白の章
ヒグマに引き続きヘラジカが殺害された。
しかし犯人はヒグマを殺した人物と同一だと考えられる。
明らかに“連続殺人”だ。
僕達は一度図書館へ戻った。
戻ると先客がいた。
「かばんさん!!どこ行ってたのだ」
「元気してる〜?」
「ああ、アライさん、フェネックさん」
自由気ままにふらふらと放浪してる二人だ。
僕は彼女達の顔を見ると安心感を得られた。
さて、二人には申し訳ないが来て早々胸糞を悪くする話をしなければならない。
博士も島の長としてこんなひどい事は許せないと言っている。
僕は端的に二人に事情を話した。
「フレンズをねぇ...」
「アライさんははんにんを見つけるのだ!」
アライさんは確かにこういうの好きそうだ。
まぁ何か手伝うことがあれば協力してもらおう。
僕は図書館にいる5人を一つの机に集めた。
「かばん、お前はどこまでわかってるのですか」
相変わらずの上から目線で博士が尋ねる。
「ヘラジカさんを殺した犯人はヒグマさんを殺した犯人で間違いないでしょう
そして、特徴的なのがどの事件も真夜中に行われてる。夜行性のフレンズであると推測できます。そして、実行犯とは
別に“ヘラジカは危険だ”と吹き込んだ人物がいるはずです」
「殺された者に共通する点は無いのですか」
助手が変わった質問をした。
「あっ、それは考えてませんでしたね...」
ヒグマとヘラジカ。この二人に共通すること...
「単純に強い?」
「きっと身体の大きさなのだ!」
「二人とも武器を持ってる?」
博士とアライさんとサーバルがそう答えたが、僕はどうも違う気がする。
「なんかちょっと違う気がするんですよね…」
その場の全員が静まり返った。
「...色」
腕を組み、時折耳をヒクッとさせていたフェネックは唐突にそう呟いた。
「色...?、それってどういう事ですか
フェネックさん」
僕は彼女に問い詰めた。
「んー...、ヒグマは黒でしょ。でも、
ヘラジカが何色かわからないんだけど
色に関係してるんじゃないかなーって」
悪くない着眼点だ。
そう思った。
「もし、色が関係してるなら続けて黒ってことはありえない...
ヘラジカさんに関わる色...」
「緑では?」
助手が答えた。
「緑ですか」
僕は確認する様に尋ねた。
「彼女は森の王と言われてませんでした?森というと緑のイメージしかないのです」
「なるほど...。しっくり来ますね」
「あのさー」
フェネックの言葉で全員彼女の方を向いた。
「もし、色が関係してるなら、私達も危ないんじゃないかなー」
「なっ、何を言うですか!賢い我々が誰かに危険だなんて言われるはずがないのです」
少し怖がっているのだろうか。
博士はムキになって答えた。
「可能性はゼロじゃないよ。
博士だって白い色してるし、狙われても可笑しくないよ」
「我々は賢いので自分の身くらい自分で守れるのです」
そう言い返した。
「僕達も狙われるリスクがある以上、単独行動は避けたいですね」
「なら、皆で図書館に泊まればいいのです」
助手が提案した。
「そうですね。その方がいいかも知れませんね」
僕は肯いて見せた。
「おや、もうこんな時間ですか」
博士が辺りを見回す。
いつの間にか夜になっていた。
「頭を使い過ぎたのです。カレーを作るのですよ。かばん」
いつもの調子で料理を要求した。
「はぁー...、わかりましたよ」
「私も手伝う!」
僕とサーバルは立ち上がって外の調理場へ向かった。
「アライさんも手伝うのだ!」
「はいよっと...」
その日の夜はカレーを皆で食べた。
翌朝の早朝
「...誰も居ないですね」
鍋を持ち外の調理場へと向かう。
「火はおぞましいのですが...、
美味しくするため仕方ないのです...
それにこんなんでビビってちゃ長としての面子が立たないのです」
器に温めたご飯とカレーを盛り付ける。
「一晩寝かせたカレーを考えた人間は素晴らしいのです」
そうして、ただ1人食事を始めた。
皿のカレーが半分程無くなった時だった。
(ん...!?)
