運は何処かに置いてきた

 不運な人間である。

 不幸ではないのがせめてもの救いだ。

 四コマ漫画のようなことが頻繁に起きるので、そろそろ二次元の住人になれると思っている。


 例として、今月のことでも話そう。

 言うまでもないが、まだ今月は半分ほど残っている。


 まず五月一日。会社に入ろうとしたら鳥の糞が頭や肩に落ちた。クリーニングに出したばかりの黒いスーツに白いおしゃれな斑点が出来た。泣けた。


 二日。ICカードが折れた。チャージをしようとして自動券売機に入れたら折れた。

 学生時代から苦楽を共にしてきたカードの末路を見て泣こうかと思ったけど、そこまで愛情はなかったので舌打ちで済ませた。


 三日。ボールペンが折れた。恐らくICカードの後追いである。私の知らないうちに親睦を深めていたのだろう。爆発しろ。


 五日。パソコンが珈琲により水没する。作っていた資料が全滅した。

 週明けに会社に連絡したら大笑いされた。

 取引先から連絡があったので「パソコン壊れたんでちょっと待っててください」と言ったら、電話の向こうで過呼吸を起こしていた。


 六日。傘が折れた。

 私のメンタルは折れないのに、周りの物はよく折れる。きっと身代わりというやつだろう。


 流石に精神的に答えてきた八日。用水路の溝にヒールの踵を挟んで転んだ。

 会社の携帯にヒビが入った。いっそのこと壊れてしまえ。私をここではないどこかに追いやればいい。


 十日。鳩にまとわりつかれた。

 何故私の周りを飛ぶのだろう。一日についた糞がまだスーツに残っているのだろうか。洗ったはずなのに


 十三日。エスカレータが急停止して転落した。急停止の原因であるベビーカーに幸あれ。


 多分前世で、「罪ではないけど人道的にちょっと……」なことでもしたんだと思う。微妙なトラブルが多すぎる。

 それでもちゃんと生きているので、今日もこうしてエッセイが書ける。ありがたいことである。


 新作『歯車のエストレ』も無事に公開出来た。アンドロイドと人間が共存する世界で、殺し屋と少女が逃げまわる話。随時更新。


 微妙に不運で絶妙に幸運な人生に感謝しつつ、ちゃっかり宣伝もしてみる。そろそろ皆さん気付いたと思うが、私は自由気ままにこのエッセイを書いている。偶にSE的エッセイから脱線しても許して欲しい。

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