第3話 初めての笑顔

 とりあえず俺は美幼女から話を聞くことにした。しかしながら我ながらひどい部屋だな…おっと〜あの雑誌はやばい。

 俺は幼女にその雑誌が目につかないよう移動しながら声をかけた。


「まぁ、どこか適当にかけてくれ。あと、まずはそうだな、名前。名前を教えてれ。」


「…佐倉、佐倉雫。」


 雫ちゃんは蚊の鳴くような小さな声でそう答えた。俺は例の雑誌を布団の中に隠すとゴミや衣服を退け雫ちゃんが座れるだけのスペースを確保し、手招きしてそこに座らせた。


「それで雫ちゃんはなんで我が家の前にいたのかな?」


「…」


「お家はどこ?」


「…」


「お父さんか、お母さんは?」


「…」



 へんじがない…ただのしかばねのようだ…




 冗談はさておき名前以外何もわからないんじゃどうしようもない。しかしこの子大丈夫か?よく見てみると平均的な小学生よりもかなり痩せているように見えるし、綺麗な顔もよくみると目の下にうっすらとクマがある。

 幸い暴力の跡のようなものはないがネグレクトの可能性はあるかもなぁ…


 そんなことを考えていると「く〜」っと可愛らしい音がした。音がした方を見てみると雫ちゃんが顔を真っ赤にしながら俯いているではないか!

 なにこの可愛い生物、おもちかえりぃ〜

 はっ!もう持ち帰ってたよ!


 とりあえず何か与えねば。俺はさっき買ってきた弁当を雫ちゃんのほうに差し出した。

「んっ、んっ。」


 ギャーー、や•ら•か•し•た〜

 これじゃあまるでとなりのト◯ロのカ◯タじゃないか!やーい俺ん家ゴミ屋敷〜


 クスッ


 そこでずっと泣きそうな顔をしていた雫ちゃんがはじめて笑顔を見せてくれたのだった。



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