急に腹痛が襲う。
「な、な...、なん...、んな、まさか...」
腹を抑えながら図書館の中へ入る。
「じょ、助...手...、
あっ、ハァ...ハァ...」
息が苦しい。
「そんな...、バカ...な...」
(...誰かいる)
「...お、お前は...」
その姿を目撃した。
「うぅ...」
バタッ
(何か...、メッセージを...)
「は、博士!!」
僕はその大きな声で目覚めた。
サーバルも目覚め、一緒にその声の元へと向かった。
「助手さん!」
助手は地面に力なく座っていた。
そして僕が目撃したのは...
「博士さん...」
右手にペンを持ち、
うつ伏せに倒れている博士だった。
「これは...!」
本が置いてある。
本は空白のページを開いていた。
乱雑な字で何か文字が書いてある。
“ダイイングメッセージ”だ。
推理小説で読んだことある。
「どうしたのだ...?」
「なにさ...」
二人も騒ぎを聞きつけ起きてきた。
「フェネック!!お前ですか!!
博士を殺したのは!!」
「えっ?はぁ?」
襟元を掴み強く揺さぶる。
「お前は昨日、被害者が色に共通してるって言ってたのです!犯人しかそう言う発想に至らないのです!!」
「ちょっ、なに、殺してないよ!
なんで殺す必要があるのさ」
「フェネックさんの言う通りです。
助手さん落ち着いてください。
博士さんを襲った犯人はフェネックさんじゃありません。襲った犯人は博士さんが教えてくれました」
「は?何を言ってるのです。
死人が喋る訳ないじゃないですか!」
普通とは比べ物にならないくらい口調が
怖い。
「これです」
博士が書いたメッセージを見せた。
「....何ですかこれは?」
「犯人の名前だと思います」
「フェネックさん」
「はい?」
「恐らく...、昨日のカレーを見つけてくれませんか?」
「あ...、うん...」
「あっ、アライさんも行くのだ!」
「助手さん、一旦椅子に座って落ち着きましょう」
僕は椅子に座った。
助手とサーバルは隣合って座った。
「この文字ですが、ひらがなで書かれています。字は雑ですが恐らく、“き”...」
「“き”?」
助手は機嫌が悪そうな言い方をした。
「“き”の付くフレンズが博士さんを
殺した可能性が高いです」
「かばんさん!」
外から器を持ってアライさんとフェネックがやって来た。
「やっぱり、博士さんはカレーを食べたんですね...」
僕はスプーンで具材を確かめ始めた。
「これは...」
「なになに!?」
サーバルが身を乗り出す。
「昨日の夜僕が入れなかった、
“キノコ”が入ってる。昨日の真夜中から今日の早朝の間に犯人が入れたんだと思います」
(死因は恐らくこのキノコだろう。
毒キノコをカレーに混ぜた)
「サーバルちゃん、早く犯人を見つけるよ」
「うん!」
「私達も狙われるかもしれないからね」
「き、気を付けるのだ...」
「さっさと犯人を見つけるのです…。
この島の長を殺した罪は重いのです。
皆の前で首を晒してやりますよ...」
助手が怖いことを口にした。
まあ、無理もない...か。
「“き”の付くフレンズの所へ行こう!」
僕はサーバルと共に図書館を飛び出した。
「なあ、キリン。最近夜中、何処に行ってるんだ?」
「別に、特に何も。ロッジの中を彷徨いて先生のネタとか、何か事件が無いか探してるだけですよ」
「ああ...、そうなんだ。
事件といえば、小耳に挟んだんだが、
ヘラジカが何者かによって殺されたらしいんだ。物騒になったよな...。全く」
「そうなんですか...?はじめて聞きましたよ」
「ちょっと面白そうじゃないか?」
「えっ?」
「君だってそういうの好きだろ?
一緒に犯人を見つけようよ」
「あ、でも、漫画はいいんですか?」
「別に誰かから急かされる訳じゃないし。平気だよ」
「そう...ですか。先生がそうおっしゃるなら、別に私は....」
「ふふっ、じゃあ早速明日から始めよう。
因みに犯人は誰だと思う?君は」
「犯人は....」
(後、4人)
「“ヤギ”ね!」
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