【閑話】休日の過ごし方

 休みの日に惰眠を貪るのが好きである。雨の日の休日が好きである。日曜の昼間に立ち飲み屋で飲むライムサワーが好物である。要するに休みが好きだ。

 諸説あるが、大抵の仕事の悩みは休みを与えれば解決すると言われている。筋金入りの社畜たる私だって例外ではない。休みの日は思い切り好きなことをして、時間を無駄にして、夕方あたりで「もう少し何かやることあっただろう」と思う、あの虚無感を味わうまでが一セットだ。どうしてそうなってしまうかというと、多分休み慣れていないから。時間の配分が上手に出来ないのである。


 それでも数年前まではよかった。土日休みや有休を使って、やることがあったからだ。

 時間も決まっていたし、やることも明確だったから、終わる頃になっても爽快感に満たされていた。

 何をしていたかというと、バイトである。


 アルバイトである(強調)。


 何してるんだ、と思った方は価値観が正常である。間違っているのは私だけだ。

 土曜日の夕方から日曜の朝まで、一睡もせずグッドジョブ。冬ともなると深夜三時ぐらいは足元から凍えてきて感覚も失せてきて、それでも外に煙草を吸いに行っては「生きてる〜」とかトチ狂ったことを考えていた。

 因みにゴールデンウィークに仕事がない年とか、年末年始が暇な時もバイトを入れていた。いつだったかはゴールデンウィークをフルコンボした。バイト先の連中も、さぞかし私を馬鹿だと思っていたことだろう。


 別に金に困っていたわけではない。天地に誓って借金はない。

 単に暇だった。それだけである。

 あと、会社も副業を禁止していなかった、というのも大きい。それでも一応「ダブルワークはオススメ出来ないな」とか部長が言っていたから、ちゃんとバイトを2種類やって、トリプルワークにした。これで問題なしである。


 手に入れたバイト代は全て酒と煙草に消えた。あれを貯金しておけば一財産になった気がするが、宵越しの金は持たない主義だったから仕方がない。まぁあの頃は歳相応以上の良い酒を飲んでいたなぁと思う。今は安い芋焼酎ばっかりだし。


 今までエッセイに書いてきた中で、激務と呼べるものもいくつかあったが、その時にもバイトのシフトはちゃんと入れていた。結構気分転換になるのである。

 要するに、本職(システムエンジニア)は責任が大きく、自分で色々判断しなければいけないし、状況も目まぐるしく変化するので疲れる。それに比べてバイトは、社員の言うことに唯々諾々しておいて、決められた作業を繰り返すだけ。しかも週に一度ぐらいだから苦にもならない。週五とかだったら、三ヶ月目ぐらいで逃げ出せる自信があるが。


 気分転換にもなるし、金も入る。なんて素晴らしい休日の過ごし方だろう。

 そう思いながらX年間ぐらい、そんな生活をしていたが、遂に辞める時が来た。理由はとても簡単なことだった。


 体力持たない。


 加齢とは悲しいことである。

 今はおとなしく本職だけをしている。それでも徹夜が段々肉体に響いてきているので、どうにかしなければと思っている。

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