赤の章

私は森の中を一人歩いていた。


キリンの提案で手分けして探す事になった。

照り付ける太陽の元で必死になって探したが、その日差しが私の体力奪うだけだった。


「クソっ...、何処にいるんだよ...」


はぁーという重い息を吐き足を止めた。


(もし、サーバルが殺されてたら...)


不穏な考えが過ぎる。


(今まで犠牲になったのは、

ヒグマ、ヘラジカ、博士、アライさん、フェネック、そして、仮にサーバルになると...)


指を折って数えた。


6人


(あれ...?)


黒、緑、白、紫、桃、黄色


私はハッとした。


次狙われるのは、赤


「かばんが...、危ない!」


彼女だけは、彼女だけは最後まで信じたかった。


(そういう事か...!

そういうことだったんだ...!

私のせいで...!)


オオカミは野生解放し、かばんの元へと疾走した。






「そ、そんな...」


アミメキリンが見つけた小屋。

その中に入ると仰向けに倒れ、腹部から

出血しているサーバルを見つけた。


僕は崩れ落ち、声を震わせた。


「ねぇ...、ウソでしょ...

サーバルちゃん...!」


「か、かばんさん・・・、あれ・・・」


キリンに言われ右を見ると、

刃物が自分の腹に刺さり、その柄の部分を自身で抑えていたキタキツネだった。


「犯人はキタキツネさんですよ!」


アミメキリンはそう言った。


「露骨すぎますよ...」


僕はそう呟いた。

立ち上がって、キリンの襟元を掴んだ。


「何でこんなことを!!」


「・・・」


するとキリンはいきなり僕の肩を持ち、

勢いよく小屋の外に突き飛ばした。


「あっ...」


「それはあなた達がパークを救った

“英雄”だからです」


「英雄...」


「英雄は後にパークを滅ぼすそんざいになるんですよ。だから、だから私はっ!!パークを守る為に!!

あなた達を排除するんです!!」


何処で手に入れたのか。

ナイフを取り出し、僕に向けた。


僕は急いで立ち上がり、距離を取る。


「黄色の英雄はキタキツネさんの

お陰で殺せましたぁ...」


「キタキツネさんは...英雄じゃない...」


「口封じですよ...」


不敵な笑みを浮かべた。


「残る英雄は赤のあなたです。

このパークを救ってみせますからね!」


ナイフを持って僕に向かってきた。

その時だった。


「うぁっ....」


僕とキリンの間に入ってきたのは


「せ...、せんせ...」


「私の...、私のせいだ...

キリン...、あの話は全部、ウソなんだ....」


「えっ...」


「かばんに教えて貰った...

エイプリルフールっていう...

嘘を付いてもいい日があるって聞いた...、だから、前々から準備したんだ...」


「あの本は...」


「図書館で見つけた...。それっぽく

見せたんだ...」


「それじゃあ....、私はっ...」


「キミは悪くない...、黙ってた、私の責任だ...。

私は...、かばんの命を守って...

この責任を取る...

キリン、お前は...、死んだフレンズの分まで生きてくれ...。それが、法のないこの島での...唯一の...償いだ...」


「先生っ...」


キリンは今にも泣き出しそうな顔をしていた。


「そんな顔しないでくれ...

キミの笑顔が、この世界で一番、良い顔だ...」


オオカミは最後の力を振り絞り、

キリンの頬に口付けをした。


「キミに...刺されて死ぬなんて...

うれしいよ...」


オオカミが最後に放った言葉はそれだった。

キリンに抱かれるように、前に倒れ、息を引き取った。


「あぅ...そんな...先生っ...」


キリンはその身体を強く抱き締め泣き続けた。


僕もその姿を見て物凄く罪悪感が生まれた。


僕がエイプリルフールなんて教えなければ、こんな惨劇は起きなかった。

そういう意味では、僕はキリンと同罪なのかもしれない。








僕は生きている。もちろんアミメキリンも。

1度犯してしまった過ちは一生消え去る

ことは無い。

今回の事件の犠牲者は全て、ひとつの嘘から生まれた。


花を手向け、手を合わせ、深く祈るしか無かった。


エイプリルフール。


直訳すると、“4月バカ”


僕達はそんな嘘に翻弄された

“バカもの”だ。


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七英雄と一つの嘘【エイプリルフール特別企画小説】 みずかん @Yanato383

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