまの来日公演は、まさに大変な事態となりました。(やましんはテレビ観戦しただけですが、それでも、まあ、ものすごい熱狂状態でした。CD出ていますから、追体験可能。)
特に、このブラームス先生の『第1交響曲』の演奏は、ほとんど神格化されてしまう事態だったと思います。NHKさんも、ドキュメント特番を組んでた記憶があります。
確か、この日本公演の裏話について書かれていたご本もあったような気がします。(べームさまは、腕時計が大好きで、この公演中に手に入れた日本製の自動巻き時計は、大変お気に入りだったとか、のような・・・)
やましん、この曲を聞くと、この頃のことや、雰囲気やらを、自然に思い浮かべるのです。
ただ、『第4楽章』は、また時に、問題を思い出させます。
この楽章も、壮大な序奏部分を持っていますが、その事自体が、ベートーベン先生の、『第9交響曲』を思い浮かべさせるのです。
さらに、そのあとの第1主題が、べー先生の『歓喜の主題』に、似てるんじゃないか、と、作曲当時から指摘されていたようなのであります。(初演は1876年11月4日。)
ブラムス先生ご自身は、『しろとには何でも似て見えるのさ。』(本当は、もっと良くないお言葉だったらしいですが、・・・)とか、おっしゃって、切り捨てていらっしゃったとか。
そこで、本当に似てるか似てないか、は、実際に聞いて確かめるのが一番です。
ここに、楽譜は書けないので、簡略化したハ長調読みの音を並べてみましょう。
ブラムス先生(もともとハ長調。4分の4拍子。『-』=4分音符分1個分)・・・・・・・・
『そー|どーーしーどー|らーーそーどー|れーみれみーどー|れーーれーそー|どーーしーどー|らーーそーどー|れーみふぁみーどー|れ--どー、そー|れーみふぁみーれー|れーみふぁみーれー|れーみふぁみーしー|ど--らーー| ~~~~~~』
べー先生(もとは二長調。4分の4拍子 同上)
『みーみーふぁーそー|そーふぁーみーれー|どーどーれーみー|み-いれれーー|みーみーふぁーそー|そーふぁーみーれー|どーどーれーみー|れーえどどーー|れーれーみーどー|れーみふぁみーどー|れ-みふぁみーれ|どーれーそーみー|ーみふぁ-そー|そーふぁーみーれー|どーどーれーみー|れーえどーどーー』
わかりにく~~~!!
やっぱ楽譜が良いですよね。
ま、しかし、こうしてみてみると、『れーみれみー』とか『れーみふぁみ-』という音型が、確かに要所で、近い事は事実なんですね。
似てると思えば似てもいるが、違うと言えば、やっぱり違う、というくらいでしょうか。
曲全体から言えば、よく『苦悩から最後は歓喜に至る』過程を描く、という、非常にある種、人生肯定的な賛歌として語られることも多く、そう言う意味合いでは、べー先生の『第5交響曲』を、言葉を用いて具現化したもので、ブラムス先生のこの『第1番』は、その同じ流れの音楽であり、たとえば、チャイコ先生の『5番』も、シベ先生の『2番』も、またショスタコ先生の『5番』も、みな、そうなのだ! という見方もあると思います。個人としてだけでなく、社会全体を意図して、そのように言われることも、あるかと思います。
それはそれで、大変結構なことだとは思いますが、人生まだ、失敗ばかりで、まったく成功していないやましんなどには、いささか、あまりに眩しすぎる、ものの見方ではありまして、基本的には、やや斜めから見ないと、目がくらんで倒れてしまいます。
しかし、それでもこのブラムス先生の曲のラスト・スパートは、交響曲史上でも、きっと稀に見る素晴らしいもので、ブラムス先生の人生絶頂期に至る時期の素晴らしい勢いというものを、まじかに見るような、ものすごさがあり、実に、感動的なのであります。 はい。
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