紫の章

私とアミメキリンは図書館へ来た。

しかし、異様な雰囲気が漂っているのを私は直感的に感じた。


図書館に入った瞬間、異臭が鼻についた。


「わっ...、なんだこの臭い・・・」


思わず口を手で覆った。


「誰かいますかー?」


キリンは平気そうに尋ねる。

そうか、私は他の動物と違って鼻が敏感だから、余計に酷く感じるのかもしれない。


「誰なのだー?」


出てきたのはえっと、確かアライグマのアライさんだ。


「タイリクオオカミじゃん、どうしたのさ」


フェネックもその後に続いて出て来た。


「ああ・・・。ちょっとある事件に関して興味が出てね」


「事件・・・、うーん。ちょっと事情を話させてね」


フェネックは自然な流れで私たちをテーブルへと導いた。


「立て続けにフレンズが死んでしまった事件だよねー。

実はかばんさんとサーバルが調べてるんだ」


「なるほど・・・、彼女らの見立ては何なの?」


「これまでに、ヒグマ、ヘラジカ、そして今朝、博士も殺された」


「えっ、博士も?」


信じられず聞き返してしまった。


「かばんさんは、“キノコ”を食べて博士さんはああなったって、

言ってたのだ・・・」


アライさんは少し低い声で言った。


「たぶん、同じ人物が何人も殺す“連続殺人”じゃないかってね」


「他に、どんなことをかばんは言ってたんだ?」


「フレンズはお互いに傷つけあう事は無い。何かに“唆されて”

自己防衛的に危険と判断したフレンズを殺害したんじゃないかって」


「難しい事を言うな...、かばんは」


「推理小説にハマったんだって」


すこし呆れた言い方をフェネックはした。


「・・・、ところで、今かばんは?」


「博士がダイイングメッセージを残したから、話を聞きに行くって言ってたよー」


「ダイイングメッセージ・・・」


「“き”っていう文字を書き残したんだ」


「...!」


私は何故か隣のアミメキリンが気になった。


「ん、アミメキリン、どうした?」


「何でもないですよ?」


私の目を見て、そう言った。

何だろう?アレ、何でもないか。


「あっ、そう言えば助手は?」


「一番の親友がああなっちゃったからね・・・。

死んでしまったフレンズは野生動物に戻るらしいんだ。

助手はいま“野生”の博士を抱いてねぇ・・・」


フェネックはハッキリとは言わなかったが、まあこちらも大体察した。


「そうだよな・・・。私も協力していいか?」


「うん・・・、ありがたいよ。

犯人を突き止めて、この惨劇を終わらせなきゃ」


フェネックは息を吐いてそう言った。









フェネックとタイリクオオカミが話している。

アライさんは二人から距離を取って、暇そうにしていた。


「アライさん」


「どうしたのだ?」


「森の中にね、凄い物を見つけたんですよ」


「凄い物?」


「私と見に行きませんか?」


「アライさんは気になるのだ!フェネックも誘って・・・」


「シッ」


私は人差し指を彼女の口の前に差し出す。


「これは内緒ですよ。私とアライさんの」


笑顔を浮かべて見せた。


「じゃあ、いつ行くのだ」


「今日の夜はどうですか?」


「わかったのだ!約束なのだ!」


彼女は笑って見せた。






かばんさんは遠くまで行ったのか、その日のうちに帰ってこなかった。

まあ、二人は心配しなくていいか・・・。


いつもの癖でアライさんと一緒に眠りに付いた。


しかし、私は何かとてつもない違和感を感じたのだ。


(アライさん・・・、アライ・・・)


目が覚めた。


「・・・アレ?」













「確かに、凄い物なのだ!良く見つけたのだ!」


アライさんは満遍なく輝く星空を眺めていた。


「凄い綺麗ですよね。じゃぱりまん、食べます?」


「頂くのだ!!アミメキリンは良い人なのだ!!」


アライさんはじゃぱりまんを頬張る。


「まだまだあるから・・・」


勧められるがままにアライさんはじゃぱりまんを食べた。




「お腹いっぱいなのだ・・・。眠くなってきたのだ・・・」


「寝てもいいですよ・・・」


アライさんは深い眠りに落ちた。




「・・・・」


暫くその寝顔を見つめる。


(こんな顔していても・・・、彼女は英雄の一人・・・)


野放しにしておけば、何時しかこの世界を滅ぼす。


私は世界を守るんだ。


彼女を抱きかかえる。

“用意”はしてある。穴を密かに堀った。


少し歩いてその場所まで移動した。


両手に抱きかかえた彼女をその場所へそっと移した。

寝てるまま、起こさない様にする。


「もう食べられないのだ・・・」


寝言を呟く。


何も準備も無しに私はこの計画をおっぱじめた訳じゃない。

緻密に計画を組んだ。完璧だ。


隠しておいたシャベルを取り出し、そして、彼女の頭を。


ドンッ


「だあっ・・・」


そして、土を掛け始めた。


「パークを危機から守るのよ...」









「あれ・・・、いまアライさんの声がしたような・・・」


フェネックは耳を澄ます。


「・・・!!」


(待っててね、アライさん・・・!)


夜の森を一人疾走し始めた。

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