おやすみなさい

拍子抜けと二時間の思春期。「おやすみなさい」と挨拶をした彼は知っていたのだろうか。


鼠の耳を乗っけた連中が、犬のロゴを入れたキャップを被る私を取り囲む。そのまま、平らな地面じべたはのそのそと進んでゆく。しばらくすれば、連中は黒服の人間たちに置き換わっている。彼らは眼で宣う。


「お前の方だ。」


雑踏を置き去る。見る。


偶然私の身を包んでいる黒い布と共に、一年ほど前に抱擁してくださった或る男に奏する。


「おやすみなさい。」

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