第2話 室内革命

部屋が汚い人は心も汚い。

部屋は人を映す鏡。

――確かに、この部屋の惨状を鑑みるに納得である。

この世界(汚部屋)を打破することは、革命と言える。

だって、世界を壊し、作り変えるのだから、天地創造と言っても過言ではない。

――いや、それは過言だな。

深呼吸代わりにため息を一つ。私は目の前の世界に相対した。


現状整理のため、一度、自室の写真をとることにした。

写真で見る世界と、自分が見ている世界は違うという。

人間は、自身の視界を自身の都合の良いように改変しているとか、なんとか。昔、大学の教養科目で習った気がする。


物は試しと、ぱしゃりぱしゃりと撮ってみた。

キッチン、ベット、本棚、風呂、玄関、トイレ――気の向くままに写真に残す。


自分の心象風景が具現化されたような写真だった。ある意味、念写みたいである。

ざっくりは下記の通りである。


キッチン:洗い物が散乱。つけ置き(いつ漬けたかわからない)と放置物がたくさん

ベット:布団が散乱。漫画本も散乱。お菓子のゴミも散乱。

本棚:書類、雑誌が無秩序に差し込まれている。なぜか、二年前の漫画雑誌があった

風呂:コーナーにカビが繁殖。赤・白・黄色――そして黒の色とりどりの小さな世界。

玄関:靴が揃えられておらずばらばら。先週の可燃ごみが放置されている。

トイレ:――言及不可。自己規制。


『写真は、嘘をつかない』

『写真は、嘘を、つけない』

名前も忘れた教授の言葉が、脳に響く。

つい10分程度前の私は、この世界をなんとも思わず生活していた。

トイレも、普通に使用していた。

自分の眼球が信じられなくなる。

いや、彼(眼球)は私の精神を守るために、あえて幻想をかけていたのだ。

これは、優しい嘘だ。


実験用の安全眼鏡、防毒マスク、白衣、ゴム手袋。

重装備に身を包んだ私は、革命の始まりを告げる。

「ありがとう、マイアイズ」

自分の両目に感謝を告げる。

「――グッバイ、やさしい嘘と汚いお部屋」

 

 こうして、私の記念すべき小さな革命第一号が始動した。

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