第9話 『ヴァイオリン協奏曲』 貴志康一

 ハチャトウリアン先生のバイオリン協奏曲が素晴らしいと思う方にとっては、これは大変貴重な傑作。


 こちらの方が先輩。(初演は1934年。ただし第1楽章だけ。全曲の初演は、なんと1978年ということ。ハチャ先生の曲は1940年。)


 これを、日本の伝統というものと、西欧の音楽の融合の(あるいは協調とか、協和とか。。。)試みと見るのが、きっと、正しいのでしょうけれど、やましんは変人なので、こう思うのです。


 西欧音楽だって、中国音楽だって日本音楽だって、ブラジル音楽だって、同じルーツを持つ人類が生み出したものですから、もともと近親性があって当たりまえなのです。


 つまり、もとから融合しているわけで、例えば宇宙人から見たら、多分、まあ多少、いくらかの変種があると言うくらいのものです。


 まあ、しかし、これは巨視的な考え方で、微視的には先ほどの考え方になって来るのでしょうか。


 しかし、なにしろ、日本人で初めてベルリン・フィルを振ったとして有名な方ですし、ヴァイオリニストでもあったということで、作品としての質はとても高度なもので、試作品ではありません。


 ただ、苦労をなさったことは事実のようで、素人耳にも、(専門的な事は専門家でないと、わからないものですが・・・)日本的なものと西欧的なものとが,

おそらく意識的に、別個に出ても来ます。


 なんとなく、ブラームスさんやブルッフさんあたりを思い出させるようなところもありますが、ちょっとおもしろいのは、第1楽章の主題あたりは、『いやあ~、なんか、どっかで聞いたような~』と思ったら、なんだか、フィンランドのパルムグレン先生作曲のピアノ曲『とんぼ』に、なんとなく、似ているんですね。


 しかも、非常に日本的でもあります。


 これは、フィンランドの音楽と日本音楽との近親性というよりも、やはり同じ人類だから出て来た近親性だと思った方が、良いような気が、勝手にいたします。


 まあ、学問的な根拠はなく、先生方には、一蹴されるでしょうけれども。


 確かに、第3楽章あたりには、今の一般人の耳からしたら、ちょっときわどい音楽で、やり過ぎのようにも感じる部分もあるでしょうけれど、ならば、ハチャ先生だって、けっこう、やり過ぎかもしれません。


 今から見れば、いささかやり過ぎでも、これが、実際に聞いてみると、なかなか楽しいものなのです。




 




 





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