味覚は正しい
ティッシュは甘いのと苦いのがある。
五個で二百円みたいな安いやつは苦い。花粉症の時期に飛ぶように売れる柔らかいやつは甘い。
そんな前置きであるが、出張中の食事事情についてである。
出張しない人にとっては、出張=美味しいものみたいな概念があるらしい。多分テレビドラマとかの影響だろう。
しかし、出張とはそもそも「会社からは遠すぎるから現地に泊まって移動時間を短縮する」のが目的である。
だから、何も無いところにだって出張する。
居酒屋も飯屋も近くにない。土日となると全て閉店。そんな場所にも行く。
仕事が忙しければ尚更で、病院の売店で買ったパンを食ってることもある。地方によっては甘ったるいのしか売ってないこともあって辛い。
舌がビリビリするほどの甘い餡子を練りこんだパンを口に入れ、水で流し込むことを三日もやっていると、ダンボールを食べてる気分になる。味がないのだ。
これはもしや、舌が死んだのでは?
私の肉体と精神はここにあるが、舌だけは死んだのでは? スプリットタンだってまだやってないのに?
そんな焦燥に駆られた私は、荷物の中からティッシュを取り出して真新しい一枚を口の中に入れた。
お高いポケットティッシュは、ほんのり甘かった。
良かった、舌は生きている。
その日の昼は足を伸ばして某チェーン店に行った。そこのランチメニューに付いてきたお情程度のサラダが、五臓六腑に染み渡るくらい美味しくて、一緒に行った人と感激した。
いつも惰性で食べててゴメン。君たち美味しいね。ティッシュより美味しい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます