のみかい
最近、1つ上の先輩と2人でよく呑みに行く。同じ学部、同じ学科、同じサークル。とはいえ、学部や学科が同じというだけで話したりはしないし、サークルも大きいためその全員と仲がいいというわけでもない。
では、なぜこの先輩と呑みに行っているのかというと、別に対した理由でもない。過去問という名の秘密兵器を有り難く頂いており、初めて過去問をもらう際にした
「過去問ならあげるけど、仲良くなってからね」
「何したら仲いいって言えるんすかね」
「……一緒に呑んだら? 」
という冗談半分のやりとりの結果が今も続いているだけだ。ペースは月に数回ってところ。別に過去問をもらう時じゃなくても、お互い暇でなおかつ気が向いたら呑みにいく。
女の先輩ということで、最初は緊張したり、あれ、付き合えるんじゃね? とかちょっぴり期待した。嘘。ほんとは割と本気で妄想してた。だけど、今ではそんな勘違いもしない。
理由は簡単で、ちょうど1ヶ月前、先輩が告白している現場を目撃したからだ。場所はサークルの部室。その日はサークルは休みで、本来なら誰もいないはずだった。しかし、前日にPCを部室に置き忘れるという大失態を犯した俺は回収すべく部室へ向かった。誰もいないはずの部室から物音。びびりな俺。とりあえず部屋の外から室内の音を確認する。
「……きです。付き合っ……さい」
先輩の声だった。勘違いと期待が最高潮に達していた俺は、PCのことも忘れ、その場から立ち去った。その日はご飯も喉を通らなかった。
その後、先輩がそのお相手さんと付き合えたのかは知らない。しかし、下手に聞いてこの呑み会が無くなるのも嫌なので聞くことも出来なかった。先輩が内緒で付き合ってるなら、俺が知らない限り今まで通り呑み会は続くだろう。先輩と付き合えないにしても、呑み会は続けたかった。それだけ、楽しんでいる俺がいた。
「……どーしたの? ぼーっとして」
「ちょっとやなこと、思い出してただけっす」
「んー。そういう時はどんと、先輩に話してみなさい」
「いや、大したことじゃないんで……」
大したことだけど。先輩には言えない。
「どうしたっ。恋か? 恋の悩みかー? うれうれっ」
「ちょ、せんぱっ、くすぐったいですって」
「ほれほれ、いえーっ」
「ギブ、ギブッ」
……まったく。これだから先輩は。ちゃんと、俺が浮かない顔してることに気がついてて。茶化してるけど、実はほんとに心配してくれてることとか、顔に出てて。言いやすい雰囲気作ろうとしてて。……かなわないなぁ。
「……ごめんなさい、先輩。俺、聞いちゃったんです」
「んー? 何をー?」
「先輩が部室で告白してるの。ちょうど1ヵ月前っすよね? 」
「えっ! ちょっ!! ほんとっ!? 」
みるみる顔が赤くなる先輩。かわいい。
「ぅー、聞かれたぁ……。練習してるの、聞かれてたぁ……」
…………え?
「えっと、練習……?」
「君に告白するの! その練習! あ、まだノーカンだからねっ! 今したら練習が無駄になっちゃう! 」
……先輩。俺、相手が誰かも、練習ってことも知らなかったです。完全に自滅です。あと、告白の練習って。いまどきそんな初心な大学生、いるんすね。そっちに驚きましたよ。
内心ガッツポーズをしながら、落ち着くべく飲み物を口に含む。お酒、ひとくち。
いつも飲む梅酒が、何だかいつもより甘く感じた。
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1000字超えました。ごめんなさい。
あとベタベタでごめんなさい。
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