第23話 『ヴァイオリン協奏曲』 チャイコフスキー
昔から、どなたが言い出したのかは存じませんが『三大ヴァイオリン協奏曲』
(なんだか、項目によって、ヴァイオ~だったり、バイオ~、だったりして統一出来ていませんが・・)という言い方がありまして、それは、ベートーヴェン先生、メンデルスゾーン先生(ホ短調)、ブラームス先生の作品をさすことが多いのですが、時にチャイコ先生が割り込むこともあったりするくらい、名曲として、名高い作品です。
ところが、『ピアノ協奏曲第1番』と似たような困った事態が、この曲でも持ち上がりました。チャイコ先生は、1878年に、大ヴァイオリニスト、レオポルト・アウアーさまに、初演の話を持ち込んだのだそうですが、『演奏するには全面改訂が必要』と、言われてしまい、これは、好意だったのかもしれませんが、チャイコ先生は、その『演奏してほしいなあ』、と言う申し出を、自ら撤回してしまいます。
このあたり、繊細で気が弱かったと言われやすいチャイコ先生が、実は意外と頑固なところをも、見せているようです。
しかし、さらにこの前、チャイコ先生は、まだぐっと若手のヴァイオリニストの、イオシフ・コテックさまというという方と知り合います。チャイコ先生は、お弟子さんのアントニーナ・ミリューコヴァさんから熱烈に求婚され、押し切られて結婚はしたものの、すぐに破綻し、1877年、有名な自殺未遂事件を起こします。コテックさまは、そうした危機状態のチャイコ先生に献身的に協力したらしく、チャイコ先生は『ヴァイオリン協奏曲』を作曲し始めました。で、彼にこの曲を、献呈するつもりだったようなのです。ところが、この二人が、実は怪しい関係なのではないかと、無慈悲な世間から噂されたらしく、その離婚スキャンダルもあり、結果、この企画はとん挫し、また先生の周囲には、あまり良い協力者がいなくなってしまっていた、らしいのです。(いつも参照させていただきます、平林直哉さまの『クラシック名曲初演&初録音辞典』参照。また、本当にたくさんある、この曲のレコードやCDの解説もご参照ください。)
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ときに、20世紀の大ヴァイオリニストであった、ハイフェッツさまとか、ミルシテインさまとか、エルマンさまなどは、このアウアーさまのお弟子さんでした。
若いハイフェッツさまと談笑する映像(少しわざとらしい感じもありますが・・・)が現存しております。
また、余談ですが、おそらくは、チャイコ先生のお声であろうという録音も存在しております。
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それでも、ブロツキーさまという方の協力が得られ、新しいこの『ヴァイオリン協奏曲』は1881年に、公開にこぎつけたモノの、こんどは、巨大な影響力のあったドイツの批評家、ハンスリックさまに酷評されてしまう事態となり(このかたは、ブラームス先生の支持者で、一方ブルックナー先生を、常に目の敵としていたことも知られておりますが・・)、さんざんだったようです。しかし、ブロツキーさまは、負けずに演奏をし続け、聴衆からの支持の声はどんどん上がって、やがて、今日は、冒頭のような状況になっておりまして、この曲を演奏することは、若いヴァイオリニストにとっては、出世の必須事項のようなことになっております。
世論は、時にチャイコ先生を追い込みもし、また救援もしたわけです。
実際に、これはもう、素晴らしいとしか、言いようがない傑作なのです。
やましんは、中学生時代から、この『第2楽章』に、ぞっこんでした。
とくに、中間部の後の、再現部では、もう、泣かずには、いられないのでした。
また、この曲、現在もちょっとカットのあるバージョンで聴くことも多いですけれど、やましんは、カットのないほうが好きです。
さて、チャイコ先生は、前述のように、同性愛が古くから取りあげられていて、その死因も、そこが元になっていた『強制的』な自殺である、という説が、以前大変クローズアップされていた時代があります。
それは、おそらくまじめな問題提起や、告発でもあったのだろうとは思いますが、一方で興味本位な意識や、ある種の反発心などもきっと世間にはあり、これまたおそらくですが、人権への主体的な対応は、あまり出来ていなかったのかもしれません。(やましん自身も、そうだったろうな、と反省します。)しかも、状況証拠ばかりで、根本的な証拠は、なにもなかったのだろうとも思います。
近年は、こと死因に関しては、そうではなくて、やはり、生水を飲んだことから来た、コレラへの感染がひきがねになった、とする考え方が、正しいとされる状況のようです。
ときに、最近この国の、スポーツでの暴力沙汰トラブルとか、一部の政治家のご発言とか、入試の点数の修正などには、チャイコ先生は、もしかして、お墓のなかで、悲しんでいるかもしれません。
自分がちゃんとできてるなんて、絶対に偉そうなことは言えませんが・・・なにしろ、人が怖くて、いつもおうちに、閉じこもってるやましんですから。はい。
でも、もう少し、みんな仲良く尊重し合えるようにするのには、どうしたらよいのだろうかなあ、と、考えます。なんだか、少し悲しいからです。
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